[資源・新興国通貨4/8-12の展望] 豪中銀が政策スタンスをシフト!?

著者:八代 和也
投稿:2019/04/05 17:17

豪ドル

RBA(豪中銀)は4月2日、政策金利を過去最低の1.50%に据え置きました。声明では、最後段落に「理事会は、経済の持続的な成長を支え、長期的にインフレ目標を達成するため、動向を監視し、金融政策を設定していく」との文言を追加しました。新たに追加された文言は、政策スタンスを“中立”から“緩和方向”へシフトするシグナルと見なすこともできます。

ただ、翌3日に発表された豪州の2月小売売上高は、前月比+0.8%と、1年3カ月ぶりの強い伸びを記録しました。個人消費の動向がRBAにとって懸念材料となっていたため、小売売上高の堅調な結果によって、RBAの利下げの可能性は低下したと考えられます。

来週(4/8の週)の豪ドルは、方向感が乏しい展開になりそうです。小売売上高の結果や米中通商協議の合意への期待が豪ドルの下値を支えるとみられる一方、RBAの利下げ観測は市場に残存しているためです。

NZドル

NZIER(NZ経済研究所。民間のシンクタンク)が4日2日、1-3月期のNZの企業信頼感を発表。結果はマイナス29%と、2018年10-12月期のマイナス17%から悪化しました。

NZIERの企業信頼感の悪化によって、RBNZが利下げを行う可能性は高まったと考えられます。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、4月3日時点で次回5月8日の会合での利下げの確率が47.5%織り込まれています(据え置きの確率は52.5%)。

来週(4/8の週)は、NZの主要経済指標の発表がありません。そのなかで、早期利下げ観測があるNZドルが自力で上昇するのは難しいかもしれません。NZドルが上昇を続けるためには、米中通商協議での合意期待が一段と高まるなどしてリスク回避の動きが後退する、あるいは米ドルや円が全般的に弱含むことが必要と考えられます。

カナダドル

米WTI先物(原油価格)は今週(4/1の週)、一時5カ月ぶりの高値を記録しました。OPEC(石油輸出国機構)と非加盟主要産油国による協調減産が延長されるとの観測や、米国の制裁によってイランの原油供給が減少するとの観測が、原油高の背景にあります。原油価格は引き続き堅調に推移するとみられ、そうなればカナダドルの上昇要因になりそうです。

カナダの3月雇用統計(5日)もカナダドルの材料になりそうです。本稿執筆時点で結果は発表されていませんが、雇用統計が良好な結果になれば、来週(4/8の週)のカナダドルは底堅さを増す可能性があります。

トルコリラ

3月31日のトルコ統一地方選では、三大都市の市長選が注目されました。結果は、イズミルはCHP(共和人民党)が勝利。アンカラとイスタンブールもCHPの候補が勝利を収めましたが、AKP(公正発展党。エルドアン大統領が党首)は不正な投票があったと主張。両市の票の再集計を求め、選挙管理委員会に異議を申し立てました。選挙結果の確定は、4月半ば頃になりそうです。

市場は統一地方選の結果以上に、米国とトルコの関係悪化を重視しているようです。トルコのS-400(ロシア製の地対空ミサイルシステム)導入計画をめぐり、両国の関係が悪化しています。米国は1日、F35戦闘機に関連する機器のトルコへの出荷を停止。トルコがS-400を導入する計画を撤回しないためです。トルコがS-400を導入した場合、F35などの機密情報がロシアに流出する可能性があると米国は懸念しています。

2018年夏、米国人牧師の拘束をめぐって米国とトルコの関係が悪化。それが2018年8月に加速したトルコリラ安の一因でした。今後、両国の関係が一段と悪化した場合、トルコリラはその時と同じような展開になる可能性もあるため、引き続き注意が必要です。

南アフリカランド

南アフリカランドは今週(4/1の週)、堅調に推移しました。その背景として、トルコリラ安の一服や、米中通商協議の合意への期待からリスク回避の動きが後退したことが、挙げられます。

南アフリカ政府はエスコム(南アフリカの国営電力会社)への追加支援を検討しており、それが南アフリカランドの重石となる可能性があります。ゴーダン・公共企業相は4月3日、「政府の最高レベルでエスコムへの追加支援策を協議している」と発言。マブザ・エスコム会長は同日、「(エスコムの)債務が2500億ランド少なくなれば、対応がしやすくなる」と述べました。政府がエスコムに対して追加の金融支援を行えば、公的債務が増大し、将来の格下げにつながる可能性があります。
八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想