■業績動向
1. 2018年12月期決算の概要
電算システム<3630>の2018年12月期決算は、売上高36,576百万円(前期比9.0%増)、営業利益1,668百万円(同28.6%増)、経常利益1,720百万円(同28.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,020百万円(同24.2%増)と増収増益で着地した。
期初計画との比較では、売上高はほぼ計画通りとなる一方、利益については営業利益以下の各利益項目が計画を20%以上上回った。
2018年12月期について同社は、収納代行サービスセグメントにおける基盤移行(事業基盤となるシステムや機器の刷新や新型への移行のこと)やPCI DSS準拠の認証取得、M&A関連などの各施策にかかわる費用の増加を織り込み、売上高は2ケタ近い増収ながら利益については前期比横ばいの予想でスタートした。しかしながら、特に情報サービスセグメントにおいて期を通じて需要が好調に推移し、高稼働率により利益率が上昇した結果、前述のように利益が計画を大きく上回った。
事業セグメント別では、情報サービスセグメントが売上高19,415百万円(前期比12.8%増)、営業利益1,031百万円(同36.0%増)と増収増益となった。期初計画との比較でも、売上高、営業利益ともに計画を上回った。一方、収納代行サービスセグメントは売上高17,160百万円(前期比5.1%増)、営業利益616百万円(同2.1%減)と増収減益で着地した。同セグメントでは基盤移行や認証取得などで一時的に費用が増加することが想定されていたため、当初から営業減益の計画となっていた。期初計画との比較では売上高はわずかに未達だったが営業利益は計画を上回った。
旺盛なIT投資を受け、SI・ソフト開発と商品販売が好調に推移。情報処理サービスも堅調な伸びが継続
2. 情報サービスセグメントの動向
(1) SI・ソフト開発及び商品販売
SI・ソフト開発の売上高は11,548百万円(前期比10.1%増)、商品販売の売上高は2,161百万円(同26.0%)増となった。これら2つのサブセグメントはしばしば一体の案件として受注されて不可分の関係にあることが多い。両者を合算した金額は13,709百万円(同12.3%増)で、期初計画に対しては3.2%上回った。
SI・ソフト開発のうち、業務システムやネットワークの構築、ソフト開発を行う事業は上期の好調が下期に入っても持続した。特に第3四半期(7月−9月期)はソフト開発案件の売上計上が多く、四半期ベースの全社利益を大きく押し上げた。こうした需要好調の背景には、産業界全般においてIT投資が活発なことがある。また、同社が得意とする(会場数ベースの国内シェアが30%超)中古車オークション会場の業務システムにおいても、更新需要を着実に取り込み、収益拡大につなげた。
同社はストックビジネスの拡大を経営の重点施策の1つとしており、その観点からクラウド関連サービスの売上拡大に注力している。2018年12月期のクラウド関連サービス売上高は前期比21.0%増の3,551百万円と高い伸びが続いた。同社はクラウド関連サービスの中身として、Google関連サービスの販売に特に注力している。2018年12月期のGoogle関連サービスの売上高は前期比34.3%増の3,352百万円となり、クラウド関連サービス売上高の94%を占めるに至った。また、Googleサービス(G Suite)の導入企業数は1年前から20.3%増加して1,499社となった。
前述のようにSI・ソフト開発は2018年12月期の利益上振れの原動力となった。高水準の需要が大きな理由だが、もう1つの重要な要因がプロジェクトマネジメント強化の取り組みだ。同社は数年前に失敗案件により収益悪化を招いた経験がある。以来、見積もりの精度向上や工程管理の緻密化など、プロジェクトマネジメント力の強化に取り組んで来た。その結果現在では、小さな不採算プロジェクトはあるものの全社収益に大きな影響を与えるような失敗案件は姿を消した状況にある。
(2) 情報処理サービス
情報処理サービスの売上高は5,705百万円(前期比14.0%増)となり、期初計画を若干上回って着地した。
このサブセグメントの約半分を占めるBPO事業は、売上高が3,145百万円(前期比4.5%増)、処理件数が81,493千件(同45.4%増)となった。前期にあった高単価案件が終了した影響もあって売上高の伸びは低水準にとどまったものの、BPOの需要自体は根強く顧客や処理件数は増加した(なお、BPOの作業内容は顧客によって異なるため、売上高を処理件数で割って単価を出しても同じベースの比較にはならない)。
こうした処理量の増大に対応するため同社は、2018年10月に新たに東濃BPOセンターを稼働させた。加えて、効率性アップによる利益率向上を目的にRPAを導入した。2018年12月時点では、RPA導入によって7つの業務で月間600時間超の省力化に成功している。BPOにおいては同様の作業を大量に繰り返すことができる大型案件のほうが効率性・収益性は高いが、そうした大型案件の数は限られるため、結果的に小型案件の増加で量的拡大を図ることになる。そうした状況下でしっかりと収益性を上げていくためにはRPAの導入は不可欠な取り組みと言える。
BPO事業については営業面での強化も図っている。2018年12月期からは収納代行セグメントの部署との協業(共同での顧客訪問や相互集客など)に取り組んだ。
情報処理サービス事業のもう1つの柱は、データセンターサービスだ。同社は東濃データセンターを擁して事業を展開している。東濃データセンターは2013年11月の運用開始以来順調に稼働率を上げてきており、増設を検討する段階に差し掛かっているもようだ。東濃データセンターはモジュール型という構造を採用しており、既存のデータセンター基盤上に最新モジュールを設置するだけで済むため、低コスト・短工期での増設が可能だ。現時点では具体的なことは何も決定されてはいないが、データセンターの増設は同社の成長を表す1つの目安と言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<SF>
1. 2018年12月期決算の概要
電算システム<3630>の2018年12月期決算は、売上高36,576百万円(前期比9.0%増)、営業利益1,668百万円(同28.6%増)、経常利益1,720百万円(同28.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,020百万円(同24.2%増)と増収増益で着地した。
期初計画との比較では、売上高はほぼ計画通りとなる一方、利益については営業利益以下の各利益項目が計画を20%以上上回った。
2018年12月期について同社は、収納代行サービスセグメントにおける基盤移行(事業基盤となるシステムや機器の刷新や新型への移行のこと)やPCI DSS準拠の認証取得、M&A関連などの各施策にかかわる費用の増加を織り込み、売上高は2ケタ近い増収ながら利益については前期比横ばいの予想でスタートした。しかしながら、特に情報サービスセグメントにおいて期を通じて需要が好調に推移し、高稼働率により利益率が上昇した結果、前述のように利益が計画を大きく上回った。
事業セグメント別では、情報サービスセグメントが売上高19,415百万円(前期比12.8%増)、営業利益1,031百万円(同36.0%増)と増収増益となった。期初計画との比較でも、売上高、営業利益ともに計画を上回った。一方、収納代行サービスセグメントは売上高17,160百万円(前期比5.1%増)、営業利益616百万円(同2.1%減)と増収減益で着地した。同セグメントでは基盤移行や認証取得などで一時的に費用が増加することが想定されていたため、当初から営業減益の計画となっていた。期初計画との比較では売上高はわずかに未達だったが営業利益は計画を上回った。
旺盛なIT投資を受け、SI・ソフト開発と商品販売が好調に推移。情報処理サービスも堅調な伸びが継続
2. 情報サービスセグメントの動向
(1) SI・ソフト開発及び商品販売
SI・ソフト開発の売上高は11,548百万円(前期比10.1%増)、商品販売の売上高は2,161百万円(同26.0%)増となった。これら2つのサブセグメントはしばしば一体の案件として受注されて不可分の関係にあることが多い。両者を合算した金額は13,709百万円(同12.3%増)で、期初計画に対しては3.2%上回った。
SI・ソフト開発のうち、業務システムやネットワークの構築、ソフト開発を行う事業は上期の好調が下期に入っても持続した。特に第3四半期(7月−9月期)はソフト開発案件の売上計上が多く、四半期ベースの全社利益を大きく押し上げた。こうした需要好調の背景には、産業界全般においてIT投資が活発なことがある。また、同社が得意とする(会場数ベースの国内シェアが30%超)中古車オークション会場の業務システムにおいても、更新需要を着実に取り込み、収益拡大につなげた。
同社はストックビジネスの拡大を経営の重点施策の1つとしており、その観点からクラウド関連サービスの売上拡大に注力している。2018年12月期のクラウド関連サービス売上高は前期比21.0%増の3,551百万円と高い伸びが続いた。同社はクラウド関連サービスの中身として、Google関連サービスの販売に特に注力している。2018年12月期のGoogle関連サービスの売上高は前期比34.3%増の3,352百万円となり、クラウド関連サービス売上高の94%を占めるに至った。また、Googleサービス(G Suite)の導入企業数は1年前から20.3%増加して1,499社となった。
前述のようにSI・ソフト開発は2018年12月期の利益上振れの原動力となった。高水準の需要が大きな理由だが、もう1つの重要な要因がプロジェクトマネジメント強化の取り組みだ。同社は数年前に失敗案件により収益悪化を招いた経験がある。以来、見積もりの精度向上や工程管理の緻密化など、プロジェクトマネジメント力の強化に取り組んで来た。その結果現在では、小さな不採算プロジェクトはあるものの全社収益に大きな影響を与えるような失敗案件は姿を消した状況にある。
(2) 情報処理サービス
情報処理サービスの売上高は5,705百万円(前期比14.0%増)となり、期初計画を若干上回って着地した。
このサブセグメントの約半分を占めるBPO事業は、売上高が3,145百万円(前期比4.5%増)、処理件数が81,493千件(同45.4%増)となった。前期にあった高単価案件が終了した影響もあって売上高の伸びは低水準にとどまったものの、BPOの需要自体は根強く顧客や処理件数は増加した(なお、BPOの作業内容は顧客によって異なるため、売上高を処理件数で割って単価を出しても同じベースの比較にはならない)。
こうした処理量の増大に対応するため同社は、2018年10月に新たに東濃BPOセンターを稼働させた。加えて、効率性アップによる利益率向上を目的にRPAを導入した。2018年12月時点では、RPA導入によって7つの業務で月間600時間超の省力化に成功している。BPOにおいては同様の作業を大量に繰り返すことができる大型案件のほうが効率性・収益性は高いが、そうした大型案件の数は限られるため、結果的に小型案件の増加で量的拡大を図ることになる。そうした状況下でしっかりと収益性を上げていくためにはRPAの導入は不可欠な取り組みと言える。
BPO事業については営業面での強化も図っている。2018年12月期からは収納代行セグメントの部署との協業(共同での顧客訪問や相互集客など)に取り組んだ。
情報処理サービス事業のもう1つの柱は、データセンターサービスだ。同社は東濃データセンターを擁して事業を展開している。東濃データセンターは2013年11月の運用開始以来順調に稼働率を上げてきており、増設を検討する段階に差し掛かっているもようだ。東濃データセンターはモジュール型という構造を採用しており、既存のデータセンター基盤上に最新モジュールを設置するだけで済むため、低コスト・短工期での増設が可能だ。現時点では具体的なことは何も決定されてはいないが、データセンターの増設は同社の成長を表す1つの目安と言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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