■要約
テラ<2191>は、がん免疫療法の1つである樹状細胞ワクチン療法を中心に、医療機関に対する技術・運用ノウハウの提供、及び再生医療・細胞医療に関する研究開発を行っている。2017年3月より公立大学法人和歌山県立医科大学附属病院で膵臓がんを対象とした樹状細胞ワクチンの医師主導治験が開始されており、2022年の製造販売承認申請を目標としている。
1. 細胞加工受託事業に参入
同社は収益基盤の強化を図るため、新たに細胞加工受託事業を開始する。関西圏に細胞培養加工施設(以下、CPC)を整備し、2018年7月に厚生局に許可申請を行った。順調に審査が進めば約6ヶ月で認可され、2019年前半にも事業を開始する見通しだ。樹状細胞ワクチンの安定供給源の機能を自ら果たすことで、医療機関で細胞加工施設を設置・維持する必要がなくなるため、医療機関側の初期投資や維持費用が抑えられ、免疫細胞療法を導入するハードルが低くなる。同社としては、医療機関との契約件数の増加を見込み、低迷が続く細胞医療事業の収益回復を目指していく。また、樹状細胞ワクチン療法を行う医療機関だけでなく、主にがんに対する免疫細胞療法の研究開発を行う大学・研究機関や民間企業もターゲット顧客となる。
2. 海外事業の推進
同社は、アジア地域で免疫細胞療法への注目度が高まってきたこと、また、関連する法規制も整備されてきたことから、海外事業を推進していく方針を改めて打ち出した。2018年9月には、台湾のバイオベンチャーであるVectorite Biomedical Inc.(以下、VB)※と樹状細胞ワクチン療法を中心としたがん免疫細胞療法の台湾での開発に関する業務提携契約を締結したことを発表した。契約一時金は約90百万円である。2019年12月期第1四半期中に技術移転を完了させ、VBの細胞加工施設で製造する樹状細胞ワクチンを台湾内の関連医療機関に提供していく予定にしている。同社は症例数に応じたロイヤリティ収入をVBから得ることになる。
※VBは、がんや感染症、免疫関連疾患を対象とした免疫細胞を用いた免疫療法技術・医薬品の開発、及び免疫細胞のバンキング事業を行っており、台湾株式市場に上場している。2017年12月期の売上高は519百万円、当期純損失は227百万円(1新台湾ドル=3.6円換算)。
3. 医師主導治験の進捗状況
膵臓がんを対象としたWT1ペプチドパルス樹状細胞ワクチン「TLP0-001」の医師主導治験は、安全性を確認する第I相試験が和歌山県立医科大学附属病院で行われており、2019年の早い段階で第2/3相試験に移行できるものと見られる。予定症例数は185症例、主要評価項目は全生存期間となり、プラセボ群との比較において統計的有意差が認められることを検証する。連結子会社のテラファーマ(株)が2022年までに承認申請を行う計画で、治験開始から承認取得までの費用として約38億円を見込んでいる。このうち約16億円は第三者割当増資等により調達済みで、残額についてはエクイティ・ファイナンスの実行や製薬企業等とのアライアンス契約締結により調達していく方針となっている。
4. 業績動向
2018年12月期第3四半期累計(2018年1月-9月)の連結業績は、売上高が前年同期比57.9%減の354百万円、営業損失が579百万円(前年同期は201百万円の損失)となった。売上高については細胞医療事業における症例数減少や2017年9月に子会社バイオメディカ・ソリューション(株)(以下、BMS)を売却したことが減収要因となった。利益面では細胞医療事業の減収に加えて、医薬品事業における治験費用増加が減益要因となった。また、特別損失として第三者委員会調査報告費用や追加の監査費用等173百万円を計上している。なお、第三者委員会が設置され同社ガバナンス体制の問題点が指摘されたものの、細胞医療事業等に直接の影響は生じていないと言う。2018年12月期の業績見通しについては、売上高で前期比46.7%減の510百万円、営業損失で1,060百万円(前期は245百万円の損失)と期初計画を据え置いている。
■Key Points
・2019年より国内で細胞加工受託事業を開始、台湾でも業務提携先を通じて樹状細胞ワクチン療法が開始される見通し
・膵臓がんを適用対象とした医師主導治験は順調に進捗、2019年以降に第2/3相試験に移行予定
・第三者委員会調査実施による事業上のマイナス影響はなく、今後は請求費用の見直し交渉を行う予定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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テラ<2191>は、がん免疫療法の1つである樹状細胞ワクチン療法を中心に、医療機関に対する技術・運用ノウハウの提供、及び再生医療・細胞医療に関する研究開発を行っている。2017年3月より公立大学法人和歌山県立医科大学附属病院で膵臓がんを対象とした樹状細胞ワクチンの医師主導治験が開始されており、2022年の製造販売承認申請を目標としている。
1. 細胞加工受託事業に参入
同社は収益基盤の強化を図るため、新たに細胞加工受託事業を開始する。関西圏に細胞培養加工施設(以下、CPC)を整備し、2018年7月に厚生局に許可申請を行った。順調に審査が進めば約6ヶ月で認可され、2019年前半にも事業を開始する見通しだ。樹状細胞ワクチンの安定供給源の機能を自ら果たすことで、医療機関で細胞加工施設を設置・維持する必要がなくなるため、医療機関側の初期投資や維持費用が抑えられ、免疫細胞療法を導入するハードルが低くなる。同社としては、医療機関との契約件数の増加を見込み、低迷が続く細胞医療事業の収益回復を目指していく。また、樹状細胞ワクチン療法を行う医療機関だけでなく、主にがんに対する免疫細胞療法の研究開発を行う大学・研究機関や民間企業もターゲット顧客となる。
2. 海外事業の推進
同社は、アジア地域で免疫細胞療法への注目度が高まってきたこと、また、関連する法規制も整備されてきたことから、海外事業を推進していく方針を改めて打ち出した。2018年9月には、台湾のバイオベンチャーであるVectorite Biomedical Inc.(以下、VB)※と樹状細胞ワクチン療法を中心としたがん免疫細胞療法の台湾での開発に関する業務提携契約を締結したことを発表した。契約一時金は約90百万円である。2019年12月期第1四半期中に技術移転を完了させ、VBの細胞加工施設で製造する樹状細胞ワクチンを台湾内の関連医療機関に提供していく予定にしている。同社は症例数に応じたロイヤリティ収入をVBから得ることになる。
※VBは、がんや感染症、免疫関連疾患を対象とした免疫細胞を用いた免疫療法技術・医薬品の開発、及び免疫細胞のバンキング事業を行っており、台湾株式市場に上場している。2017年12月期の売上高は519百万円、当期純損失は227百万円(1新台湾ドル=3.6円換算)。
3. 医師主導治験の進捗状況
膵臓がんを対象としたWT1ペプチドパルス樹状細胞ワクチン「TLP0-001」の医師主導治験は、安全性を確認する第I相試験が和歌山県立医科大学附属病院で行われており、2019年の早い段階で第2/3相試験に移行できるものと見られる。予定症例数は185症例、主要評価項目は全生存期間となり、プラセボ群との比較において統計的有意差が認められることを検証する。連結子会社のテラファーマ(株)が2022年までに承認申請を行う計画で、治験開始から承認取得までの費用として約38億円を見込んでいる。このうち約16億円は第三者割当増資等により調達済みで、残額についてはエクイティ・ファイナンスの実行や製薬企業等とのアライアンス契約締結により調達していく方針となっている。
4. 業績動向
2018年12月期第3四半期累計(2018年1月-9月)の連結業績は、売上高が前年同期比57.9%減の354百万円、営業損失が579百万円(前年同期は201百万円の損失)となった。売上高については細胞医療事業における症例数減少や2017年9月に子会社バイオメディカ・ソリューション(株)(以下、BMS)を売却したことが減収要因となった。利益面では細胞医療事業の減収に加えて、医薬品事業における治験費用増加が減益要因となった。また、特別損失として第三者委員会調査報告費用や追加の監査費用等173百万円を計上している。なお、第三者委員会が設置され同社ガバナンス体制の問題点が指摘されたものの、細胞医療事業等に直接の影響は生じていないと言う。2018年12月期の業績見通しについては、売上高で前期比46.7%減の510百万円、営業損失で1,060百万円(前期は245百万円の損失)と期初計画を据え置いている。
■Key Points
・2019年より国内で細胞加工受託事業を開始、台湾でも業務提携先を通じて樹状細胞ワクチン療法が開始される見通し
・膵臓がんを適用対象とした医師主導治験は順調に進捗、2019年以降に第2/3相試験に移行予定
・第三者委員会調査実施による事業上のマイナス影響はなく、今後は請求費用の見直し交渉を行う予定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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