■12月10日(月)■東京市場の「鈍感力」に期待

著者:堀篤
投稿:2018/12/10 08:39

まだ、年末高への期待が終わったわけではない。

■中国政府系ハッキング集団を摘発か

G20の場では、米中の貿易摩擦問題は、一度先送りになった形となり、先週の東京市場は強い始まり方をしたが、先週終盤、この問題の複雑さを、市場は思い知ることになった。
ホワイトハウスは、貿易摩擦休戦合意の中で「サイバー侵入とサイバー窃盗」を巡り交渉を始めることで一致した、と発表していたが、その背後で米国は先手を打っていたことがわかったのだ。
中国通信機器大手のファーウェイ副会長が、米国捜査機関によってカナダで逮捕され、この背後に中国の知的財産に対する侵害問題があるのではないか、と市場は疑念を持ったのだが、ウォールストリートジャーナルによれば、今週にも、米国は中国政府系ハッカーに対する刑事訴追を行うと報道された。
株式市場はこの報道を、「米中貿易摩擦問題に新たな火種」と受け止め、大幅に下落した。
 中国政府系ハッカーとは、いわゆる「menuPass Team」と呼ばれるグループ(各国でAPT10、Red Apollo、Stone Pandaなどとも呼ばれ、すべて同じ集団をさす)で、2009年頃から活動し、2016年頃から「クラウドホッパー作戦」と言われるプロバイダーを狙ったハッキングを大規模に展開するハッカーだ。
彼らは世界を代表するハッカー集団であると同時に、このハッカーの正体を暴くことは、中国政府関与の露呈につながり、国家間の大問題になることは、市場関係者の誰もが認めるところだろう。
 無論、ハッカー集団の壊滅は誰しも願うところだが、これが米中貿易摩擦問題にどう影響するか、未知数だと言わざるを得ない。
もっとも、各国投資家のバランス感覚が優れているのであれば、市場は時を経ず戻りに入るだろう。
ハッキングへの厳正な対応は、世界中の中期的なIT、IoTの成長に大きく寄与するからだ。
しかし、この問題の目先の米中貿易問題の影響や、クリスマス休暇前のポジション調整にのみ目を向ければ、市場は一旦、調整を強いられる可能性が高い。


■比較的強い東京市場

一方で東京市場は、実は、強い動きを続けている。10月26日の安値を最安値として、11月21日、12月6日と、徐々に安値は切りあがり、高値についても、12月3日の高値はその前の11月8日の高値を上回っている。
NY市場には、長短金利の逆転現象が景気の後退を予想させるという事情での下落もあり、東京市場よりも弱い動きとなっている分、東京市場の強さが目立つ。
NY市場の週末の下落を受け、来週週初に下落する可能性は高いが、問題はそこからの反発力だろう。
21307円、21243円といった直近の安値を切らなければ、東京市場の「鈍感力」は、再び上昇基調に入る期待につながるだろう。
まだ、年末高への期待が終わったわけではない。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想