■10月29日(月)■上昇への前提条件が崩れた東京市場

著者:堀篤
投稿:2018/10/29 08:42

調整はあと一息か

■調整はあと一息か

東京市場は、先週、22000円を割ると同時に、一気に21000円割れまでの下落を演じた。
予想以上に調整幅は大きかったが、こうなる予兆は確かにあった。
簡単に言えば、22000円を「割るのが遅れた」ことが、更なる下落を産んだと言えるだろう。
先週のコラムで書いたように、NY市場の下落が、ハイテク等高PER銘柄のバリュエーション見直しにつながった時点で、1週間程度の大きな幅の調整は覚悟すべきであったということだ。
 しかし、残念ながら、調整がこれで終わったとは思えない。これまでの我々の予想の前提条件が崩れる事象が生じているからだ。
結論から言えば、一旦もみあった後、今年の安値、20347円、あるいは、20000円割れまでの下落を覚悟しなくてはならない、ということだろう。
ただ、先週の下落スピードと下落幅が、調整のかなりの部分をすでに実現した、ということは、今後の戦略を構築する上で幸いなことではある。

■前提条件の一つが崩れた

今回の高PER銘柄の下落は、基本的には長期金利上昇に対する反作用だ。しかし、東京市場の動きを見ると、それ以外にもう一つの懸念が表面化したとしか考えられない。
それは、米中貿易摩擦によって、これまでは「漁夫の利」を得る、と思われていた日本経済の立場に変化が起き、悲観的な見通しが生じてきたことだ。
この懸念が、他の要因(サウジ問題や欧州財政問題)とも相まって急激な円高予想を産み、日本の高PER銘柄中心の下落に現れている、というのが、現在の東京市場を説明する最も現実的な説明だろう。ドル円は近く100円を割るだろう、という予想は、先週、にわかに増え始めたのだ。
これまでの東京市場の強気は、「貿易摩擦問題の来年までの先送り」がその条件にあった。しかし、先週、事態は急変した。日中首脳会談で、両国関係が改善の兆しを見せるのに合わせるかのように、米国は、11月予定の米中会談を無効化し、強硬路線を取る姿勢を見せ始めた。日本の貿易事業者によれば、中国から日本など第三国経由の輸出に対する厳しい規制は、想像以上だと言う。
また、ここへ来ての日中の接近は、米国の日本に対する貿易問題の提起を促進させ、トランプ氏に為替レートの調整政策を採用する理由を与えている。いわば、日本は米国にとって中国と同じカテゴリーに入ってしまうのではないか、というリスクを投資家は感じ始めている。こういった懸念が、外国人による日本株売りの背景にあるようだ。

■反転のきっかけは?

米国では、30日にフェイスブック、1日にアップルの業績発表がある。これを契機に、市場はさらに下落する可能性は否定できない。しかし、このときが、一つの底値形成の機会になる可能性もある。
また、11月下旬のG20で予定されている米中会談に向け、貿易摩擦問題での歩み寄りがある、もしくは日本の立場が有利になるようなニュースがあれば、東京市場は大きく上昇するだろう。11月6日から始まる中間選挙が、トランプ氏にどのような行動を取らせるか、予想する手立てはない。しかし、それが反転の機会になる可能性があることは間違いないだろう。

堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想