米国の長期金利や主要国株価の変動に反応しやすい地合いか

著者:八代 和也
投稿:2018/10/12 23:33

豪ドル、NZドル

豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは、米国の長期金利(10年債利回り)に目を向ける必要がありそうです。米長期金利が上昇すれば、米ドルが全般的に強含む可能性があります。その場合、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルには下落圧力が加わりそうです。一方、米長期金利が低下すれば、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは底堅い展開になりそうです。

豪ドル/円(NZドル/円)は、豪ドル/米ドル(NZドル/米ドル)と米ドル/円の両方の値動きの影響を受けます。米長期金利の上昇によって米国株が下がれば、リスク回避の動きが強まり、米ドル/円が下落する可能性があります。豪ドル/米ドルと米ドル/円がいずれも下落すれば、豪ドル/円の下げは大きくなる可能性があります。NZドル/円も同様です。

豪ドル/円やNZドル/円の目先の下値メドとして、豪ドル/円は78.69円(9月7日安値)、NZドル/円は72.27円(9月10日安値)が挙げられます。

来週は16日にNZの7-9月期CPIとRBA(豪中銀)議事録、18日に豪州の9月雇用統計の発表があり、それらの結果に豪ドルやNZドルが反応する可能性もあります。ただ、市場の関心が米長期金利などに向いているなかでは、豪州やNZの経済指標への反応は一時的に終わる可能性があります。

カナダドル

カナダドル/円は今週(10月8日の週)、約3週間ぶりの安値を記録しました。カナダドル/円が値を下げた背景として、米国の株安によってリスク回避の動き(円高要因)が強まったことや、原油価格の下落(カナダドル安要因)が挙げられます。

米国とカナダが9月30日にNAFTA(北米自由貿易協定)見直し交渉で合意したことや、BOC(カナダ中銀)が10月利上げ観測(次回会合は10月24日)は、カナダドルにとってプラス材料と考えられます。ただ、市場の関心は現在、カナダドルの独自材料以上に、国外の材料(米長期金利、主要国の株価、原油価格)に向いている状況です。

来週はカナダの9月CPI(消費者物価指数)と8月小売売上高が発表される(いずれも19日)ものの、カナダドル/円は主要国株価や原油価格の変動に影響を受けやすい地合いが続きそうです。

トルコリラ

10月12日、トルコで米国人のブランソン牧師の審理が行われます。本稿執筆時点では、審理の結果は判明していませんが、来週(10月15日の週)のトルコリラは裁判所が下した判断によって相場状況が異なる可能性があります。

「米国とトルコが米国人牧師を解放することで合意した」との報道があります(ただし、これは正式発表ではなく、注意が必要)。実際に、裁判所がブランソン牧師を解放するとの判断を下せば、トルコと米国の関係が改善に向かう可能性があり、トルコリラは上昇するとみられます。

一方、裁判所が解放を認めなければ、前述の報道で解放への期待が高まっているだけに、失望も大きくなりそうです。トルコリラは下落圧力にさらされる可能性があります。

南アフリカランド

10月9日、南アフリカのネネ財務相が辞任し、後任としてムボウェニ氏が指名されました。ネネ氏は10月3日、政治介入の疑いがあるグプタ兄弟の自宅を数回にわたり訪問したことがあると認め、それまでの主張を一転。それを受けて、ネネ氏に対して辞任を求める圧力が強まっていました。ムボウェニ新財務相は、SARB(南アフリカ中銀)総裁を10年間(1999-2009年)務めた経験があります。

ネネ氏が財務相を辞任したことで政治の不透明感が和らいだことや、後任に元SARB総裁が就任したことは、南アフリカランドにとってプラス材料と考えられます。

一方で、南アフリカランドの上値を抑える要因は残存しています。南アフリカ経済はリセッション(景気後退)に陥っているうえ、南アフリカの格付けをめぐる懸念も根強くあります。

南アフリカ国債の格付けは、S&Pとフィッチが投機的等級(ジャンク)、ムーディーズは投資適格級最低(Baa3)です。ムーディーズは10月12日に南アフリカの格付けを発表する予定です(本稿執筆時点で未発表)。南アフリカランド/円については、米国の株安(円高要因)もマイナス材料です。

南アフリカランド/円は約2カ月にわたって、おおむね7-8円のレンジで上下動を繰り返してきました。ランド/円にとってプラスとマイナス双方の材料があることから、ランド/円がレンジの上下どちらかを抜けるのは当面難しいかもしれません。
八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想