■成長戦略
フジコー<2405>の成長戦略の軸は、「森林発電事業」の安定稼働と電力小売りの拡大により持続的な成長を目指すものである。一方、主力の「建設系リサイクル事業」は、建設業界の景気変動による影響を受けやすいことから、多様な廃棄物の取扱いや取引先の分散による売上高の安定確保を図るとともに、収集運搬事業など周辺領域への拡充と既存事業との相乗効果を目指す方針である。
1. 森林発電事業の今後の見通し
2017年6月期よりフル稼働している「森林発電事業」は、現在の発電施設(フル稼働)で年間約12 億円の売上高(供給能力)が見込まれる。したがって、安定かつ効率的な稼働を推進することが同社成長を後押しするとともに、少なくとも固定買取制度が適用される20年間は業績の安定と収益力の向上をもたらす可能性が高い。一方、安定稼働に向けて最大の課題は、燃料となる森林資源の確保ということになるだろう。同社の発電施設は、森林資源の豊富な岩手県北部に立地しているため、岩手県はもとより、秋田県北部や青森県南部からの森林資源の確保ができるほか、発電施設周辺で操業している製材工場も多い。同社が利用する木くずは年間9万トンを予定しているが、近隣における製材に使えない木くずは推定30〜40万トン程度存在するものと見込んでいるようだ。いずれにせよ、地域との密接な関係構築が安定調達に向けたカギを握るだろう。
一方、地産地消型の事業モデルを推進する電力小売りは、地元の大志田ダム発電所(小水力電力施設)から電力を購入することにより、バイオマス発電施設の稼働前(2015年12月)から、地元の公共施設等(一戸町役場、小中学校、一戸町関連施設並びに一戸町内の事業会社)への販売を進めてきた。今後は、自社の発電施設からの購入を中心に据えながら、事業拡大に向けて、地元の他のバイオマス発電施設からの購入も進めていく考えだ。特に、2017年6月からは低圧電力の小売販売にも参入し、公共施設や事業会社の開拓に加えて、一般家庭等への展開にも注力している。
2. 既存事業の方向性
主力の「建設系リサイクル事業」については、各施設がフル稼働の状態が続いてきたが、廃棄物処理施設の事業用地取得から営業稼働運転を開始するまでに長期間を要することなどから、同業他社との事業提携やM&Aを中心とした事業拡大を目指している。特に、当面の課題として、収集運搬事業など比較的投資負担の少ない周辺領域への拡充と既存事業との相乗効果に取り組む方針である。
また、「食品系リサイクル事業」として展開している液状化飼料についても注力する考えである。液状化飼料は、従来の飼料よりも効率が高い(食品残渣を乾燥させる時間や燃料費がかからない)上、販売を外部委託に切り替えてからは徐々に養豚事業者に普及してきた。また、ゴミの分別などが廃棄物を集めるうえでネックとなっていたが、それも環境問題に対する意識の高まりから解消されてきており、「食品系リサイクル事業」の拡大余地は大きい。加えて、飼料代の高騰などで事業継続の危機を迎えている中小規模の畜産農家を支援する事業としても社会的な意義が大きいと位置付けている。養豚事業者を取り巻く環境にも影響を受けやすいため、状況を見定めながらの柔軟な対応により着実な成長を目指す方針のようだ。
弊社でも、「森林発電事業」における電力小売り(一般家庭等)と強固な財務基盤を生かした既存事業の拡大が同社の中長期的な成長をけん引するものとみている。特に、電力小売りについては、同社の発電施設だけでも12,000世帯から13,000世帯への供給が可能であり、地産地消型の事業モデルとして拡大余地が大きい。本格的な立ち上がりにはある程度の時間を要するものとみられるが、自然エネルギーへの理解や認知が浸透し、切り替えに対する心理的なハードルが払拭されれば一気に加速する可能性がある。さらに販売実績の積み上げや販売ネットワーク(代理店)の構築等により、他社のバイオマス発電施設からの電力購入や隣接市町村への小売販売など、スケールメリットを追求する戦略にも可能性が広がってくるだろう。また、既存事業においても、後継者問題などに直面している業界の中で、強固な財務基盤と最新鋭設備などに優位性を持つ同社がM&Aや業務提携等によって事業規模の拡大を図る機会は十分にあるとみている。したがって、今後も電力小売りの進捗状況のほか、周辺領域(収集運搬事業など)への拡充を含めた既存事業拡大への取り組みに注目していきたい。
■株主還元
2019年6月期も前期と同額の1株当たり12円の配当を予定
同社は、成長に応じた株主への利益還元を重要課題と認識しているが、現状は今後の成長に向けた設備投資や財務基盤の強化等に注力する方針としている。2018年6月期は、業績が期初の計画を下回ったものの、期初予想どおり、前期と同額の1株当たり12円(中間6円、期末6円)を実施した(配当性向95.5%)。2019年6月期も前期と同額の1株当たり12円(中間6円、期末6円)を予定している(予想配当性向60.5%)。弊社では、今後も安定的な配当政策を基本としながらも、森林発電事業(電力小売事業)を軸とした持続的成長により増配の余地は十分にあるとみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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フジコー<2405>の成長戦略の軸は、「森林発電事業」の安定稼働と電力小売りの拡大により持続的な成長を目指すものである。一方、主力の「建設系リサイクル事業」は、建設業界の景気変動による影響を受けやすいことから、多様な廃棄物の取扱いや取引先の分散による売上高の安定確保を図るとともに、収集運搬事業など周辺領域への拡充と既存事業との相乗効果を目指す方針である。
1. 森林発電事業の今後の見通し
2017年6月期よりフル稼働している「森林発電事業」は、現在の発電施設(フル稼働)で年間約12 億円の売上高(供給能力)が見込まれる。したがって、安定かつ効率的な稼働を推進することが同社成長を後押しするとともに、少なくとも固定買取制度が適用される20年間は業績の安定と収益力の向上をもたらす可能性が高い。一方、安定稼働に向けて最大の課題は、燃料となる森林資源の確保ということになるだろう。同社の発電施設は、森林資源の豊富な岩手県北部に立地しているため、岩手県はもとより、秋田県北部や青森県南部からの森林資源の確保ができるほか、発電施設周辺で操業している製材工場も多い。同社が利用する木くずは年間9万トンを予定しているが、近隣における製材に使えない木くずは推定30〜40万トン程度存在するものと見込んでいるようだ。いずれにせよ、地域との密接な関係構築が安定調達に向けたカギを握るだろう。
一方、地産地消型の事業モデルを推進する電力小売りは、地元の大志田ダム発電所(小水力電力施設)から電力を購入することにより、バイオマス発電施設の稼働前(2015年12月)から、地元の公共施設等(一戸町役場、小中学校、一戸町関連施設並びに一戸町内の事業会社)への販売を進めてきた。今後は、自社の発電施設からの購入を中心に据えながら、事業拡大に向けて、地元の他のバイオマス発電施設からの購入も進めていく考えだ。特に、2017年6月からは低圧電力の小売販売にも参入し、公共施設や事業会社の開拓に加えて、一般家庭等への展開にも注力している。
2. 既存事業の方向性
主力の「建設系リサイクル事業」については、各施設がフル稼働の状態が続いてきたが、廃棄物処理施設の事業用地取得から営業稼働運転を開始するまでに長期間を要することなどから、同業他社との事業提携やM&Aを中心とした事業拡大を目指している。特に、当面の課題として、収集運搬事業など比較的投資負担の少ない周辺領域への拡充と既存事業との相乗効果に取り組む方針である。
また、「食品系リサイクル事業」として展開している液状化飼料についても注力する考えである。液状化飼料は、従来の飼料よりも効率が高い(食品残渣を乾燥させる時間や燃料費がかからない)上、販売を外部委託に切り替えてからは徐々に養豚事業者に普及してきた。また、ゴミの分別などが廃棄物を集めるうえでネックとなっていたが、それも環境問題に対する意識の高まりから解消されてきており、「食品系リサイクル事業」の拡大余地は大きい。加えて、飼料代の高騰などで事業継続の危機を迎えている中小規模の畜産農家を支援する事業としても社会的な意義が大きいと位置付けている。養豚事業者を取り巻く環境にも影響を受けやすいため、状況を見定めながらの柔軟な対応により着実な成長を目指す方針のようだ。
弊社でも、「森林発電事業」における電力小売り(一般家庭等)と強固な財務基盤を生かした既存事業の拡大が同社の中長期的な成長をけん引するものとみている。特に、電力小売りについては、同社の発電施設だけでも12,000世帯から13,000世帯への供給が可能であり、地産地消型の事業モデルとして拡大余地が大きい。本格的な立ち上がりにはある程度の時間を要するものとみられるが、自然エネルギーへの理解や認知が浸透し、切り替えに対する心理的なハードルが払拭されれば一気に加速する可能性がある。さらに販売実績の積み上げや販売ネットワーク(代理店)の構築等により、他社のバイオマス発電施設からの電力購入や隣接市町村への小売販売など、スケールメリットを追求する戦略にも可能性が広がってくるだろう。また、既存事業においても、後継者問題などに直面している業界の中で、強固な財務基盤と最新鋭設備などに優位性を持つ同社がM&Aや業務提携等によって事業規模の拡大を図る機会は十分にあるとみている。したがって、今後も電力小売りの進捗状況のほか、周辺領域(収集運搬事業など)への拡充を含めた既存事業拡大への取り組みに注目していきたい。
■株主還元
2019年6月期も前期と同額の1株当たり12円の配当を予定
同社は、成長に応じた株主への利益還元を重要課題と認識しているが、現状は今後の成長に向けた設備投資や財務基盤の強化等に注力する方針としている。2018年6月期は、業績が期初の計画を下回ったものの、期初予想どおり、前期と同額の1株当たり12円(中間6円、期末6円)を実施した(配当性向95.5%)。2019年6月期も前期と同額の1株当たり12円(中間6円、期末6円)を予定している(予想配当性向60.5%)。弊社では、今後も安定的な配当政策を基本としながらも、森林発電事業(電力小売事業)を軸とした持続的成長により増配の余地は十分にあるとみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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