[9/24-28、資源・新興国通貨展望] トルコリラはエルドアン大統領の言動に要注意

著者:八代 和也
投稿:2018/09/21 19:26

豪ドル

豪ドルは、豪州関連(経済指標など)のニュース以上に、市場のリスク意識の変化(リスクオン、リスクオフ)に反応しやすい地合いです。この状況は来週(9月24日の週)も続く可能性があります。

米国は9月24日に2000億米ドル相当の中国製品に追加関税を発動し、中国も同日、600億米ドル相当の対米追加関税を発動する予定です。米中双方とも、24日に相手国が追加関税を発動すれば、さらなる報復措置を検討する構えです。豪ドルについては、米中の通商政策に引き続き要注意です。米中貿易摩擦への懸念が強まる場合、豪ドルの上値を抑える要因になりそうです。

一方で、米国株が上昇基調にあります。米国株が上昇を続ければ、市場はリスクオンの姿勢を強める可能性があります。リスクオンは豪ドルにとってプラス材料と考えられます。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)が9月27日に政策金利を発表します。その結果がNZドルの今後の動向に影響を与える可能性があります。

政策金利は現行の1.75%に据え置かれるとみられます。焦点は、金融政策の“中立(利上げと利下げのいずれもあり得る)”スタンスが変化するのか?になりそうです。

NZの企業景況感の悪化を背景に、市場では“RBNZの次の一手は利下げ”との見方があります。景気減速への懸念を一段と強めるなど、声明の内容が次の一手は利下げとの見方を補強するものになれば、NZドルには下落圧力が加わりそうです。一方、前回から声明の内容に大きな変化がなければ、NZドルは上昇する可能性があります。

カナダドル

カナダドル/円は9月20日、約7カ月ぶりの高値をつけました。米中貿易摩擦に対する過度な懸念が後退した(円安要因)ほか、BOC(カナダ中銀)が10月24日の会合で追加利上げに踏み切るとの見方(カナダドル高要因)が、カナダドル/円を押し上げました。

9月21日発表のカナダの8月CPIや7月小売売上高が10月利上げ観測を補強する結果(本稿執筆時点では未発表)になれば、カナダドルが上昇し、カナダドル/円は今後、89.38円(2月2日高値)を目指す可能性があります。

カナダドルに関してはまた、米国とカナダのNAFTA見直し交渉に引き続き目を向ける必要があり、見直し交渉に関するニュースにカナダドルが反応する可能性もあります。

トルコリラ

TCMB(トルコ中銀)が9月13日に6.25%の大幅な利上げを決定したことを受けて、トルコリラ/円は14日に一時18.49円へと上昇しました。
ただ、エルドアン大統領の以下の発言を受けて、トルコリラは今週(9月17日の週)反落しました。

・(TCMBの13日の利上げについて)「利上げはインフレの低下にはつながらない」、「忍耐には限界がある」
・「CHP(共和人民党、最大野党)が保有するトルコ勧業銀行株を政府に移管すべき」

前者は、エルドアン大統領がTCMBのさらなる利上げを容認しない、あるいは利下げ圧力を今後一段と強める可能性を示し、後者(野党保有銀行株の政府移管)が実際に行われればエルドアン大統領の経済支配が強まる恐れがあります。

トルコリラについては、エルドアン大統領の言動に要注意です。エルドアン大統領がTCMBの独立性を脅かす、あるいは経済支配の強化につながるような言動をすれば、トルコリラには下落圧力が加わる可能性があります。また、20日の中期経済計画で示された緊縮的政策が実現するかにも注目です。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は9月20日の会合で、市場の予想通り、政策金利を6.50%に据え置くことを決定しました。

クガニャゴ総裁は会見で、会合では7人の政策メンバーのうち、3人が利上げを求め、据え置きの決定は4対3の僅差で下されたことを明らかにしました。クガニャゴ総裁はまた、「インフレ見通しへのリスクが引き続き表面化しており、インフレ見通しは悪化した」と語りました。

南アフリカランドは、同国経済の低迷や、新興国通貨全般への下落圧力が重石となっています。ただ、SARBの政策金利据え置きの決定が僅差だったことで、市場では年内の利上げ観測が浮上する可能性があります。その場合、南アフリカランドの支援材料となりそうです。ランドは上値が重いながらも、下値もしっかりの展開になる可能性があります。
八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想