プラッツ Research Memo(2):介護用ベッドで販売台数シェア2位に成長

配信元:フィスコ
投稿:2018/09/21 15:32
■会社概要

1. 沿革
プラッツ<7813>は1992年、現代表取締役社長の福山明利(ふくやまあきとし)氏により、有限会社九州和研として設立された。救急用酸素蘇生機の販売からスタートし、その後医療用備品販売へと業容を拡大した。1995年に現社名に商号変更したのち、1997年から介護用電動ベッドの販売を開始した。2000年に介護保険法が施行され介護保険制度がスタートすると順調に販売を伸ばし、2003年6月期には販売台数年間1万台を達成した。その後も、国内営業拠点の整備に伴って販売台数は順調に拡大し、2011年6月期には販売台数年間4万台に達成し、販売台数シェアで第2位のポジションを占めるに至った。近年は成長戦略の一環として海外市場(中国及び東南アジア)の攻略と、介護の隣接領域である医療用ベッドへの進出に注力している。

証券市場には2015年3月に東京証券取引所マザーズ市場及び福岡証券取引所Q-Board市場に上場し、現在に至っている。


介護用ベッド、医療用ベッドを国内外に展開。ベトナムを主要拠点にファブレス体制を構築し、低価格戦略で独自のポジショニングを確立
2. 事業の概要
(1) 生産体制
同社の事業は介護・医療用電動ベッドの製造販売だ。医療用ベッドは2016年8月に参入したばかりのため、現状では売上高のほぼすべてを介護用ベッドが占めている。医療用ベッドは同社の中長期成長には欠かせない商品であり、専任営業担当者を配置して中期的にコア商品に育成していく状況だ。

製造については、同社はファブレス企業として外部に製造を委託している。同社が企画・開発・設計及び部材(鋼材、モーターなど)の調達を行い、委託先の工場が製造を行うという流れだ。

同社は創業後早い時期からベトナムに進出したが、現在は台湾資本の在ベトナム企業であるSHENGBANG METALに上工程の金属加工を委託し、同社の現法PLATZ VIETNAM CO., LTD.(連結子会社)においてベッドのアセンブリと品質検査を行うという流れとなっている。同社はSHENGBANG METALに対して2015年10月に出資し、持分法適用関連会社化している。

ベトナムで生産したものを日本に輸入することになるため、収益構造としては円高メリットとなる。同社はアジア諸国での販売にも注力しているが、この分は為替の影響はニュートラルだ。海外について、現状は中国・香港・韓国・台湾・インドネシア・タイ・シンガポール・ベトナムに代理店を擁しているが、高齢化の進行度や人口の大きさから最重点国は中国となっている。

(2) 販売市場
国内の介護ベッド市場は、介護保険制度の仕組みと密接に関わっている。介護保険制度(詳細は2016年9月16日付レポート参照)の枠内での利用かどうか、介護保険制度の中でも、どこで(自宅、高齢者施設)使われるか、によって、介護ベッドの購入主体(同社から見たら販売先)や流通ルートが変わってくる。そうした事情を反映して同社は、国内市場を販売先別に、「福祉用具流通市場」、「医療・高齢者施設市場」及び「家具流通市場」の3つに分けて管理している。

福祉用具流通市場とは、介護保険制度における福祉用具貸与(介護用品のレンタル)や販売に関する市場だ。利用者は自宅で生活する要介護認定を受けた高齢者だが、同社にとっての直接の顧客はそこに介護ベッドを貸し出すレンタル事業者や、レンタル事業者に対する卸業者(“レンタル卸業者”)だ。市場規模としてはこの市場が圧倒的に大きい。現状の利用者数やその成長率、耐用年数、更新需要などをもとに同社ではこの市場を年間10万台程度と推定している。同社にとってもこの市場は最大の売上構成比となっており、2018年6月期実績ベースでは77.0%だった。

医療・高齢者施設市場とは、病院等の医療機関と介護保険制度における高齢者施設を対象とする市場だ。従来は高齢者施設市場としていたが、2016年8月から医療用ベッドに進出したため、現在の呼称に変更した。介護ベッドも医療用ベッドも、老人ホームや病院という“施設”に置かれ、そこの入居者や患者が利用することになる。同社にとっての直接の顧客は、そうした施設の運営者や施設に設備や機器を販売する会社ということになる。市場規模について同社は、介護用ベッドについては年間8~9万台、医療用ベッドについては年間7万台前後と推定している。2018年6月期実績におけるこのセグメントの売上構成比は16.8%だった。この内訳として、医療用ベッドは、2016年8月に参入したばかりのため、現状では売上高のほぼすべてを介護用ベッドが占めている。

家具流通市場とは、介護保険とは関係のない、一般の家具流通に関連する市場だ。同社にとっての顧客は家具の卸商・小売店ということになる。利用者の個人が全額自己負担で購入することになるため、この市場は国内3市場の中では最も小さい。

海外市場という区分は文字どおり、中国をはじめとする海外での売上だ。現状は他に、ベトナム、韓国、インドネシア、タイ、シンガポールで介護ベッドを販売しているが、国別では60~70%を中国での販売が占め、それにベトナムと韓国を加えた3ヶ国で海外事業売上高のほとんどを占めているとみられる。同社は上海に連結子会社の富若慈(上海)貿易有限公司を有しており、そこを通じて中国及び他のアジア諸国の販売代理店に商品を供給している。海外市場の売上高はこれまで同社の期待よりも進展のスピードが遅かったが2018年6月に上海の企業と業務提携契約を締結した。これによって今後は成長スピードが一段上がると期待される状況にある。

(3) 同社の特長と強み
これまで述べたように同社のメイン市場は福祉用具流通市場、すなわち、在宅介護用のレンタルベッドとしての利用だ。利用者は、介護保険制度の下で保険給付を受けながらレンタル利用者から介護ベッドをレンタルし、1割の自己負担で利用することができる(ただし現役並所得者は3割負担)。

ベッドの価格はレンタル事業者のレンタル価格に影響する。一方、利用者からすればレンタル価格が低い方がそれだけ自己負担額も小さくなる。こうした市場構造の中、同社は後発メーカーということもあり、価格ゾーンを競合メーカーよりも20%~30%低くする低価格戦略で切り込み、それを武器に市場シェアを拡大してきた。同社に対抗すべく競合他社も低価格モデルをラインアップし、価格差は縮小してきているが依然として10%以上の価格差は存在し、平均価格ではやはり20%程度の価格差はあるとみられる。高機能ながら低価格というブランドイメージが確立されているものと弊社ではみている。

同社の低価格戦略を可能としているのは、1)主たる生産拠点をベトナムに展開、2)アッセンブリ・品質検査に特化した自社工場と、海外の優良協力工場・仕入先との連携、3)顧客・利用者が求める機能に的を絞った商品バリエーション、の3つの要因だ。特に大きいのはベトナム生産の要因で、同国の人件費は中国に比べても約半分と低いことが大きく寄与している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

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配信元: フィスコ

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