■9月3日(月)■中小型株の発掘と、米国株

著者:堀篤
投稿:2018/09/03 12:20

東京市場にはNY市場とは別のシナリオが必要

■中小型株を巻き込み、中期的な上昇が可能となった東京市場

東京市場は、仕切り直しの相場が続いている。
中小型の好業績銘柄が下げ止まり、資金がここへ戻ってきたことで、相場全体に横へ広がる余裕が出てきた。
数値で言えば、先週一週間でTOPIX100(大型株)は1.13ポイントの上昇だったが、TOPIX smallは2.43ポイント上昇した。今月に入って、TOPIX smallは週ごとに、−1.17p、−2.74p、0.96p、2.43pと第二週を底に、上昇幅が上がってきている。
このように中小型株を含めた循環物色の幅が広がった相場展開は、息の長い上昇につながるケースが多く、24000円への挑戦に、可能性が高まりつつある、と言えそうだ。
9月は、中小型個別銘柄の発掘をしてくべきだろう。
東京市場では、業績好調、成長性も高いと見做されている銘柄が、驚くほど下落しているケースがまだまだ見受けられる。
ただし、今週は、NY市場の休場(月曜)、日経平均採用銘柄の見直し(火曜水曜)、米中間の関税引上げ発表の可能性(木曜まで)など、指数売買を見送る理由ならいくらでもある週だ。この間に、個別中小型株が一気に上昇してくることも十分に考えられる。仕込みは急ぐべきかもしれない。
もちろん、引続き貿易摩擦関連銘柄、欧州経済に大きな影響を受ける企業は、敬遠すべきだろう。NAFTAを巡る米国カナダの交渉の行方は日本国内の自動車産業に大きな影響を与え、イタリアの政治経済の情勢は、欧州経済全体に大きな影響を及ぼす。特にカナダの情勢は、トヨタやその系列を顧客とする銘柄の株価を下落させやすいだろう。


■NY市場上昇の意味と留意点

NY市場では、好調な企業業績が相場をけん引しているが、問題はある。S&P500企業の4月~6月のEPSは前年同期比24.8%という驚異的な伸びを記録したが、この要因には減税効果が含まれている。つまり、本来の企業収益力の伸びだけではない、ということだ。そのディスカウントをどう考えるか。
そもそも米国企業の好調さには、自社株買いやM&Aの要素が大きい。米国株式市場は、ここ数年、その要因にはあえて目を瞑ってきたが、もしこの要因、つまり業績の質、というものに注目されるトレンドが現れると、米国株式市場は大きな下落へと転換する恐れがある。米国企業は、現在はまだ、国内消費の堅調さから本来の収益力を維持しているが、一方で、国外からの収益は業績の足を引っ張っている。
今回、減税効果による株価上昇が行き過ぎた場合は、反動安を覚悟しなくてはならないだろう。
もう一つ、留意すべきなのは、米国で株式市場を牽引しているのが、エネルギーセクターだということ。原油価格などの上昇によって、米国のシェールガス、シェールオイル関連企業が息を吹き返し、米国が資源輸出国へと転換する、という大きなトレンド変化が、米国市場の強気を支えている、ということだ。
今回の米国市場の上昇の本質は、このような米国の「産油国化」による国際的地位の絶対的地位の強化、だということができる。
言い換えれば、原油価格が、米株高を支えているという一面もある。
この点において、産油国ではない日本は関係が無い。安倍政権が、トランプ政権との良好な関係性から、米国の利益=日本の利益、という構図を作ろうとしたが、その試みは今のところ成功したとは言えない。
したがって、NY市場の上昇が決して東京市場に良い影響を与え続けるわけではない。つまり、東京市場にはNY市場とは別のシナリオが必要だということだ。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想