◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年春号 −仮想通貨とサイバーセキュリティ』(4月28日発売)の特集『仮想通貨のゆくえと日本経済』の一部である。また、8月3日発売の書籍『ザ・キャズム~今、ビットコインを買う理由~』(フィスコIR取締役COO/フィスコファイナンシャルレビュー編集長 中川博貴著)のダイジェスト版となる。全14回に分けて配信する。
ビットコインは、この世に誕生してからまだ10年も経過していない。2017年に最大20倍以上に膨れ上がったビットコインの価格を見て「中世オランダのチューリップ球根以来のバブル」だと評する声もあったが、これはバブルなのだろうか。ビットコイン投資に機関投資家が本格参入している今、その将来性を悲観するのは早計であろう。貨幣の歴史そのものに立ち返ることで、仮想通貨の本質的価値とその未来、これから日本経済が進むべき道を探る。
~仮想通貨は世界に何をもたらすか~
■日本の「国益」としての仮想通貨保有
日本が仮想通貨の潮流に乗るひとつの方法として、仮想通貨購入という選択肢はあり得る。実際、5月10日時点で、ビットコイン取引量全体に占める日本円建て取引の割合は約40.86%と、他の法定通貨に比べてもっとも高いシェアとなっている。米ドルは約22.63%の2位、3位は韓国ウォンの約6.23%だ(クリプトコンペアより)。
現在、仮想通貨市場全体の時価総額は約4137億ドルであり、2017年初の145億ドルから約28.5倍の急成長となっている。今後、ナスダックのビットコイン先物上場やその他の仮想通貨の先物が大手取引所に上場するなどの事態が生まれれば、さらなる市場拡大の可能性もある。
■日本経済の重要な分岐点となりうるシナリオ
では、仮想通貨を保有する以外で、日本はこの「仮想通貨経済革命」と、どのように向き合うべきなのだろうか。まず、その問いを検討する前提として、日本の置かれた現状について改めて認識を共有しておきたい。
日本は1990年代のバブル崩壊後、「失われた20年」を経験した。その後も経済はバブル崩壊前の水準に回復せず、2008年にリーマンショックによる金融危機、2011年に東日本大震災もあり、経済成長の伸び悩みに直面している。ただ、経済成長の伸び悩みに直面しているのは、日本だけではない。日本以外の先進諸国にもその「症状」は現れている。
こうした経済情勢を、米国の元財務長官で現ハーバード大学教授のローレンス・サマーズ氏は、2013年11月に国際通貨基金(IMF)の会合にて、「長期停滞」と称した。これは労働力人口の伸び率低下で生産性が長期的に伸び悩み、経済の潜在成長率を押し下げるという状況である。加えて、生産性の向上を促すはずの投資が停滞し、製品やその製造工程における目に見える技術的進歩の余地も限界を迎え、慢性的な需要不足に陥る状態のことだ。
日本はどの先進諸国よりも早く人口減少の局面を迎え、国内需要は縮小傾向にある。また、従来からある社会システムの転換が進まず、規制改革の遅れなども経済成長への足かせだ。このような状態が続けば、慢性的な需要不足と資本・労働生産性の伸び悩みに陥ることになるだろう。日本は今、長期停滞に陥るか否かという局面にある。
世界はこれから、現実世界と仮想空間が一体となるサイバーフィジカルシステム(CPS)を基とする第4次産業革命への期待が広がっている。この第4次産業革命は、農業中心から工業中心に、世界経済が大きく分岐した18世紀後半の第1次産業革命時と同じくらい大きな変革をもたらすという。
米歴史学者のケネス・ポメランツ氏の著書『大分岐中国・ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』によると、16~18世紀のヨーロッパとアジアには、第1次産業革命が起こるまで経済発展の度合いに差がなかったという。しかし、その後に機械的生産方式を導入した欧米諸国と導入しなかったアジアおよびアフリカ諸国は、経済発展の程度で大きな差が生じた。
歴史に学べば、第4次産業革命によって日本は、長期停滞から脱却し、大きく成長する可能性もあるということだ。日本は果たしてこの波に乗れるのだろうか。
(つづく~「仮想通貨のゆくえと日本経済vol.13 日本は、仮想通貨金融センターとなれるか【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」~)
◆フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役中村孝也
フィスコIR取締役COO中川博貴
シークエッジグループ代表白井一成
【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。
<HH>
ビットコインは、この世に誕生してからまだ10年も経過していない。2017年に最大20倍以上に膨れ上がったビットコインの価格を見て「中世オランダのチューリップ球根以来のバブル」だと評する声もあったが、これはバブルなのだろうか。ビットコイン投資に機関投資家が本格参入している今、その将来性を悲観するのは早計であろう。貨幣の歴史そのものに立ち返ることで、仮想通貨の本質的価値とその未来、これから日本経済が進むべき道を探る。
~仮想通貨は世界に何をもたらすか~
■日本の「国益」としての仮想通貨保有
日本が仮想通貨の潮流に乗るひとつの方法として、仮想通貨購入という選択肢はあり得る。実際、5月10日時点で、ビットコイン取引量全体に占める日本円建て取引の割合は約40.86%と、他の法定通貨に比べてもっとも高いシェアとなっている。米ドルは約22.63%の2位、3位は韓国ウォンの約6.23%だ(クリプトコンペアより)。
現在、仮想通貨市場全体の時価総額は約4137億ドルであり、2017年初の145億ドルから約28.5倍の急成長となっている。今後、ナスダックのビットコイン先物上場やその他の仮想通貨の先物が大手取引所に上場するなどの事態が生まれれば、さらなる市場拡大の可能性もある。
■日本経済の重要な分岐点となりうるシナリオ
では、仮想通貨を保有する以外で、日本はこの「仮想通貨経済革命」と、どのように向き合うべきなのだろうか。まず、その問いを検討する前提として、日本の置かれた現状について改めて認識を共有しておきたい。
日本は1990年代のバブル崩壊後、「失われた20年」を経験した。その後も経済はバブル崩壊前の水準に回復せず、2008年にリーマンショックによる金融危機、2011年に東日本大震災もあり、経済成長の伸び悩みに直面している。ただ、経済成長の伸び悩みに直面しているのは、日本だけではない。日本以外の先進諸国にもその「症状」は現れている。
こうした経済情勢を、米国の元財務長官で現ハーバード大学教授のローレンス・サマーズ氏は、2013年11月に国際通貨基金(IMF)の会合にて、「長期停滞」と称した。これは労働力人口の伸び率低下で生産性が長期的に伸び悩み、経済の潜在成長率を押し下げるという状況である。加えて、生産性の向上を促すはずの投資が停滞し、製品やその製造工程における目に見える技術的進歩の余地も限界を迎え、慢性的な需要不足に陥る状態のことだ。
日本はどの先進諸国よりも早く人口減少の局面を迎え、国内需要は縮小傾向にある。また、従来からある社会システムの転換が進まず、規制改革の遅れなども経済成長への足かせだ。このような状態が続けば、慢性的な需要不足と資本・労働生産性の伸び悩みに陥ることになるだろう。日本は今、長期停滞に陥るか否かという局面にある。
世界はこれから、現実世界と仮想空間が一体となるサイバーフィジカルシステム(CPS)を基とする第4次産業革命への期待が広がっている。この第4次産業革命は、農業中心から工業中心に、世界経済が大きく分岐した18世紀後半の第1次産業革命時と同じくらい大きな変革をもたらすという。
米歴史学者のケネス・ポメランツ氏の著書『大分岐中国・ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』によると、16~18世紀のヨーロッパとアジアには、第1次産業革命が起こるまで経済発展の度合いに差がなかったという。しかし、その後に機械的生産方式を導入した欧米諸国と導入しなかったアジアおよびアフリカ諸国は、経済発展の程度で大きな差が生じた。
歴史に学べば、第4次産業革命によって日本は、長期停滞から脱却し、大きく成長する可能性もあるということだ。日本は果たしてこの波に乗れるのだろうか。
(つづく~「仮想通貨のゆくえと日本経済vol.13 日本は、仮想通貨金融センターとなれるか【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」~)
◆フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役中村孝也
フィスコIR取締役COO中川博貴
シークエッジグループ代表白井一成
【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。
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