■中期経営計画
1. 中期成長イメージ
2018年3月期は国内要因で躓いたが、香港や米国の世界最高峰のジュエリーショーで立て続けに最高賞を受賞、中国では広州工場が稼働し海外本社がスタートするなど、海外では快進撃を続けている。特に中国では、製販体制が整い、今まさにハイセンス化するブライダルジュエリー需要の取り込みが始まろうとしている。また、かつて現地法人があり、現在でも一定の売上高のある米国は、桑山<7889>にとって将来性のある市場と言える。加工難度の高いプラチナ中心に品質と付加価値を訴求し、高級路線のセレクトショップなどへと商売を拡大していくと考えられる。その後は、人口ボーナスが見込まれるASEAN諸国、資産大国の多い中東へも進出する可能性もあると思われる。こうした地域では、中国と同様のビジネスモデルが有効とされるため、チェーン店というインフラが整う時期を見ての進出ということになるだろう。以上から、中期的には中国と北米が成長ドライバーになると予想される。一方国内も、2019年3月期の最優先施策によって、中期的に収益が回復し安定化することが見込まれ、海外という成長ドライバーを強力にサポートしていくと予想される。
このように楽しみの多い会社であることから、中長期的には売上高で500億円、営業利益率で4~5%程度は目指したいところである。しかし、同社は中期経営計画を公表していない。理由は、市況産業のため売上高が振れやすく将来を予想しづらいこと、売上高ほどに利益の額は振れないが、それを表現しようとすると収益構造の詳細に分け入ることになり、取引上の問題が生じる懸念のあること——である。これは短期業績の詳細を公表しないのと似た理由であり、同社が大手総合メーカーとして小売各社に商品を供給しているという、やや特殊な市場環境を考慮すればある程度は理解できる。しかし、一定の条件のもとでの中長期的な数値の目途や、期間を限定しない長期ビジョンは発表可能と思えるので、是非とも善処していただきたいと願っている。
リスクはなくならないが、常に対策を取っている
2. リスクと対策
懸念されるリスクは、相場変動によるリスクと新たな競合によるリスクである。同社は貴金属を扱っている関係で地金相場や為替相場の影響を受けやすい。また、海外展開も急ピッチのため海外でのリスクも増している。2016年3月期にタイ工場で多額の地金差損が発生したが、発生原因は予想外の相場変動と、外部に加工を依頼する際の販売し買い取るという特殊な商流にあった。貴金属を扱ううえで相場変動はある程度仕方ないが、対策として同社は、加工を依頼する際の地金取引について、2018年1月に売買取引から委託加工取引へと切り替えた。
近年増えてきた貴金属リユースや人工ダイヤモンドについても、今後少なからず影響が生じると考えられる。地金は溶かして精錬すれば新品になるので、リユースについて言えばダイヤモンドや色石のリユースである。同社は国内大手小売にブライダル需要向けフレッシュダイヤモンド(バージンダイヤモンド)を直接納品している。ブライダル客の中古嫌いは強いため、同社は当面リユースを扱わないことにしている。一方、非常に質の高いジュエリー用人工ダイヤモンドが登場しているが、市場環境の変化や顧客の要望などを見極めながら、将来的に同社が人工ダイヤモンドを扱う余地はあるとも考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<MH>
1. 中期成長イメージ
2018年3月期は国内要因で躓いたが、香港や米国の世界最高峰のジュエリーショーで立て続けに最高賞を受賞、中国では広州工場が稼働し海外本社がスタートするなど、海外では快進撃を続けている。特に中国では、製販体制が整い、今まさにハイセンス化するブライダルジュエリー需要の取り込みが始まろうとしている。また、かつて現地法人があり、現在でも一定の売上高のある米国は、桑山<7889>にとって将来性のある市場と言える。加工難度の高いプラチナ中心に品質と付加価値を訴求し、高級路線のセレクトショップなどへと商売を拡大していくと考えられる。その後は、人口ボーナスが見込まれるASEAN諸国、資産大国の多い中東へも進出する可能性もあると思われる。こうした地域では、中国と同様のビジネスモデルが有効とされるため、チェーン店というインフラが整う時期を見ての進出ということになるだろう。以上から、中期的には中国と北米が成長ドライバーになると予想される。一方国内も、2019年3月期の最優先施策によって、中期的に収益が回復し安定化することが見込まれ、海外という成長ドライバーを強力にサポートしていくと予想される。
このように楽しみの多い会社であることから、中長期的には売上高で500億円、営業利益率で4~5%程度は目指したいところである。しかし、同社は中期経営計画を公表していない。理由は、市況産業のため売上高が振れやすく将来を予想しづらいこと、売上高ほどに利益の額は振れないが、それを表現しようとすると収益構造の詳細に分け入ることになり、取引上の問題が生じる懸念のあること——である。これは短期業績の詳細を公表しないのと似た理由であり、同社が大手総合メーカーとして小売各社に商品を供給しているという、やや特殊な市場環境を考慮すればある程度は理解できる。しかし、一定の条件のもとでの中長期的な数値の目途や、期間を限定しない長期ビジョンは発表可能と思えるので、是非とも善処していただきたいと願っている。
リスクはなくならないが、常に対策を取っている
2. リスクと対策
懸念されるリスクは、相場変動によるリスクと新たな競合によるリスクである。同社は貴金属を扱っている関係で地金相場や為替相場の影響を受けやすい。また、海外展開も急ピッチのため海外でのリスクも増している。2016年3月期にタイ工場で多額の地金差損が発生したが、発生原因は予想外の相場変動と、外部に加工を依頼する際の販売し買い取るという特殊な商流にあった。貴金属を扱ううえで相場変動はある程度仕方ないが、対策として同社は、加工を依頼する際の地金取引について、2018年1月に売買取引から委託加工取引へと切り替えた。
近年増えてきた貴金属リユースや人工ダイヤモンドについても、今後少なからず影響が生じると考えられる。地金は溶かして精錬すれば新品になるので、リユースについて言えばダイヤモンドや色石のリユースである。同社は国内大手小売にブライダル需要向けフレッシュダイヤモンド(バージンダイヤモンド)を直接納品している。ブライダル客の中古嫌いは強いため、同社は当面リユースを扱わないことにしている。一方、非常に質の高いジュエリー用人工ダイヤモンドが登場しているが、市場環境の変化や顧客の要望などを見極めながら、将来的に同社が人工ダイヤモンドを扱う余地はあるとも考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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