■要約
オプティム<3694>は、現代表取締役社長の菅谷俊二(すがやしゅんじ)氏らが2000年に佐賀県で起業したAI・IoT技術を得意とするベンチャー企業である。パソコン向け管理プラットフォーム「Optimal Biz」で端末管理市場を創造し、現在ではスマートフォン等を含むマルチデバイス対応の管理プラットフォーム開発をリード する。デバイス管理プラットフォームを進化させたAI・IoTの新プラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」も完成させ、デファクト化を狙っている。当初から特許取得を念頭に技術開発を行っており、関連の特許を数多く所有。ソフトウェアやコンテンツの使い放題サービスにも進出し、ビジネスモデルの幅を広げている。2015年からはITを使って業界に変革を起こす「〇〇×IT(〇〇に業種が入る)」の取り組みが本格化し、農水産業・医療・建設などの分野でパートナー企業・団体とともにプロジェクトがスタート。2016年には、農業分野でドローンを活用した害虫駆除の実証実験に成功し、医療分野では遠隔医療サービス「ポケットドクター」が表彰されるなど成果が顕在化している。2017年には、IoTハードウェアの開発力を持つ(株)テレパシー・グローバルを子会社化。大手企業のパートナーは数多く、同社の技術力やポテンシャルは内外からも高く評価されている。2014年に東証マザーズ上場、2015年には東証1部に昇格。
1. 事業内容
同社の主力事業は、「IoTプラットフォームサービス事業」であり、全社売上の67.1%(2018年3月期)を構成する。スマートフォンやタブレットなどの様々なデバイスをクラウド上で管理し、組織内の運用管理、資産管理やセキュリティポリシーの設定などを行う「Optimal Biz」が主力サービスである。2016年のIDC Japan(株)の調査では市場シェア No.1を獲得しており、市場リーダーの地位を確立している。
次世代の主力サービスである「OPTiM Cloud IoT OS」は、6つの標準アプリ(1)デバイス管理、2)データ分析、3)地理的情報マッピング、4)カメラ映像解析、5)IoTサービス専門ストア、6)統合開発環境)が出揃い、順次進化している。「OPTiM Cloud IoT OS」発表から約2年が経過し、様々な分野のパートナー企業との連携により、「OPTiM Cloud IoT OS」を活用したサービスが続々登場している。2017年に行われた見本市(CEATEC及び農業Expo)では、合計14の新ソリューションが発表された。例えば、「AI Physical Security Service」は異常などを検知するAI監視カメラサービスであり、JR九州<9142>との実証実験が開始されている。「Smart Field」は建設業界向けのサービスであり、現場の情報を統合的に管理し、見える化を実現する。農業分野からは6サービスが発表され、これまでの実証実験段階から実用化段階に入った。
2. 業績動向
2018年3月期は、売上高が前期比27.0%増の4,210百万円、営業利益が同41.4%減の401百万円、経常利益が同40.6%減の404百万円、当期純利益が同13.9%増の453百万円と大幅な増収、営業・経常利益は減益となった。売上に関しては、創業来18期連続となる過去最高売上を達成した。主力のIoTプラットフォームサービスが前期比30%以上成長し増収をけん引。トップシェアの「Optimal Biz」がEMM市場の成長を追い風に引き続きライセンス数を伸ばした。その他サービスが前期比60%以上と伸びたのは人気雑誌読み放題サービス「タブホ」のライセンス数の増加が要因である。全体として売上の9割近くをストック型ビジネスが占めており、ライセンス数が積み上がることで、自動的に売上高も成長する構造である。公約通りに研究開発に約400百万円投じたため、営業減益となり、営業利益率9.5%で着地した。なお、純利益が経常利益を上回ったのは、期中に吸収合併したテレパシー・グローバルが累積損失を抱えていたためであり税効果があった。
2019年3月期通期の業績予想は、売上高で前期比20.2%増の5,060百万円と大幅増収を予想する。各利益に関しては、予想に幅を設け、営業利益で1百万円~1,000百万円、経常利益で1~1,000百万円、当期純利益で0~620百万円を予想する。売上高に関しては、前期比20.2%増(前期は27.0%増)の予想であり、同社の実績や外部環境からすると、やや控えめながら妥当な計画値と考えられる。同社は第4次産業革命の中心的企業になるべく、AI・IoT・Robot分野に積極的な投資を行うという基本方針を持つ。利益の範囲内で、思い切った財政出動をしたケースが予想の下限(営業利益1百万円)となる。一方で上限(営業利益1,000百万円)は、同社の巡航速度における収益である。2019年3月期の方針は「投資」であり、利益水準は低いほうが順調(戦略を遂行できている)と考えたい。
3. 成長戦略
同社のビジョンは、「IoT/AI/Robot分野への投資を強化し、第4次産業革命の中心となる企業となる」ことである。2019年3月期は新たに「世界一、AIを実用化する企業になる」がビジョンとして追加された。技術が優れているだけでなく、実業の中で使いこなし効果を出すという、強い思いが込められている。基本戦略としては、「◯◯×IT」。直近で進捗が著しいのが、農業、建設、医療・介護、小売、行政や交通インフラなどの業界である。
同社は、2018年3月期決算のタイミングで初めて将来的な「〇〇×IT戦略」への投資の見通し(年表)を明らかにした。それによると、2018年(2019年3月期)は「投資」をメインとし、ビジネスモデルの確立と主要パートナーとの連携を行う。2019年(2020年3月期)には、「投資」とともに「売上計上」が始まり、拡販に向けた体制を確立する。2020年(2021年3月期)以降は「利益回収」と位置付けられている。2019年からの売上計上が見えてきたということは、複数の業界において実証を積み重ねてきた中で、効果が認められ、事業化及び収益化の確信が持てるようになったと推察できる。
■Key Points
・既存事業(Optimal Biz等)はストック型ライセンス収入が安定成長。新規事業(OPTiM Cloud IoT OS等)でデファクト化を狙う
・2018年3月期は創業来18期連続の増収。AI・IoT・Robot分野への開発投資を積極化し計画通り減益
・新ビジョンは「世界一、AIを実用化する企業になる」。2019年3月期は〇〇×ITのビジネスモデルの確立を農業、建設、医療などの業界で目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
<NB>
オプティム<3694>は、現代表取締役社長の菅谷俊二(すがやしゅんじ)氏らが2000年に佐賀県で起業したAI・IoT技術を得意とするベンチャー企業である。パソコン向け管理プラットフォーム「Optimal Biz」で端末管理市場を創造し、現在ではスマートフォン等を含むマルチデバイス対応の管理プラットフォーム開発をリード する。デバイス管理プラットフォームを進化させたAI・IoTの新プラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」も完成させ、デファクト化を狙っている。当初から特許取得を念頭に技術開発を行っており、関連の特許を数多く所有。ソフトウェアやコンテンツの使い放題サービスにも進出し、ビジネスモデルの幅を広げている。2015年からはITを使って業界に変革を起こす「〇〇×IT(〇〇に業種が入る)」の取り組みが本格化し、農水産業・医療・建設などの分野でパートナー企業・団体とともにプロジェクトがスタート。2016年には、農業分野でドローンを活用した害虫駆除の実証実験に成功し、医療分野では遠隔医療サービス「ポケットドクター」が表彰されるなど成果が顕在化している。2017年には、IoTハードウェアの開発力を持つ(株)テレパシー・グローバルを子会社化。大手企業のパートナーは数多く、同社の技術力やポテンシャルは内外からも高く評価されている。2014年に東証マザーズ上場、2015年には東証1部に昇格。
1. 事業内容
同社の主力事業は、「IoTプラットフォームサービス事業」であり、全社売上の67.1%(2018年3月期)を構成する。スマートフォンやタブレットなどの様々なデバイスをクラウド上で管理し、組織内の運用管理、資産管理やセキュリティポリシーの設定などを行う「Optimal Biz」が主力サービスである。2016年のIDC Japan(株)の調査では市場シェア No.1を獲得しており、市場リーダーの地位を確立している。
次世代の主力サービスである「OPTiM Cloud IoT OS」は、6つの標準アプリ(1)デバイス管理、2)データ分析、3)地理的情報マッピング、4)カメラ映像解析、5)IoTサービス専門ストア、6)統合開発環境)が出揃い、順次進化している。「OPTiM Cloud IoT OS」発表から約2年が経過し、様々な分野のパートナー企業との連携により、「OPTiM Cloud IoT OS」を活用したサービスが続々登場している。2017年に行われた見本市(CEATEC及び農業Expo)では、合計14の新ソリューションが発表された。例えば、「AI Physical Security Service」は異常などを検知するAI監視カメラサービスであり、JR九州<9142>との実証実験が開始されている。「Smart Field」は建設業界向けのサービスであり、現場の情報を統合的に管理し、見える化を実現する。農業分野からは6サービスが発表され、これまでの実証実験段階から実用化段階に入った。
2. 業績動向
2018年3月期は、売上高が前期比27.0%増の4,210百万円、営業利益が同41.4%減の401百万円、経常利益が同40.6%減の404百万円、当期純利益が同13.9%増の453百万円と大幅な増収、営業・経常利益は減益となった。売上に関しては、創業来18期連続となる過去最高売上を達成した。主力のIoTプラットフォームサービスが前期比30%以上成長し増収をけん引。トップシェアの「Optimal Biz」がEMM市場の成長を追い風に引き続きライセンス数を伸ばした。その他サービスが前期比60%以上と伸びたのは人気雑誌読み放題サービス「タブホ」のライセンス数の増加が要因である。全体として売上の9割近くをストック型ビジネスが占めており、ライセンス数が積み上がることで、自動的に売上高も成長する構造である。公約通りに研究開発に約400百万円投じたため、営業減益となり、営業利益率9.5%で着地した。なお、純利益が経常利益を上回ったのは、期中に吸収合併したテレパシー・グローバルが累積損失を抱えていたためであり税効果があった。
2019年3月期通期の業績予想は、売上高で前期比20.2%増の5,060百万円と大幅増収を予想する。各利益に関しては、予想に幅を設け、営業利益で1百万円~1,000百万円、経常利益で1~1,000百万円、当期純利益で0~620百万円を予想する。売上高に関しては、前期比20.2%増(前期は27.0%増)の予想であり、同社の実績や外部環境からすると、やや控えめながら妥当な計画値と考えられる。同社は第4次産業革命の中心的企業になるべく、AI・IoT・Robot分野に積極的な投資を行うという基本方針を持つ。利益の範囲内で、思い切った財政出動をしたケースが予想の下限(営業利益1百万円)となる。一方で上限(営業利益1,000百万円)は、同社の巡航速度における収益である。2019年3月期の方針は「投資」であり、利益水準は低いほうが順調(戦略を遂行できている)と考えたい。
3. 成長戦略
同社のビジョンは、「IoT/AI/Robot分野への投資を強化し、第4次産業革命の中心となる企業となる」ことである。2019年3月期は新たに「世界一、AIを実用化する企業になる」がビジョンとして追加された。技術が優れているだけでなく、実業の中で使いこなし効果を出すという、強い思いが込められている。基本戦略としては、「◯◯×IT」。直近で進捗が著しいのが、農業、建設、医療・介護、小売、行政や交通インフラなどの業界である。
同社は、2018年3月期決算のタイミングで初めて将来的な「〇〇×IT戦略」への投資の見通し(年表)を明らかにした。それによると、2018年(2019年3月期)は「投資」をメインとし、ビジネスモデルの確立と主要パートナーとの連携を行う。2019年(2020年3月期)には、「投資」とともに「売上計上」が始まり、拡販に向けた体制を確立する。2020年(2021年3月期)以降は「利益回収」と位置付けられている。2019年からの売上計上が見えてきたということは、複数の業界において実証を積み重ねてきた中で、効果が認められ、事業化及び収益化の確信が持てるようになったと推察できる。
■Key Points
・既存事業(Optimal Biz等)はストック型ライセンス収入が安定成長。新規事業(OPTiM Cloud IoT OS等)でデファクト化を狙う
・2018年3月期は創業来18期連続の増収。AI・IoT・Robot分野への開発投資を積極化し計画通り減益
・新ビジョンは「世界一、AIを実用化する企業になる」。2019年3月期は〇〇×ITのビジネスモデルの確立を農業、建設、医療などの業界で目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
<NB>
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