■6月25日(月)■半導体関連に広がった貿易摩擦問題をどうみるか

著者:堀篤
投稿:2018/06/25 12:48

「売り」が自動車や鉄鋼だけでなく、半導体業界へも広がってきたことで、買いが探しが訪れる可能性がある。

貿易摩擦問題が、市場に大きく影響を及ぼしつつある。
NY市場でも、自動車関連銘柄の下落幅が大きくなってきた。投資家の間では、自動車、自動車部品、半導体、鉄鋼、といった銘柄群の保有比率を下げる動きが続いている。
これらの動きは、米国の中間選挙に向けての一時的な混乱である、という見方が基本的な考え方だが、トランプ政権があまりに強気を続ければ、混乱は長期化し、株式市場の大きなトレンドに影響を与えかねない。
この「混乱」の評価について、米国でも多くのアナリストたちが議論を戦わせている。その中で、何人かのアナリストたちは、「一時的な混乱」派から、「米国経済への大きなダメージ」派へ宗旨替えを始めている。
彼らを迷わす大きな問題となっているのは、「売り」が自動車や鉄鋼だけでなく、半導体業界へも広がってきたことだ。
半導体は、現在絶好調の成長産業であり、米国ではインテルはじめ、強烈な利益を叩き出す企業が多く、これらの企業への業績に対し、アナリストの一部は、悲観的な見方をし始めた。しかし、米国の対中制裁が、ブーメランのように米国産業を襲うことについて、トランプ氏はあまり問題意識を持っていないと言われる。中国から輸入される半導体製品の多くは、その製造過程において米国企業が関連しており、中国の対米輸出が大幅に減れば、米国内の企業への影響も大きい。しかし、トランプ氏は、その犠牲よりも中国の犠牲のほうが大きいはずだ、とあくまで相対的な勝利に興味を置いている。
そこへ、21日にはインテルのクルザニッチ会長の辞任が伝えられた。たまたま、別の事情による退任と発表されているが、その後の経営に不安を抱くアナリストは多い。
日本でも、今年2月頃まで、半導体関連銘柄は圧倒的なパフォーマンスで力強い上昇を演じてきた。また、5月までは調整したといっても、まだ先高観は強かったといって良いだろう。しかし、6月に入り、動きが怪しくなり始めると、米中の貿易問題が激化する頃には、急落を始めた。日本企業の中にも、中国で製造を行い、米国へ輸出している企業もある。
東京エレクトロンやルネサスといった半導体関連株は、ここ1週間で大きく下落した。
相場をけん引してきた半導体関連銘柄が買えないとなると、市場の雰囲気は悪化するだろう。しかし、一方で、そろそろトランプ氏特有の方向転換があるはず、という声や、日本企業には、米中貿易摩擦に関して「漁夫の利」がある、という説を述べる業界人も出てきている。
これらの見極めができれば、半導体関連銘柄には成長性が高いだけに、安値を拾うこともできるだろう。その果実は大きいはずだ。
米中貿易問題の行方は、半導体関連銘柄の買い場を探すためにも、目を離せない状況となった。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想