■業績動向
● 2018年3月期の業績概要(実績)
(1) 損益状況
プロスペクト<3528>の2018年3月期の連結業績は、売上高11,927百万円(前期比15.7%減)、営業損失1,354百万円(前期は43百万円の損失)、経常損失909百万円(同516百万円の利益)となったが、TPJFを子会社化したことに伴う負ののれん発生益2,420百万円を特別利益として計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は1,720百万円(前期比252.0%増)となった。
全社では営業損失となったが、各事業セグメントは営業利益を計上している。各事業が黒字にも関わらず全社で営業損失となったのは、全社費用が大幅増となったことによるが、その理由の1つがTPJF子会社化に伴う費用(約500百万円)を全社費用として販売管理費に計上した一方で、負ののれん発生益は特別利益に計上されたためである。またハワイでの不動産投資事業(主にコンドミニアムの開発・販売)においても、諸費用は販管費に計上されるが回収(販売)は営業外収益に計上されるため営業損益を引き下げる要因となった。再生可能エネルギー事業においても、稼働中の発電所1ヶ所(山武東PJ)を売却したが、この売却益も特別利益に計上されているため、営業損益には反映されていない。
それらの点で、今回の決算結果は特殊(イレギュラー)であり、表面上の数字ほど懸念される内容ではなかった。事実、後に述べるように営業キャッシュ・フローは収入となっており、この点では全く問題のない決算であったと言える。
(2) セグメント別状況
a) マンション分譲
2018年3月期においては、「グローベル ザ・高円寺プレミアム」(全43戸)を始め、3棟120戸を竣工した(前期は3棟131戸の竣工)。販売については、115戸、4,379百万円の新規契約(同141戸、4,799百万円)を行い、引渡しは137戸(同115戸)となった。この結果、売上高は4,926百万円(同4,103百万円)、セグメント利益602百万円(同313百万円)となった。
b) 土地建物
2018年3月期には、契約実績及び販売実績はなかった。(前期は2,139百万円の契約、2,264百万円の売上高、218百万円のセグメント利益)。
c) 注文住宅
新規契約は58棟、1,659百万円(前期は40棟、1,206百万円)となり、40棟(同41棟)の引渡しを行った。この結果、売上高は1,482百万円(同1,565百万円)、セグメント利益は12百万円(同29百万円)となった。
契約実績については、山形県内の住宅市場全体において低調さが目立ち、展示場への来場者数も減っているなかで、全社一丸となった営業努力を重ねることで契約棟数を伸ばし受注増につなげた。しかしながら小振りな住宅が多く棟当たり単価は低下した。
d) アセットマネジメント
不動産及び日本株式を対象とする有価証券の運用を行う事業で、売上高396百万円(前期は173百万円)、セグメント利益66百万円(同39百万円のセグメント損失)を計上した。
e) 建設事業
売上高4,615百万円(前期は5,722百万円)、セグメント利益261百万円(同287百万円)を計上した。前期までに(元請として)受注していた東北地方での大型除染工事等が終了したことにより、売上高、営業利益ともに前期で減少したが、公共・民間工事の受注状況については底堅く推移しており、売上高、営業利益ともに事業計画どおりに進捗した。
f) 再生可能エネルギー事業
自社で運営する太陽光発電設備で発電した電気を電力会社に販売する事業で、売上高533百万円(前期は250百万円)、セグメント利益155百万円(同73百万円)を計上した。
2018年3月期中に2ヶ所(仙台PJ、宇都宮徳次郎PJ)が新規稼動し、1ヶ所(山武東PJ)を売却した。この山武東PJの売却益(569百万円)は特別利益に計上されており、セグメント営業利益には反映されていない。この結果、2018年3月期末の稼動数は6ヶ所(朝来PJ、香取PJ、牛久PJ、陸前高田PJ、仙台PJ、宇都宮徳次郎PJ)となり、同社持分の発電量は11.43MWとなった。現在、5ヶ所(山武南PJ、成田神崎PJ、東広島PJ、岡山県英田光PJ、他1基)が建設中であり、今後完成次第順次稼動を開始する予定だ。
g) その他
同社が所有しているマンション等を一般顧客向けに賃貸する事業が主で、売上高50百万円(前期は62百万円)、セグメント利益20百万円(同28百万円)を計上した。減収・減益となった理由は、マンション開発を目的とした収益物件にかかる賃料収入を含んでおり、仕掛開発用不動産に振替え済みの南大塚プロジェクトや、賃借人の退去が進んでいる左門町プロジェクトについて前期より収入が減少しているためだが、これらは計画どおりである。
(3) 財務状況
財務状況は引き続き安定している。2018年3月期末の資産合計は40,396百万円となり、前期末に比べ13,028百万円増加した。流動資産は27,900百万円となり同14,950百万円増加したが、主な要因は現金及び預金の増加5,271百万円に加え、TPJFの子会社化に伴い有価証券が9,773百万円増加したことによる。一方で固定資産は12,496百万円となり、同1,922百万円減少したが、有形固定資産の増加88百万円、無形固定資産の減少181百万円、投資その他資産の減少1,829百万円(主に長期貸付金の減少1,499百万円)による。
負債合計は14,746百万円となり、前期末に比べ132百万円増加した。主な要因は、仕入債務の増加191百万円、工事未払金の減少721百万円、短期借入金等の増加647百万円、長期借入金の減少846百万円による。純資産合計は25,650百万円となり、同13,161百万円増加となったが、主な要因は、TPJF子会社化に伴う新株発行(株式交換)により資本金及び資本準備金が増加したことによる。
(4) キャッシュ・フロー状況
2018年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは279百万円の収入であったが、主な収入は税金等調整前当期純利益の計上2,101百万円、減価償却費311百万円、棚卸資産の減少460百万円、仕入債務の増加307百万円などで、主な支出は負ののれん発生益2,420百万円、出資金運用益706百万円、売掛債権の増加130百万円など。投資活動によるキャッシュ・フローは2,216百万円の収入であったが、主な支出は有形固定資産の取得3,549百万円、主な収入は連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入2,935百万円、貸付金の回収(ネット)1,386百万円などであった。財務活動によるキャッシュ・フローは2,777百万円の収入であったが、主な収入は長短借入金の増加1,206百万円、新株予約権の行使による株式の発行1,601百万円、自己株式の処分330百万円などで、一方で主な支出は配当金の支払い505百万円など。この結果、期間中の現金及び現金同等物は5,271百万円の増加となり、期末の現金及び現金同等物の残高は10,651百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<NB>
● 2018年3月期の業績概要(実績)
(1) 損益状況
プロスペクト<3528>の2018年3月期の連結業績は、売上高11,927百万円(前期比15.7%減)、営業損失1,354百万円(前期は43百万円の損失)、経常損失909百万円(同516百万円の利益)となったが、TPJFを子会社化したことに伴う負ののれん発生益2,420百万円を特別利益として計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は1,720百万円(前期比252.0%増)となった。
全社では営業損失となったが、各事業セグメントは営業利益を計上している。各事業が黒字にも関わらず全社で営業損失となったのは、全社費用が大幅増となったことによるが、その理由の1つがTPJF子会社化に伴う費用(約500百万円)を全社費用として販売管理費に計上した一方で、負ののれん発生益は特別利益に計上されたためである。またハワイでの不動産投資事業(主にコンドミニアムの開発・販売)においても、諸費用は販管費に計上されるが回収(販売)は営業外収益に計上されるため営業損益を引き下げる要因となった。再生可能エネルギー事業においても、稼働中の発電所1ヶ所(山武東PJ)を売却したが、この売却益も特別利益に計上されているため、営業損益には反映されていない。
それらの点で、今回の決算結果は特殊(イレギュラー)であり、表面上の数字ほど懸念される内容ではなかった。事実、後に述べるように営業キャッシュ・フローは収入となっており、この点では全く問題のない決算であったと言える。
(2) セグメント別状況
a) マンション分譲
2018年3月期においては、「グローベル ザ・高円寺プレミアム」(全43戸)を始め、3棟120戸を竣工した(前期は3棟131戸の竣工)。販売については、115戸、4,379百万円の新規契約(同141戸、4,799百万円)を行い、引渡しは137戸(同115戸)となった。この結果、売上高は4,926百万円(同4,103百万円)、セグメント利益602百万円(同313百万円)となった。
b) 土地建物
2018年3月期には、契約実績及び販売実績はなかった。(前期は2,139百万円の契約、2,264百万円の売上高、218百万円のセグメント利益)。
c) 注文住宅
新規契約は58棟、1,659百万円(前期は40棟、1,206百万円)となり、40棟(同41棟)の引渡しを行った。この結果、売上高は1,482百万円(同1,565百万円)、セグメント利益は12百万円(同29百万円)となった。
契約実績については、山形県内の住宅市場全体において低調さが目立ち、展示場への来場者数も減っているなかで、全社一丸となった営業努力を重ねることで契約棟数を伸ばし受注増につなげた。しかしながら小振りな住宅が多く棟当たり単価は低下した。
d) アセットマネジメント
不動産及び日本株式を対象とする有価証券の運用を行う事業で、売上高396百万円(前期は173百万円)、セグメント利益66百万円(同39百万円のセグメント損失)を計上した。
e) 建設事業
売上高4,615百万円(前期は5,722百万円)、セグメント利益261百万円(同287百万円)を計上した。前期までに(元請として)受注していた東北地方での大型除染工事等が終了したことにより、売上高、営業利益ともに前期で減少したが、公共・民間工事の受注状況については底堅く推移しており、売上高、営業利益ともに事業計画どおりに進捗した。
f) 再生可能エネルギー事業
自社で運営する太陽光発電設備で発電した電気を電力会社に販売する事業で、売上高533百万円(前期は250百万円)、セグメント利益155百万円(同73百万円)を計上した。
2018年3月期中に2ヶ所(仙台PJ、宇都宮徳次郎PJ)が新規稼動し、1ヶ所(山武東PJ)を売却した。この山武東PJの売却益(569百万円)は特別利益に計上されており、セグメント営業利益には反映されていない。この結果、2018年3月期末の稼動数は6ヶ所(朝来PJ、香取PJ、牛久PJ、陸前高田PJ、仙台PJ、宇都宮徳次郎PJ)となり、同社持分の発電量は11.43MWとなった。現在、5ヶ所(山武南PJ、成田神崎PJ、東広島PJ、岡山県英田光PJ、他1基)が建設中であり、今後完成次第順次稼動を開始する予定だ。
g) その他
同社が所有しているマンション等を一般顧客向けに賃貸する事業が主で、売上高50百万円(前期は62百万円)、セグメント利益20百万円(同28百万円)を計上した。減収・減益となった理由は、マンション開発を目的とした収益物件にかかる賃料収入を含んでおり、仕掛開発用不動産に振替え済みの南大塚プロジェクトや、賃借人の退去が進んでいる左門町プロジェクトについて前期より収入が減少しているためだが、これらは計画どおりである。
(3) 財務状況
財務状況は引き続き安定している。2018年3月期末の資産合計は40,396百万円となり、前期末に比べ13,028百万円増加した。流動資産は27,900百万円となり同14,950百万円増加したが、主な要因は現金及び預金の増加5,271百万円に加え、TPJFの子会社化に伴い有価証券が9,773百万円増加したことによる。一方で固定資産は12,496百万円となり、同1,922百万円減少したが、有形固定資産の増加88百万円、無形固定資産の減少181百万円、投資その他資産の減少1,829百万円(主に長期貸付金の減少1,499百万円)による。
負債合計は14,746百万円となり、前期末に比べ132百万円増加した。主な要因は、仕入債務の増加191百万円、工事未払金の減少721百万円、短期借入金等の増加647百万円、長期借入金の減少846百万円による。純資産合計は25,650百万円となり、同13,161百万円増加となったが、主な要因は、TPJF子会社化に伴う新株発行(株式交換)により資本金及び資本準備金が増加したことによる。
(4) キャッシュ・フロー状況
2018年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは279百万円の収入であったが、主な収入は税金等調整前当期純利益の計上2,101百万円、減価償却費311百万円、棚卸資産の減少460百万円、仕入債務の増加307百万円などで、主な支出は負ののれん発生益2,420百万円、出資金運用益706百万円、売掛債権の増加130百万円など。投資活動によるキャッシュ・フローは2,216百万円の収入であったが、主な支出は有形固定資産の取得3,549百万円、主な収入は連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入2,935百万円、貸付金の回収(ネット)1,386百万円などであった。財務活動によるキャッシュ・フローは2,777百万円の収入であったが、主な収入は長短借入金の増加1,206百万円、新株予約権の行使による株式の発行1,601百万円、自己株式の処分330百万円などで、一方で主な支出は配当金の支払い505百万円など。この結果、期間中の現金及び現金同等物は5,271百万円の増加となり、期末の現金及び現金同等物の残高は10,651百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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