積極投資で成長路線に変化なし!
●篠昌義氏
シェアリングテクノロジー 取締役CFO
東証マザーズに上場しているシェアリングテクノロジー <3989> は、ライフサービスマッチング事業をメインに展開。総合プラットフォームサイト「生活110番」では、暮らしのなかの困りごとなどを解決するため生活に関する200以上のジャンルから、最適なサービス提供者を検索・比較し、問い合わせできるWEB事業を行っている。また、同社は、上場後7ヵ月で6つのM&Aを戦略的に実施し、WEB事業以外も積極的に行っている。そうしたなか、同社は2018年9月期第2四半期の決算を4月27日に発表している。急激な成長を続ける同社の決算発表、今後の事業展開について、篠昌義(しの・まさよし)取締役CFOに聞いた。
――今回の決算発表について教えてください
篠 はい。今回の2018年9月期第2四半期の決算発表において、売上高は前年同期比73%増の11億円となりました。また、営業利益は、前年同期比86%減の2800万円となりました。
まず、営業利益についてですが、前期第3四半期から積極的に投資を継続し、足元は特にその投資を加速させているため、減益となりました。この営業利益は計画通りの進捗であり、KGI(重要目標達成指数)の一つである、売上高からWEB広告宣伝費を差し引いた潜在利益は今期予算を上回っており、事業は極めて順調に推移しています。
次に売上高についてです。当社のWEB事業の売上高は、トラフィック × CVR(コンバージョン率) × ユーザー単価で計算されますが、これら数値が各サイトで、順調に上昇していることが売上高増加の大きな要因です。例えばペット葬儀110番は2018年3月単月前年同月比ベースで、トラフィック80%増、CVR18%増、ユーザー単価13%増となりました。
これは、積極的な投資として、継続的なコンテンツ追加、WEB広告の最適化などによるトラフィック増加施策、ABテスト、サイトリニューアルなどによるCVR上昇施策、基幹システムであるSHARINGPLACE改善によるマッチング効率化、蓄積された加盟店データを元に様々な取り組みを実施したことなどによるユーザー単価上昇施策が功を奏したものと分析しています。なお、現在運営しているサイトの約8割はこれらがほとんど反映されていないため、現在施策を行っているサイトへ継続的にこれらを行っていくと同時に、順次そうしたサイトを拡大させていく予定です。また、ライター(2018年3月末時点アルバイトのみ)を55人投入しコンテンツ強化を図ることで、WEBサイトの価値を伸ばし、広告宣伝費を使わずにトラフィックを獲得していくことにも投資をしています。
今後は、これら施策を引き続き行うとともに、28サイトほどの新たなサイトの立ち上げを計画しています。当期中に8000万円以上を使い、架電営業と業者詳細ページの制作を行い、現在5500業者となっている生活110番の掲載業者数を、少なくとも5倍の2万7500業者に伸ばすことを予定しております。また、これらのWEBサイトならではの施策とは別に、「ライフサービス版Uber」のような他社が簡単に真似できないインフラ構築にも挑戦していく予定です。
――積極的な投資ということで、本当に様々な取り組みをされていることが理解できました。最後の「ライフサービス版Uber」ですが、こちらは一体どういったものなのでしょうか?
篠 当社の現状のスキームは、ユーザーから問い合わせがあった後、加盟店に取り次ぎ、改めて加盟店からご連絡を差し上げるというものでした。しかし、新しいシステムができた際には、GPS情報と新しいテクノロジーを駆使して、加盟店の位置情報とスケジュール情報を当社で把握することが可能になります。当社の各加盟店の各スタッフがどこにいるか把握でき、ユーザーの一番近くにいて、空いている加盟店を瞬時にマッチングさせることができます。これにより、成約率が上がりユーザー単価が大きく上昇することで利益が伸びる効果も期待していますが、近くにいる加盟店を手配することにより、より低価格でのサービス提供が可能になり、今まで積極的に展開しづらかった、例えば電球の交換、家具の組み立てといった低価格なサービスに対応できる加盟店を大幅に増やすことが可能になります。
少子高齢化の社会で、少しでも人の手を借りたいといった低価格なライフサービスの需要は今後伸びていくと考えています。当社としてはこの需要にどこよりも低価格でスピーディーなサービスを提供できる日本国内で唯一のライフサービスインフラを構築していくことが、ミッションだと考えており、近いうちに実現したいと考えております。また、BtoCビジネスを展開している大企業の中にも、これらのライフサービスインフラを欲している企業は多く存在していると考えており、当社だけがこのインフラを利用するのではなく、他の企業に開放するような今までとは異なる新しい収益モデルにもチャレンジしていきたいと考えています。
――ビジネスモデルが大きく変わるわけですね。ぜひ今後に期待したいと思います。ちなみに、M&Aについても6つ実施されているということですが、こちらも投資家の皆様が非常に気になっていることだと思います。どのようにお考えですか?
篠 当社は、2月22日付で、M&Aの説明資料を発表しました。M&Aの説明資料でも言及していますが、今回は、3つの戦略でM&Aをいたしました。戦略Aは、WEBマーケティングノウハウを活かして短期的な投資回収を見込むもの。戦略Bは、積極的な投資により高成長させることで、企業価値拡大を図るもの。戦略Cは、買収価格に対して純資産が潤沢で安定的な事業継続を目指すものになります。これらの戦略的なM&Aの結果、今回、買収総額24億円程度に対して、M&A対象会社合計の簿価純資産は25億円程度と、連結ベースで考えた場合、純資産が毀損しないM&Aを達成することができました。例えば戦略Bのリアブロード社(シェアリングテクノロジー100%)の短期留学サイト「スマ留」の申込数は、当社が買収後、3月は前年同月比で235%と今期過去最高の伸び率を達成することができました。このようにM&Aを行った会社の事業推進も積極的に行っております。
――既存のWEB事業が順調な中、今後もM&Aを積極的に行っていくのでしょうか?
篠 今後もM&Aは積極的に行っていく予定ですが、本業であるWEB事業は好調であり、当社として一番成長性と市場規模に期待しているのはWEB事業です。しかしながら、WEB事業を伸ばすために行うほとんどの投資はPLにインパクトしてしまいます。現在、M&Aや新規事業に関しては、投下した資金に対して短期的に出せる年間営業利益の割合が30%程度あるかどうかを基準として、検討しておりますが、WEB事業のこの割合はゆうに30%を超えていると考えております。当社としては、投資効果が高いWEB事業に投資をするために、調達した資金を、M&A等の通期で見た場合基本的にPLにプラスとなる投資に回し、期中の利益を予算外で増やすPL貯金が重要であると考えています。このPL貯金を使うことで、よりWEB事業に投資ができます。この一連の投資戦略こそが、WEB事業の加速的な成長を目標としている当社にとって、最も良い戦略であると考えています。この投資戦略により、当社グループ全体の毎年の利益を伸ばし続けながら、WEB事業を大きく伸ばすことができます。
今後も、世の中に必要不可欠な素晴らしいサービスを作っていきたいと考えておりますので、応援していただけますと幸いです。
●篠 昌義(しの・まさよし)
シェアリングテクノロジー株式会社 取締役CFO
管理本部長兼経営戦略室 室長・公認会計士
大阪大学大学院在学中に公認会計士試験にチャレンジ、2010年公認会計士試験に合格。同年に有限責任監査法人トーマツに入所。財務諸表監査や公的機関に対する支援業務に従事。2014年に退職後、税理士法人平成会計社に入所。税務業務に従事した後に、シェアリングテクノロジー株式会社の取締役CFOに就任。上場準備や財務戦略の立案のみならず、M&A業務なども担当。兵庫県出身。
関連銘柄
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