2017年に日経平均株価は世界最長とみられる16連騰を記録、またバブル後下落幅の半値戻しを達成した。テクニカル的には日本の株式市場が新次元に入った可能性が濃厚である。では、ファンダメンタルズはどうか。
当社は“不思議の国”からの帰還が始まったと考えている。ここ10数年間の日本は、水(資本)が下流から上流に向かって流れているのに、皆がそれを当たり前と思っている不思議の国であった。おかげで本来灌漑され肥沃なはずの平野が枯れ野となり、他方では上流のダムの中には利用されない水が満々とたまっている。下流の枯れ野の生活にくたびれ果てた人々は、ここは見込みのない宿命の不毛地だと思い込み諦めている。
しかし、国民金融資産の7割が利息ゼロの現預金として退蔵され、配当2%、益回り7%の株式から資金流出が続く、という不思議の国からの帰還が今、始まりつつある。ようやくアベノミクスの成果により、ダムに貯水された膨大な水が堰を切ったように流れ出し下流を潤す正常化が始まりつつある。米国並みの株式・投信7割、現預金2割という正常な国に戻る大資本移動を引き起こし、株式需給を激変させるだろう。
この正常化を正当化する条件が、熟柿のように整っている。日本企業の収益力は、日本企業の世界新環境(地政学、新技術と産業革命、グローバリゼーション)に完全に適合するビジネスモデルの完成により、歴史的に高まっている。世界同時好況、史上最高値更新中の世界株高は中国のハイテク爆投資により加速されつつある。豊かになったアジア中産階級が高品質日本に向かって群れをなして訪れている。少子高齢化に対する心配とは裏腹に労働需給は超ひっ迫の様相を示し始めた。不思議の国の下でのデフレ継続、総悲観大合唱が終わろうとしている。
日経平均が他国のように市場最高値を目指すシナリオは、至極当然になってきた。2018年は潮目の大転換の年となり、日経平均のフェアバリュー(3~4万円)の下限、3万円をうかがうと想定される。
(2017年12月7日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン190号」を転載)
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