日本乾溜工業 沢井博美社長インタビュー

投稿:2017/07/14 17:30

―地方銘柄をリードする九州企業の底力!―

 国内株式市場が上昇波動に乗る中、地方証券取引所の上場銘柄には、全国的な知名度こそ高くないもののキラリと光る注目したい優良な企業が存在する。昨年に引き続き、福岡証券取引所に単独上場している福岡単独上場会社の会(通称:単場会)http://fse.irnavi.minkabu.jp/の企業トップが、自らの言葉でユニークなビジネスモデルや成長戦略、経営上のリスクなどを語ってくれた。熊本震災からの復興の本格化が見込まれる中、福証単場会の銘柄はアツイ。
 

「安全」と「環境」を理念に九州を中心に3事業を展開!

1771:日本乾溜工業
代表取締役社長 沢井博美氏

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 九州福岡市に本社を置く日本乾溜工業(1771)では、熊本震災からの早期の復旧、復興に全力で取り組んでいる。「環境にやさしく安全な社会の創造に向けてあくなき挑戦を続ける」を理念に掲げる同社では、「建設」を柱に「防災安全」、「化学品」の3事業を展開している。今回、代表取締役社長である沢井博美氏に、同社の現状と成長戦略を聞き出した。

1) 貴社の事業の状況について伺います。
 3つのセグメント(建設・防災安全・化学品)で事業展開をされていますが、それぞれの事業における状況はいかがですか? 具体的にご説明ください。また、今後の見通しについてはどのようにお考えですか?

 当社の3事業について直近の2017年9月期第2四半期累計決算の状況ですが、当社グループが主力事業とする建設業界におきまして、公共投資は底堅く推移しているものの、企業間競争の激化に加え、建設労働者の不足などによる建設コストの上昇により厳しい経営環境で推移しました。

 建設事業については、防護柵などの交通安全施設工事やトンネル、橋梁などのメンテナンス工事が好調だったことにより売上高は5892百万円となり、前第2四半期累計を上回りました。また、防災安全事業については、官公庁を中心に備蓄用の資機材の販売が増加し、工場で使用する安全帯・測定機器などの産業安全衛生用品の販売も好調に推移した結果、売上高は1336百万円となり、前第2四半期を上回りました。化学品事業につきましては、タイヤメーカーのタイヤ生産が低調に推移した影響を受け、ゴム加硫剤(不溶性硫黄)の販売が国内及び海外向けともに前第2四半期を下回り、また、雑草アタックSの販売は前第2四半期並みとなった結果、売上高は270百万円となりました。

 当社グループが営業の中心とする九州地域においては、2016年に発生した熊本地震等の復旧・復興工事が本格化することが予想されます。また、防災・減災対策、インフラの老朽化対策など、一定の公共投資が見込まれるものと予想されます。今後も取引先の拡大や新商品、新工法等の開拓に努め、収益性の向上を図るとともに、徹底したコスト管理及び工程管理を行い、生産性の向上と併せて社会的な要請である「働き方改革」にも取り組み、収益の確保を目指してまいります。

2) 「安全」にこだわる貴社のビジネス展開についてお話しください。
 昨年のお話では、貴社は創業以来「安全」というテーマの下、社会的ニーズに合致させたビジネス展開をされている事を伺いました。この事業におけるこだわりと新規ビジネスの可能性についてお話しください。

 当社は建設会社でありながら、商社的な機能も持っていることが大きな特徴であると思っています。たとえば、皆様が日常的に目にされている「ガードレール」は、高炉メーカーと呼ばれる鉄鋼会社系列の建材製造会社で製造されています。当社は、国内三大高炉メーカーの建材製造会社の「ガードレール」を取り扱っており、鉄鋼建材商社を経由し当社にて自社施工もしますし、直接もしくは建材商社を通じて建設会社様に向けて販売しています。こういった「メーカー代理店」の役割も担い、モノを売り、モノを作ることが当社の強みと考えています。

 当期には、他社との差別化を図るため、九州では初となるガードレール支柱打込機『サイレントストライカー』を導入しました。このサイレントストライカーは従来型の支柱打込機と比べて圧倒的な静粛性があり、夜間工事や病院・畜産地域での工事への対応ができ、周辺環境にも配慮することができます。

 直近では、このサイレントストライカーを使用し、中央分離帯が設置されていない対面通行の高速道路において、対向車両が対向車線に進入して発生する正面衝突事故を防ぐため、九州では初となるワイヤーロープ式防護柵の試験施工を当社元請工事で実施しています。

 さらに高速道路の逆走防止対策において、逆走していることをドライバーの視覚に訴える標識の設置等、社会のニーズに応えるべく積極的に提案を実施しています。

 このように、事業を通じて交通事故防止という社会問題解決の一助となれるよう、安全な社会の創造を推進してまいります。
 
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3) 中長期における経営戦略について伺います。
 「100年企業」の実現を目指して、2019年を最終年度とする中期経営計画を推進されています。現在1年が経過しましたが、計画の進捗状況はいかがでしょうか?

 2015年10月に策定した中期経営計画の基本方針は「3事業分野の事業領域の拡大」、「収益力の向上と財務基盤の強化」、「人材・組織力の強化と企業統治の向上」の3本柱となっていますが、最も重要と位置づけているのは、人材の育成・強化です。若手社員の早期戦力化に向けた意識の醸成、事業面におけるゼネラリスト・スペシャリストの育成に取り組んでいます。

 中期経営計画の初年度となる2016年9月期(第79期)の経常利益についてですが、96.4%の達成率となり、概ね計画どおりに推移しています。最終年度に向けて、収益力の向上や財務基盤の強化において公共工事の発注量の低下や同業との競争激化という現実をしっかりと見据え、1人当たりの生産性向上や安定収益源の拡大と、それを維持する仕組みづくりを進め、『100年企業』に向けての磐石な経営基盤とするためにも、人材・組織力の強化と企業統治の向上を目指してまいります。

4) 経営のリスクについてお話をお願いします。
 貴社のビジネス展開におけるリスクは何でしょうか? また、想定されるリスクがどのように業績へ影響するとお考えでしょうか?

 当社グループの経営成績は、国及び地方自治体の公共投資予算を反映します。建設事業部門において、国及び地方自治体が発注する公共事業が削減された場合には、当社グループの経営成績・財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。公共工事を取り巻く環境が厳しさを増す中で、当社グループが主力とする建設事業は一般的な土木建設とは異なり、安全を創出する交通安全施設工事、防災及び減災の一環である斜面崩壊防止工事、コンクリート構造物の長期的な活用を促進する維持補修(メンテナンス)工事などの専門工事業ですので、まったくの「ゼロ」にはならないものと考えています。いわゆる新設開発型の公共事業から、維持・補修を含む当社が社会に提供する価値である「安全」「環境」等への需要に対して、積極的な取り組みを行うことで利益創出を図りたいと考えています。

 また、当社グループの建設事業部門においては重大な労災事故、第三者事故等を惹起すると、発注者から指名停止等の処分を受け、その後の受注に影響を及ぼす可能性がありますので、毎年、「安全衛生管理計画」を立案し、作業所ならびに現場周辺の安全パトロールや安全衛生教育等を実施し、労働災害防止に努めています。さらに、化学品工場においては原材料に可燃性の高い硫黄を扱うために火災が発生した場合、火災の規模によっては、その後の生産体制にも影響を及ぼす可能性がありますので、定期的に消防訓練を行い、設備・保全管理の徹底を図り、安全管理に努めています。

 想定されるリスクを認識し、その対応策について継続的に見直しを図ることでリスクの軽減に努めています。さらに3事業分野の事業領域の拡大を図ることで、事業領域間の相互補完を図り、収益力の向上と財務基盤の強化に向けて取り組んでまいります。

5) 最後に、投資家に向けてお話をお願いします。
 地元九州に根差した密着型の事業展開により持続的成長を目指される企業姿勢について、全国の投資家からどのように評価されることを期待しますか?
 また、こうした企業スタンスだけでなく、コミット可能なKPI(指標)や経営課題への対処などについてもお話しいただければ幸いです。

 当社は福岡を中心に九州に根差し、地元密着型の事業を展開することで九州経済の発展に寄与するとともに、安全・防災関係のプロフェッショナル企業として地域社会から頼られる企業でありたいと考えています。様々な自然災害の発生にあたり、各方面より当社に真っ先にお声掛け頂く機会があります。これは地域に密着していなければ出来ないものと考えていますので、今後もこのスタンスを継続していきたいと考えています。

 また、関東地区(千葉県)には防災安全事業の販売拠点を設け、安全保護具をはじめとする防災安全用品の拡販にも注力しているところです。

 さらに、当社は安定的な業績を確保するとともに、株主の皆様への継続的配当を実現することで、株主の皆様からの期待に応えてまいりたいと考えています。株主様をはじめ当社に関わるすべての皆様から『より必要とされる企業』となるため、従業員一同誠心誠意努力していく所存です。株主・投資家の皆様におかれましては、今後とも当社へのご指導、ご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

●資料請求・問い合わせ先
日本乾溜工業株式会社 総務部
〒812-0054 福岡県福岡市東区馬出1丁目11番11号
TEL:092-632-1050 FAX:092-632-1082
Email:information@kanryu.co.jp
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配信元: みんかぶ株式コラム