東京に油田を見つけた企業
●越智 晶氏
リファインバース 代表取締役社長
都市の再開発や改修工事の活発化に伴って大量に発生する建築廃材の処理が問題となっているなか、これまで「処理困難物」とされてきた使用済みタイルカーペットの再資源化に成功したのが、7月28日に東証マザーズ市場に新規上場したリファインバース<6531.T>だ。「廃棄物が大量に発生する東京は油田そのもの」という越智 晶社長に経営戦略などを聞いた。
――事業内容を教えてください
越智 廃棄物から再生樹脂をつくる再生樹脂製造販売事業と、主に内装系廃棄物全般の処理を請け負う産業廃棄物処理事業を展開しています。特徴となっている再生樹脂製造販売事業は、使用済みタイルカーペットを独自に開発した技術を使って再資源化処理を行い、再生樹脂を製造し、それを販売するビジネスです。国内では現在、商業ベースで事業として手掛けているのは当社のみと独占的なポジションにあり、海外をみてもほとんど実施例がないといった状況です。
――タイルカーペットの再資源化とはどういうものですか
越智 まずはオフィスの移転などに伴って大量に出てくる使用済みタイルカーペットを回収するところから始まります。これは製造業でいう原料の調達にあたり、合成樹脂でいえば石油を調達するための費用が発生することになりますが、当社ではこの石油の部分が使用済みタイルカーペットになり、廃棄物処理の受託というかたちで原料を調達するため、この時点で売り上げが計上されます。その後、独自の再資源化プロセスを通すことによって再生樹脂が製造され、これを外部に販売することで、入口(調達時)と出口(販売時)の双方で売り上げが計上される収益性の高い「ダブルインカム」のビジネスモデルを構築しており、原料調達および樹脂販売ともに年率10%程度で伸びています。
タイルカーペットの再資源化に関しては、再生樹脂に求められる構成素材ごとの分離と粉体化を独自開発の精密加工技術を用いてワンプロセスで実現し、この技術によって高品位かつ低コストな再生樹脂の製造が可能になっています。これが処理受託および再生樹脂販売の両面において価格優位性につながっており、使用済みタイルカーペットの安定回収および製品需要の向上にも寄与しています。
――事業環境および成長余地についてはどのようにみていますか
越智 事業環境は非常にポジティブに捉えています。2020年に開催される東京オリンピックでも「ECO」がひとつのテーマとして掲げられるなど、環境意識の高まりがリサイクル業界の追い風になるとみています。また、不動産・建築市場が回復基調にあるなか、タイルカーペットの張り替え需要が増え、これに関連した内装系廃棄物処理の受託も順調に伸びています。再開発などに伴うビルの建設が活発化していることに加え、マンションなど住宅系リフォーム・リノベーション案件の拡大が業績の伸びに寄与しています。今後はインバウンド需要に関連した商業施設やホテルなどの大型改修工事の受注増加も期待しています。
再生樹脂製造販売事業でいうと、タイルカーペットの国内使用量は約3000万平方メートル/年と試算されていますが、当社の現在の再生処理量は約400万平方メートル/年であり、こうした面からも成長余地は大きいとみています。この事業は技術開発の難易度の割にマーケットがニッチで大手企業が参入しづらいうえ、原料調達・製造・販売のバリューチェーンを一体ですべて構築することが必須で研究開発投資のリスクも大きいためベンチャーが挑むにも高いハードルがあり、参入障壁は高いといえます。
――今後の成長戦略について教えてください
越智 現在はタイルカーペットの裏面に使われている塩化ビニール樹脂の再資源化を手掛けていますが、今後は表面に使われているナイロン繊維についても再資源化を行っていく予定です。既に技術開発は終わっており、現在は量産化に向けた準備を進めている段階で、18年6月期の決算からナイロンリサイクル事業が業績に寄与してくるとみています。タイルカーペットリサイクルの規模拡大は、国内はもちろんのこと将来的には海外も視野に入れてステップを踏んで展開してきたいと考えています。
また、期待してもらいたいのが今後の新規事業の展開です。今はまだ詳しくは申し上げられませんが、大量に排出される廃棄物の中で有効利用できていないものについて再資源化するための技術開発を進めており、できるだけ早く具体的な内容を提示できればと思っています。タイルカーペット以外の新しいリサイクル事業を立ち上げることで、さらなる成長につなげていきたいと考えています。研究開発の成果として新しい事業の立ち上げについて具体的にお示しすることで、我々が目指すビジョンを投資家の皆さまにより具体的にイメージを持って共有して頂けるような情報が早く出せるよう努めていきます。
――配当政策および投資家へのメッセージをお願いします
越智 現在は内部留保や新規事業への投資などを優先していますが、できるだけ早期に配当を実施できる状態まで持っていきたいと考えています。
素材メーカーは研究開発、設備投資を行ったのち、事業を展開して収益を上げるという特性がありますので、長期的な視点でみていただければと思っています。このビジネスは事業機会が非常に多く、まだまだ競合も少ないので、あせらず着実に取り組むことで長期間にわたって企業価値を継続的に上げていくことを目指しています。
(聞き手・三宅和仁)
●越智 晶(おち・あきら)
リファインバース代表取締役社長。1970年生まれ。大学卒業後、化粧品メーカーに入社したのち、大前研一氏のもとで投資会社の設立に参画。2002年にリファインバースの母体である御美商(現ジーエムエス)の取締役に就任し、03年にリファインバースを設立した。
●リファインバース株式会社
使用済みタイルカーペットから合成樹脂素材を高効率で取り出すことができる独自技術を持つ再生素材メーカー。Economy(経済性)とEcology(環境保持)の2つの“ECO”を両立させる画期的なビジネスを展開している。
http://www.r-inverse.com/
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