ストライク 荒井邦彦社長インタビュー

投稿:2016/10/26 19:00

中小企業向けM&A仲介業に成長性
  ――国内の案件獲得数でトップ狙う――

●荒井邦彦氏(あらい・くにひこ)
ストライク 代表取締役社長

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日本社会の高齢化が進むなか、中小企業の後継者不足が深刻化している。中小企業では後継者が見つからず「自主廃業」する会社も少なくない。しかし、その一方で、新たな成長機会を求めて企業買収を視野に入れる経営者も存在する。この中小企業の売却と買収の仲介をするM&A(買収・合併)市場で急成長しているのが、今年6月に東証マザーズ市場へ上場したストライク<6196.T>だ。同社の荒井邦彦社長に経営戦略を聞いた。

――ストライクの上場後の株価上昇が、市場の注目を集めています。まずは、事業内容を教えてください

荒井 主に中小企業向けのM&A仲介業を展開しています。会社を売りたい、あるいは買いたいというニーズのマッチングを行い、売買成立による手数料をいただいています。経営者も高齢化が進んでおり、会社を売却する理由の6割が後継者の不在です。一方、これまでは実家が会社経営をしていれば、家業を継ぐという意識がありました。しかし、いまは家業を継ぐという義務感が薄れています。高齢化社会の進展と価値観の変化という2つの流れもあり、中小企業のM&Aが増えています。

――会社を起こしたキッカケは何ですか

荒井 学生の時から起業は意識しており、会社の資金の流れを知るために公認会計士となり、大学卒業後は監査法人に就職しました。そこでM&Aを通じて会社がダイナミックに変わっていく姿を目の当たりにし、M&Aを事業ターゲットに定めました。ただ、大手企業のM&Aを個人で手掛けるのは難しく、結果として中小企業にターゲットを絞りました。また、会社設立はインターネットが普及し始めた時期にも当たり、1998年に日本初となる中小企業向けM&Aサイト「SMART」を立ち上げました。営業経験がなく、ネットでの事業展開に注力しましたが、ネットを通じてマーケットを作ることができたことは結果として良かったと考えています。

――中小企業のM&Aでインターネットを活用するメリットは

荒井 名前が知られている大企業などとは異なり、中小企業が会社の売却を行う場合、情報が伝わらないため、買い手を探すのは難しいのが実情です。その点、インターネットは、時間と空間の制約を取り払い、売り手と買い手のニーズを合致させることができます。また、M&Aの際にはコンサルタントが取りまとめ役となるのですが、不特定多数の案件があるインターネットを活用することにより、気づかなかったようなニーズを掘り起こし、マッチングに結び付けることができることも強みだと思います。

――中小企業のM&A市場は今後も拡大が見込めますか。また、ストライクの強みは

荒井 ある調査によると後継者のいない中小企業は19万社あるそうです。そのうち、企業の売却や買収の可能性があるのは10万社前後としても、当社が手掛けたM&Aの成約組数は前期では48組に過ぎません。開拓できるマーケットは膨大です。さらに、日銀のマイナス金利政策のもと、企業買収を行う側にとっても資金調達環境は非常に良いと言えます。あと5~10年はマーケットは拡大していくとみています。

 他社に比べた当社の強みは、インターネットでのマッチングでの実績を持っていることです。また、役職員を含む全社員の2割程度が公認会計士の資格を保有しています。会計事務所との連携に強く、大同生命や税理士組合などと業務提携していることも強みだといえます。

――16年8月期業績は計画を上回って着地しました

荒井 当初、見込んでいなかった案件がまとまったことなどが増額の要因です。直前まで成約するか分からないこともあり、業績予想が難しい面もあります。当社はまだ他社を追いかける立場ですから、期待を上回る実績を残さなければならないと考えています。

――今後の成長戦略をどのように考えていますか。また、具体的な目標があれば教えてください

荒井 当社の事業はインターネットを活用するデジタルの部分はありますが、仕事をもらったり、交渉を行ったり、契約をまとめたりする要所はコンサルタントが行います。企業経営者の気持ちがわかるヒューマンスキルが求められます。この仕事は「人で始まり人で終わる」ともいえます。競争に勝つためにも優秀なM&Aコンサルタントを多く採用したいと考えており、株式上場もそのための一環です。また、M&Aのポータルサイト「M&Aonline」などにも注力していく予定です。

 さらに、まずは何かひとつのことで日本一になりたいと考えており、国内M&Aでの案件の成約数でトップを目指しています。大型案件も狙いますが、企業のベースを作るためにも、中堅中小企業の案件をたくさんお手伝いしたいと考えます。

(聞き手・岡里英幸)

●荒井邦彦(あらい・くにひこ)
ストライク代表取締役社長(公認会計士・税理士)。1970年千葉県生まれ。一橋大学商学部卒。1993年太田昭和監査法人(現、新日本有限責任監査法人)入社。財務デューディジェンス、株式公開の支援などの業務を経験。97年にストライクを設立。

●株式会社ストライク
1997年7月に会社設立(事業開始は99年1月)。主に中小企業を対象とするM&Aの仲介業を展開。企業価値評価やインターネットでの起業情報提供サービスも手掛ける。98年10月に中小企業向けM&A仲介サイト「SMART」を開設。公認会計士・税理士のネットワークに強みを持つ。「価値あるM&Aの創出に、まっすぐです」を企業信条としている。

配信元: みんかぶ株式コラム