S&P 500 月例レポート
S&P 500®
11月は多くの材料に試されるなか辛うじて0.05%高となり、年末商戦では出足の鈍い実店舗がネット通販に遅れ(そして株価でも)
12月の0.25%利上げが濃厚となり、「マイティ500」ことS&P 500は「25ポイント、25ポイント、25ポイントの前進だ」と鬨(とき)の声をあげながら弱気の谷へと進みました。なかには前回(2006年6月)の利上げさえ未経験の若手もいます。悲観的な小売売上高予想(その傾向はネット通販より実店舗で顕著)が左手から、原油需要と価格の下落が右手から、そして空売り筋(そして彼らのレポート)が前方から攻めてくるなか、追証の淵(特に中国、そしてIPO)へと前進しました。テロリストも、財政赤字も、議会または反トラスト委員会も、タックス・インバージョン禁止の動きも(政治家または政府機関のいずれかによるもの ―― 両者に違いがあれば、の話ですが)恐れることなく、戦列を突破していきました。調整の入り口から復活し12月の上げ相場(73.6%の確率で上昇)へ向かいます。この短い栄光はいつ陰りを見せるのか(そしてショートカバーがいつ開始するのか)と世界中が考えています。悲惨な事件が多発しましたが、マイティ500は前に進みました。パリの同時多発テロは130人の犠牲者と数百人の負傷者を出しました。事件を受けてシリア空爆が加速し、警察の家宅捜査が複数の都市で行われ、世界中でセキュリティが強化され、第2次世界大戦以来となる国家間の連帯につながる可能性もあります。トルコによるロシア戦闘機撃墜(NATO加盟国によるロシア戦闘機撃墜は1952年以来)は原油価格を押し上げ(ただし40ドル台前半に留まりました)、行動より言葉がものを言うことが示されました。米国では、投資家が感謝祭とともに七面鳥とFRBの意図と、多くの(大半は明るい)経済指標を消化しました。引き続き活発なM&Aも難なく消化され、投資会社の金庫という胃袋は今後数四半期にわたり満たされるはずです ― 「ホーホーホー」(彼らは満腹でもおそらくバーではお金を落としてくれるでしょう)。消化に悪かったのは小売の実店舗の売上高です。依然として慎重ながら楽観的な様子を見せていますが、ブラックフライデーには例年通り特売品を狙う客で店は混雑したとはいえ、クリスマス商戦序盤の客足は予想を下回りました。しかし、実店舗による「新しく改善した」ウエブサイトでなく純粋なネット通販は盛況だった模様で、木曜日(26日)の感謝祭のオンライン売上高は大幅増となり、さらに「サイバーフライデー」という新語が「サイバーサタデー」とともに台頭しています。その結果「サイバーマンデー」は短くなる可能性がありますが、オンライン売上高全体が目標を下回るとの心配はほとんどないと思います。従って買い物客が冬用のコートとスノーブーツで出かける代わりに、ホームメイドのラテを片手にクリック一つで買い物を済ませるようになるなか、「かかってこい」という威勢のいいスローガンは、実際の売上高、ファンドの資産配分の見直し、そしてクリスマス後には、恒例のウインドウ・ドレッシングにより試されるため、投資家は最後まで耐える必要があります ―― そして私はと言えば、「全てのトレードに」にクリスマスの挨拶をしなければなりません
経済関連のニュースでは、日本のGDPが2四半期連続のマイナスを記録し(2015年第2四半期が0.7%減、第3四半期が0.8%減)、リセッションに逆戻りしました。ユーロ圏の10月のインフレ率はプラスとなり(0.1%上昇)、コアインフレ率は年率1.1%上昇となりました。10月のユーロ圏マークイットPMIは54.4と先月の53.9から上昇し、2011年5月以来の高水準を付けました。中国では輸出が前年同月比で6.9%減少し(10月時点)、輸入が18.8%減少する中(ただし中国の貿易黒字は依然として616億ドル)、7.0%という公式成長目標が6.5%に引き下げられました。また、中国政府は株式の証拠金率を引き上げると発表しました(従来は証拠金1に対して1の借入れが可能でしたが、今後は1を借入れるために2の証拠金が必要になります)。米国では月初に公表された雇用統計の力強い結果を受け、12月の利上げが本命視されるようになりました。10月の非農業部門就業者数は予想の18万人増を大幅に上回る27.1万人増でした。失業率は5.0%に低下し(予想は横ばいの5.1%)、2008年4月以来の低水準となりました。時間当たり賃金は0.4%増と予想(0.2%増)を大幅に上回りました。FOMCの議事録では12月の利上げの用意があることが示され、新たに「リフトオフ(利上げ開始)」という文言が市場関係者の用語集に加わりました。第3四半期GDPの改定値は年率換算2.1%増と、速報値1.5%増から上方修正されました。物価指標によるとインフレ率は依然として2%を下回りそうですが、コアインフレ率は目標に近づいており、10月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比1.6%低下し、食品およびエネルギーを除くコア指数は0.1%上昇しました。10月の個人消費支出(PCE)デフレーター(連鎖式)は前年同月比0.2%上昇、同コア指数は1.3%の上昇でした。10月の耐久財受注は予想(1.8%減)を大幅に上回る3.0%増となりました(前月の0.8%減から急反発)が、それでも年初来では4.2%減となっています。10月の消費者信頼感指数は予想(99.6)を大幅に下回る90.4となりましたが、市場への影響はそれほど大きくありませんでした。住宅関連の指標は強弱が混在し、減速を続けているものの、住宅市場は依然として成長しています。10月の中古住宅販売件数は前月比では3.4%減となったものの、前年同月比は3.9%増で、9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数によると、主要20都市の住宅価格は前年同月比5.5%上昇しました。住宅着工件数は集合住宅が25%減(数ヵ月にわたる大幅増の後)となったことを背景に、11%減少しました。しかし、10月の新築住宅販売が10.7%増加し、中古住宅仮契約指数が予想を大幅に上回る中(0.1%上昇の予想に対して0.2%上昇)、先行指標である許可件数は4.1%増と、2007年12月以来の高水準に上昇しました。9月のFHFA住宅価格指数は前月比0.8%上昇と、伸び率は予想(0.4%上昇)の2倍となり、前年同月比の伸び率は5.7%となりました。
11月はM&Aにとって良い月となりました ―― いえ(またしても)非常に良い月だったと言うべきでしょう。ディールが続々と発表され、手数料も次々と入ってきました。英国バイオ医薬品会社Shire PLC(SHPG、11月は8.2%安)は、希少疾病に特化した米医薬品会社Dyax(DYAX、同22.3%高)を59億ドルで買収すると発表し、さらに報道によるとShireは同業のBaxalta(BXLT、同0.2%高)にも買収案を提示しています。ビデオゲーム・メーカーのActivision Blizzard(ATVI、同8.3%高)はデジタルゲーム・メーカーKing Digital Entertainment(KING、同18.2%高)を59億ドルで買収すると発表しました。林業大手Weyerhaeuser(WY、同9.7%高)からは同業Plum Creek Timber(PCL、同24.7%高)の70億ドルでの買収が発表されました。フランスの産業ガス大手Air Liquide(AIQUY、同6.2%安)は同業の米Airgas(ARG、同43.7%高)を134億ドルで買収すると発表しました。ホテルおよびリゾート運営のMarriott International(MAR、同7.6%安)は同業Starwood Hotel & Resorts(HOT、同10.1%安)を株式交換により122億ドルで買収すると発表しました。米ケーブル・テレビ会社Liberty Global(LBTYA、同4.7%安)は英Cable & Wirelessからカリブ海地域のケーブル・テレビ事業を53億ドルで買収することを明らかにしました。米現金自動預払機(ATM)メーカーのDiebold(DBD、同6.0%安)はドイツの同業Wincor Nixdorf(WNXDF)に18億ドルの買収提案を行いました。新聞報道によると、英プライベートエクイティ(PE)投資会社CVC Capital Partnersがペット用品販売のPetco HoldingsをPE投資会社TPGから45億ドルで買収するプライベートディールの提案を実施しました。Petcoについては以前、TPGがIPOを模索していると伝えられていました。憶測や噂が出たディールや不成立となったディールとしては、米独立系石油・ガス会社Apache(APA、同4.3%高)は同業Anadarko Petroleum(APC、同10.4%安)から買収の打診を受けた模様です。米鉄道Norfolk Southern(NSC、同18.8%高)はカナダの同業Canadian Pacific Railway(CP、同5.0%高)による買収のターゲットになっているとの噂が浮上しました。米ジェネリック医薬品大手Mylan NV’s(MYL、同16.4%高)はアイルランドの製薬会社Perrigo(PRGO、同5.3%安)に260億ドルの敵対的買収提案を実施しましたが、これに対しPerrigoの株主の40%しか応じなかったため、提案は取り下げられた模様です。一方、最初からディールがなかったケースもあります。スウェーデンの通信機器大手Ericsson(ERIC、同0.5%安)は米ネットワーク機器大手Cisco(CSCO、同5.5%安)との間で合併交渉は行っていないと発表しました。ジョイントベンチャーの発表後に噂が広がっていましたが、両社は否定しました。アクティビスト投資家たちも引き続きニュースを賑わせました。報道によると、カール・アイカーン氏は米複写機大手Xerox(XRX)の株式を7.1%保有し、Pershing Squareはバイオ医薬品販売会社Valeant Pharmaceutical(VRX)の株式を9.9%保有し、Elliott Managementは米アルミ大手Alcoa(AA)の株式を6.4%保有しているとのことです。11月に最も注目されたのはヘルスケアおよび特殊化学製品メーカーPfizer(PFE、同3.1%安)による後発医薬品会社Allergan(AGN、同1.8%高)の株式交換による買収で、買収額は1,550億ドルを超えるとされています。これによりPfizerは本社をアイルランドに移転するとみられ、その場合20億ドルの節税効果が期待できます。これを受けて税金を巡る政治論争が過熱していますが、租税政策の変更には煩雑な手続きと時間を要するため、ただちに変更されることはないでしょう。
IPOは活発で、待望の電子決済サービスSquare(SQ)によるIPOでは、正式な公開価格が9ドルに設定されました(仮条件は11~13ドル、最近実施された私募形式の株式売却価格は15.46ドル)。株価は33.8%高の12.04ドルで月を終えました。オンライン・デートサイト運営会社Match Group(MTCH)もIPOを実施しました。IPO価格は12ドルで、20.7%高の14.48ドルで月を終えました。総合すると、両銘柄からはIPO銘柄に対する投資家需要の状況が見えてくるものの、投資家の価格(および価値)を見る目は厳しさを増しています。
その他のニュースを見ると、アルゼンチンの大統領選で保守派のマウリシオ・マクリ氏(ブエノスアイレス市長)がリベラル派候補のダニエル・シオリ氏を破って当選しました。今回の選挙ではアルゼンチン経済が主な争点でした。中国と台湾の70年ぶりのトップ会談も大きなニュースとなりました。カナダと米国を結ぶキーストーンXLパイプライン建設計画は米政府により却下され、建設認可を求めた7年に及ぶ努力は終了しました。トルコはロシアの戦闘機が5分間で10回に及ぶ警告にもかかわらず領空侵犯を続けたとして撃墜しました。撃墜の一報を受け、事実や情報がまだ十分に伝わっていない中、市場(取引開始時点や先物の早朝取引)は下落し、原油価格は上昇しました。ロシアのプーチン大統領は、撃墜は「裏切り行為」でありロシアのトルコとの関係に「重大な影響」をもたらすと警告しました。中国では当局が不正取引の疑いによる捜査実施を発表し、株価が急落しました。直撃を受けたのは上海株式市場で、5%超の下げ幅を記録し、中国の証券大手Citic Securitiesなど一部銘柄は1日の値幅制限である10%まで下げ幅を拡大しました。現在および今後の動きが注目されるのは、利益予想を引き下げた米医療保険最大手のUnitedHealth Group(UNH、同4.3%安)で、同社はその理由として医療保険制度改革法(オバマケア)に基づいて創設されたオンライン保険市場「エクスチェンジ」関連での損失を挙げており、同社のプログラム参加について検証中だと発表しました。最近の2016年契約医療プログラムおよびレポートでは、現行プランが企業にとって収益性に乏しく、また消費者にとってもコストが増える一方で補償は減ることが示されており、事業モデルとして良い組み合わせと言えるものではありません。
個別銘柄では、Volkswagenの排ガス問題が同社のガソリン車にも拡大してコストが膨らんでおり、同社は引き続き対応に苦慮しています。後発薬品販売会社のValeant Pharmaceutical International(VRX)は取引慣行に関する調査を巡る懸念が続く中、11月は4.1%安でした。日本のソフトバンクは利益が予想を下回り、数千人規模の人員削減を行うと発表しました。中国のネット通販最大手Alibaba(BABA)の「独身の日」の総売上高は143億ドルに達し、11月は0.3%高となりました。小売業は強弱まちまちで、百貨店大手Macy’s(M、同23.3%安)や高級百貨店Nordstrom(JWN、同13.6%安)、時計やアクセサリーを扱うFossil Group(FOSL、29.3%安)は利益、売上高、見通しが事前予想を下回って打撃を受けた一方、ネット通販は「実店舗からネット通販へ」の流れを受けて引き続き実店舗より好調でした。またMacy’sは、McDonald’s(MCD、同2.9%安)と同様に、保有不動産のスピンオフの計画を否定しました。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは11月、S&P 500の構成銘柄に4組の変更を行いました。Hewlett-Packard(HPQ、社名はHPに変更)からスピンオフされたテクノロジー・ソリューション会社Hewlett Packard Enterprise(HPE)を追加し、銀行持ち株会社Hudson City Bancorp(HCBK)を除外しました。またITサービス大手Computer Sciences(CSC)からスピンオフされたデータ処理・サービス会社CSRA(CSRA)を追加し、Computer Sciencesを除外しました。さらに消費者金融サービス会社Synchrony Financial(SYF)を追加して保険・金融サービスのGenworth Financial(GNW)を除外し、遺伝子医療関連企業Illumina(ILMN)を追加して化学薬品メーカーSigma-Aldrich(SIAL)を除外しました。
FRBが12月に0.25%の利上げに踏み切るとの観測を背景に、11月に金利は小幅上昇し、米国10年債利回りは2.22%で取引を終えました(10月末は2.14%、2014年末は2.17%、2013年末は3.03%)。また、30年債の利回りは2.98%となりました(同2.92%、2.75%、3.94%)。為替市場ではドルが値上がりし、1ユーロに対し1.0569ドル(同1.1007ドル、1.2098ドル、1.3756ドル)、英ポンドに対しては1.5055ドル(同1.5427ドル、1.5582ドル、1.6564ドル)、円は1ドルに対して123.26円(同120.62円、119.80円、105.20円)、人民元は1ドルに対して6.3994元(同6.35161元、2015年8月10日の対ドルレート切り下げ前は6.2104元)となりました。金は下落して1,064.30ドル(同1,141.70ドル、1,183.20ドル、1,204.80ドル)となり、原油価格は1バレル40ドル台前半から半ばで推移し、41.72ドルで(同46.39ドル、53.27ドル、98.70ドル)、またガソリン価格は2.094ドルに上昇して(同2.228ドル、2.299ドル、3.271ドル)11月の取引をそれぞれ終えました。VIX恐怖指数は10月末の15.09から16.13に上昇して11月を終えましたが、9月末の24.50と比べると大きく低下しています。
最後の直線コースに入った2015年の相場。盤石なリードを見せる一般消費財(11.74%の上昇)、大きく水をあけられて情報技術が2位に続き(6.76%の上昇)、最下位はエネルギー(15.06%の下落)
年末に向けた相場レースが進行する中、最良のポートフォリオと2015年のパフォーマンスを可能な限り良好なものとしたいというファンドの思惑から、見栄えの良さを取り繕うとする動きが出てくる可能性があります。ファンドの運用ベンチマークとして最も多く採用されているS&P 500の年初来上昇率は1.04%、配当込みで3.01%となりました。しかし、指数構成銘柄全体で見た場合の変動率の低さが、実際には構成銘柄の61%が年初来で10%を超える変動を見せたという事実を覆い隠しています。146銘柄が10%以上値上がりし、163銘柄が10%以上も値下がりしました。さらに、セクター別のリターンにも大きなばらつきがみられました。原油価格が42ドルで推移したことから、エネルギーセクターは15.06%下落しました(全セクターの中で最低)。ホリデーシーズン中の支出の本格化(願わくばですが)を背景に一般消費財は11.74%上昇しました(全セクターの中で最高)。現時点では、過去3年間にわたり2桁リターンを達成してきたインデックス運用の投資成果はつつましいものとなりそうです。アクティブ運用の実践者(とアクティブ型運用マネージャー)の投資成果は、大勝ちするか大負けするかという、より極端な結果となりそうです。酒場で奢っているのが誰で(勝ち組)、高級な銘柄に手をだしていないのは誰か(負け組)を見れば、大儲けした人と大損した人を手っ取り早く見分けることができます。
11月は世界的な事件(パリ、トルコ)や経済関連のニュース(日本の景気後退に対し、米国ではGDP改定値が上方修正)が相場を試す展開となり、市場にとっては難しい月となりました。年末が近づいていることから、10月に幅広い銘柄が買われて8.30%上昇したことも材料視されました。結局のところ、FRBによる0.25%の利上げが織り込まれ、軍事関連の問題(と一部の軍事行動)の報道が続いたものの、月末には下火となり、経済関連の話題が引き続き重要視される中、少なくとも11月については、市場は僅か0.05%の上昇にとどまり、2,080.41で取引を終えました。10月は10セクター全ての月間騰落率がプラスとなるなど幅広く買われましたが、11月に前月比で上昇したのは4セクターに留まりました。各セクターのリターンにも引き続きばらつきがあり、公益事業は10月には(平均以下とはいえ)1.05%上昇しましたが、11月は2.75%下落し(全セクターの中で最低)、年初来の騰落率は2桁台となる10.05%のマイナスになりました。すでに2桁台の下落となっていたエネルギーセクターは、原油価格が10月末の46.39ドルから41.72ドルに下落して11月の取引を終えるなど40ドル台の前半で推移したことを背景に、11月は0.77%値下がりしました。同セクターの年初来騰落率は15.06%のマイナスとなっています(全セクターの中で最低)。最も健闘したのが金融セクターで、上昇率は1.70%となりました。「想定される」0.25%の利上げ開始が収益の追い風になると判断されたからです。とはいえ、同セクターの年初来騰落率は依然として1.15%のマイナスとなっています。オバマケアの収益性に対する懸念が拡大したことから、ヘルスケアセクターは0.60%下落しましたが、年初来では3.54%上昇しています。消費関連株は、休暇シーズンが始まったために最も注目されましたが、「実店舗からネット販売へ」というトレンドは続いているようで、店頭での販売は低迷しましたが、インターネット経由の売上が好調となっています。一般消費財は、セクター全体としては0.36%下落しました。年初来上昇率トップの座は揺るぎなく、年初来の上昇率は11.74%となっています。大きく水をあけられて年初来上昇率で2位につけているのが情報技術セクターです。年初来上昇率は6.76%、11月の上昇率は0.59%でした。生活必需品は11月に1.27%下落しましたが、年初来では引き続き1.23%のプラスとなっています。11月は263銘柄が値上がりし(平均上昇率は4.53%)、241銘柄が値下がりしました(平均下落率は5.31%)。上昇率が10%以上となったのは24銘柄(平均上昇率は16.52%)で、下落率が10%以上となったのは30銘柄でした(平均下落率は18.32%)。
投資家が押さえておくべきポイント
・10月に8.30%と素晴らしい上昇を見せた米国株式市場は、11月にはその勢いを試されることになりました。市場ではFRBの利上げを受け入れる姿勢が広がり、経済に対する懸念を抑え、S&P500は最終的に0.05%と前月からわずかに上昇して取引を終えました(0.05%の下落よりはましでした)。
・市場は、FRBによる12月の0.25%の利上げを受け入れました(取引の材料ともされました)。2016年も政策金利の引き上げは0.25%毎の段階的なものになると広く予想されていることが背景にあり、大半の予想で2016年に4~5回の利上げが見込まれています。
・小売セクターの決算発表は、企業によって株価の支援材料となる場合もあれば、押し下げにつながる場合もありました。実店舗からオンライン販売へと言うシナリオは続いているようですが、実店舗企業の決算では、オンライン販売の取り組みは期待されていたよりも悪い結果が示されています。実際のホリデーシーズンに関しては、当初の発表では店舗も客足はあるものの、予想ほどではなく、オンラインの売上高が伸びています。しかし、オンライン専業企業の方が実店舗企業のオンライン販売よりも好調になるというのが大方の見方です(実店舗企業のオンライン販売はキャッチアップの段階にあるため、オンライン専業企業よりも売り上げの伸び率自体は大きくなるとみられます)。
・原油価格はこれまで通り、レンジ内で変動する展開となりましたが、1バレル40ドル台前半から半ばにあったレンジは40ドル台前半だけに切り下がり、1バレル41.73ドルで11月の取引を終えました。
・国際通貨基金(IMF)は予想通り、中国の人民元を特別引出権(SDR)の準備通貨に加えることを決定しました。2016年9月から実際に採用されることになります。
・以前示した見通しの通り、2015年第3四半期も7四半期連続で、S&P500構成銘柄の20%以上が株式数を前年比4%以上減らす(従って、EPSの4%以上の押し上げにつながる)結果となりました。メディアでの多くの批判をよそに第4四半期も自社株買いにより、この記録は8四半期連続まで伸びる可能性があります。
・M&Aの取引では数え切れないほど多額の現金が使われており、現金による取引では、株式保有者、投資アドバイザーともに多くの利益を上げている一方、株式交換による取引で利益を上げているのは(今のところ)投資アドバイザーに限られるようです。「シナジー効果」と言う言葉を誰かが復活させたのでしょうか?
考えのメモと注目のポイント:
・2015年12月16日午後2時には、FRBの四半期経済見通しが発表されます。良好な見通しが示されなければ、空売りをしている投資家には朗報となるでしょう。また、2時30分からの記者会見では金融政策のガイダンスが示されます。
・利上げを探る英国の動向と、追加緩和が見込まれるECBの動向が注目されます。
・M&Aがさらに続くと見込まれます。タックス・インバージョンを阻止する新たな規制案が大きな障害となることはないとみられます。
・安全保障の問題に関する米国の世論の目先の動向が注目されますが、これは今後の新たなイベント次第です。
・トルコのロシア戦闘機撃墜による実質的な影響が注目されます。
基本統計:
・S&P500は12月に73.6%の確率で上昇しており(上昇した月の平均上昇率は2.98%、下落した月の平均下落率は2.87%)、2015年は年初来の1.04%上昇から年末までに5%台(配当込みのトータルリターンでは7.5%)に乗せることが期待されます(2014年のリターンは11.39%、配当含めたトータルリターンは13.69%、2013年はそれぞれ29.60%と32.39%、2012年は13.41%と16.00%)。
・S&P500の年初来のリターンは1.04%と相対的に低調なものの、その陰で、S&P500構成企業の61%が10%以上の株価の変動を記録しており(10%以上値上がりした銘柄数は147銘柄、10%以上下落した銘柄数は163銘柄)、来年1月にはファンド関連の興味深い宣伝材料となるでしょう。
・S&P500構成企業の2015年第4四半期の営業利益は、失望的な結果に終わった第3四半期から15.3%増が予想されているものの、2015年通年では前年比5.6%減が予想されており、不十分かつ遅きに失することになるでしょう(また、これはまだ予想の段階です)。ただしエネルギーセクターを除いたベースでは、2015年は同6.1%増が予想されており、これはまずますの数字です。
・2015年の金利はほぼ横ばいで、米国10年債利回りは2014年末の2.17%に対して2.21%となっています。来年は金利の上昇が予想されています。
・S&P500構成企業の2016年の利益予想は若干低下したものの、なお2016年は18.7%の増益が予想され、2015年は5.6%の減益が予想されていることから、経済が底堅さを維持する限り、この増益率は非現実的な数字ではありません。
11月のフューチャー・ショック
・過去の実績を見ると、S&P500は12月に73.6%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は2.98%、下落した月の平均下落率は2.87%で、全体の平均騰落率はプラス0.66%となっています。
・S&P500の年初来のリターンはプラス1.04%(配当を含めたトータルリターンは3.01%)となっており、3年連続で2桁台の上昇が続いた後(2014年のリターンは11.39%、配当を含めたトータルリターンは13.69%、2013年はそれぞれ29.60%と32.39%、2012年は13.41%と16.00%)、今年も通年での上昇の維持を試みています。
FOMCの会合:
12月15-16日※、2016年は追加利上げ(利上げの回数と引き上げ幅)が検討されることになると予想されます。2016年1月26-27日、3月15-16日※、4月26-27日、6月14-15日※、7月26-27日、9月20-21日※、11月1-2日、12月13-14日※
※議長の記者会見が通常、米東部時間午後2時30分に行われます。また、四半期ごとの経済見通しの改定が2時に発表されます。
また、12月3日にはECB政策理事会、12月9-10日にはイングランド銀行金融政策委員会が開催されます。
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・
インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
本翻訳は、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。
SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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