【Alox分析】今年の倒産を予測する – 2015年 –

著者:塙 大輔
投稿:2015/01/30 11:40

2014年の倒産動向を振り返り、2015年の倒産について予測する。

【2014年の倒産件数(上場企業)】
倒産件数:0社    〔2013年:3社〕 <前年比0.0倍>

1990年以来の24年ぶりに、上場企業の倒産は発生しなった。
“異例”の事態である。

【2014年の倒産件数(全企業)】
倒産件数:9,731社      〔2013年:10,855社〕   <前年比0.90倍>
負債総額:1兆8,740億円  〔2013年:2兆7,823億円〕 <前年比0.68倍>

2013年の倒産件数は、22年ぶりに11,000社を下回る結果だった。
そして、2014年は、その数値をさらに下回り、24年ぶり10,000件を下回った。

“異例中の異例”である。
 

≪2005年~2014年倒産件数(全企業と上場企業)の棒グラフ≫
http://alox.jp/wp-content/uploads/2015/01/150119_kensuu.pdf
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【“異例”の理由】
「倒産件数が少ないことは良いことでないか、なぜ異例と言うのか」と指摘する人もいるだろう。確かに、それ自体は良いことである。

しかし、因果の観点で、過去と比較すると、この現象は“異例”と表現せざるを得ない。

なぜ、倒産件数が少ないのだろうか?
時代背景が違うため、一概に比較できないことを分かっているが、過去の数値は参考になる。

ここ30年で倒産件数が10,000件を下回った年は、1989年と1990年のみである。

1989年、1990年はバブル景気の真っ盛りだ。
日経平均株価は東証平均史上最高の38,915円を記録し、不動産や地価は上昇し、「東京23区の地価でアメリカ全土を購入できる」と言われた時代である。

つまり、「景気が良かったから、倒産が少なかった」と言える。

【倒産減少の理由】
2014年を「景気が良かった、バブルのようだった」と感じた人は少ないだろう。

2014年は、「“景気回復以外”の理由によって、倒産件数が減った」のである。

現在の日本では、企業に対して、資金繰りに窮することがないような体制や制度が整備されている。

その代表格は、法としての期限は切れているが、“実質的に延長されている中小企業金融円滑化法”や“日本銀行による金融緩和(数十兆円単位の長期国債、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)を買入)”である。

つまり、政府(金融庁)や日本銀行の政策によって、倒産件数が減っているのだ。
(その他、倒産ではなく、廃業・解散する企業が増えていることも一因ではある。)

【極めてリスクの高い投資】
ご存知の通り、バブル景気の破綻後、銀行からの借入れで過剰な設備投資に励んだ企業は、債務返済に苦しみ、倒産した。その代表格はダイエーである。

銀行も地価の下落等により、不良債権処理に苦しんだ。

今は、“資金繰りバブル”というべき時代である。
資金繰りを支える資金を投下しているのは、政府であり、日本銀行である。

「日本を取り戻す」と宣言している安倍首相は、強気の投資を継続するだろう。
仮に、“日本の景気が回復しない場合”、投資はそのまま不良債権となり、そのツケは日本国民に回ってくる。

冒頭の話に戻るが、倒産件数の減少は「景気回復に付随しない倒産の減少」であり、
これを“異例”と表現することに、一片の迷いもない。


++++【2014年予測の検証】++++

『今年の倒産を予測する – 2014年 -』では、下記の予測を記載した。

<2014年予測:倒産件数>
〔上 場〕  →  2(±2)
〔全企業〕  →  10,000(±1000)

2014年の結果は下記通りである。

<2014年結果:倒産件数>
〔上 場〕  →  0
〔全企業〕  →  9,731

結果は、上場・全企業ともに予測の近似値である。
今年も、この精度を目標に予測したい。

++++【2014年予測の検証終了】++++

【今年は?】
上場企業の倒産は数件、全企業の倒産件数はさらに減少する。

〔ネガティブ要因〕
(1)人口減少と少子高齢化
人口減少と少子高齢化は、日本の政治・経済の重大問題である。

単純明快なことだが、「消費者であり、働き手である若者が少ない国」が国として成長することは極めて難しい。

「数は力」であることは、中国やインドの発展を見れば一目瞭然だ。

日本において、飲食業、小売業、サービス業等を展開する企業は、消費者と働き手が減少し続ける日本を離れ、海外で勝負している。

人口減少については、「移民を受け入れるのか」、「子供を生みやすい環境を整えるか」、有効性のある政策を安倍首相には実施して頂きたい。

高齢化について付け加えると、65歳以上の高齢者人口は、2013年に4人に1人となった。
それが、2035年に3人に1人となり、2060年には2.5人に1人となる予測が内閣府の『高齢化白書』に記されている。

極端かもしれないが、中国の「一人っ子政策」とは真逆の「二人っ子政策(三人っ子政策)」ぐらいのことを行わなければ、国を維持することさえ覚束ない時代がやってくるかもしれない。

(2)戦争とテロ
近年にないほどに、緊迫した世界情勢である。
「いわゆるイスラム国」と融資連合軍の戦争、ロシアによるクリミア編入、イスラエルとパレスチナの戦争など、日本もダイレクトに影響を受けており、政治・経済の停滞を招く可能性は高い。

(3)ルーブル安のロシアと中国の接近
原油安やクリミア編入に対する欧米の制裁措置により、ロシアの通貨(ルーブル)は、米ドルに対して半値となった。

しかし、ロシアではクリミア編入を断行したプーチン大統領は英雄として圧倒的な支持を受けており、政権基盤が崩れることはない。

中国も新疆ウイグル自治区やチベット問題等で、欧米や日本から批判を浴びており、両国は同じ穴のムジナである。

今以上に反欧米として連帯するだろう。
東西冷戦の時代を彷彿させる事態である。

(4)ユーロの低迷
ドイツ経済の失速に伴いユーロ圏は不景気の様相となっており、さらにギリシャでは債務危機の再燃が現実味を帯びてきた。
中国等の新興国の成長鈍化が、ユーロ経済に負の影響を与えており、欧州中央銀行(ECB)は、国債買入等の量的緩和を実施する方針である。
ユーロでも“バズーカ”が発射されることになった。

(5)地方銀行の再編
金融庁の指導、少子高齢化や貸出先の減少により、銀行は再編の時代となった。
ある意味では至極当然なことが起きており、遅いぐらいである。

人口減少国家に、100行以上の地方銀行は多すぎる。

一方で、小売業は先行しており、イオンやセブン&アイを中心に合従連衡が進んでいる。

地方の小売業は数年前から苦境にあり、再編中の地方銀行に借入返済の猶予を依頼する事態となっている。


〔ポジティブ!?要因〕
(1)自民党安倍政権
自民党安倍政権が続く限り、財政規律の均衡よりも、経済最優先の政策が実施される。

法人税の減税、円安への誘導、民間企業への賃上げ要請、国土強靭化政策、原発再稼働などは、その最たる例である。

補正予算で、消費喚起のために、「住宅エコポイントの復活」や「商品券の発行」が予定されている。いわゆる、バラマキ政策である。

商品券は、大失敗に終わった“地域振興券”の二の舞とならないように、実のある政策として頂きたい。

(2)黒田バズーカ
日本銀行による国債、上場投資信託(ETF)不動産投資信託(REIT)等の巨額購入(いわゆる黒田バズーカ)により、株高は演出されており、不動産市況も活況である。

雑誌によって、バブル到来の予見するような記事もあった。
たしかに、民需ではなく、“官製バブル”が発生しているとは言える。

企業のバランスシートは、株式や不動産の評価益が発生している。
今年も黒田バズーカが発射される可能性は高く、“官製バブル”は継続する。
 

〔参考〕
『上場倒産件数と日経平均株価【大納会終値】の推移』

(単位:円)
上場企業
倒産件数
日経平均株価
【大納会終値】
2005年 8 16,111
2006年 2 17,226
2007年 6 15,308
2008年 33 8,860
2009年 20 10,546
2010年 10 10,228
2011年 4 8,455
2012年 6 10,395
2013年 3 16,291
2014年 0 17,450

≪上場企業の倒産件数と大納会終値の棒グラフ≫
http://alox.jp/wp-content/uploads/2015/01/150119_stockkensuu.pdf
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≪上場企業の倒産件数と大納会終値の折れ線グラフ)≫
http://alox.jp/wp-content/uploads/2015/01/150119_relation.pdf
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【総括】
2015年1月28日、上場企業のスカイマークが民事再生法を申請した。
17ヵ月ぶりに上場企業が倒産した。

「売上の約2倍にあたる1900億円を投じて“エアバスA380”を購入したこと」や「ジェットスタージャパン等のLCCとの競争激化」、さらに「無借金経営を続けてきたことによる銀行支援の欠如」が、今回の措置を選択させたのだろう。

これをもって、上場企業の倒産が増える訳ではない。
しかし、経営者の舵取りの失敗により、破綻したケースと言え、いくらアベノミクスで円安や株高が演出されても、破綻する企業は破綻する。

上記の要因や過去からの推移、今回のスカイマークの倒産等を踏まえると、今年は下記の件数に落ち着くのではないだろうか。

<倒産件数>
〔上 場〕   →  3(±1)
〔全企業〕   →  9,000(±1000)

※ 参照資料
・東京商工リサーチ 『2014年(平成26年)の全国企業倒産9,731件』
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2014_2nd.html
・週刊東洋経済   『2015年大予測』
・日経ビジネス    『徹底予測2015』
・週刊ダイヤモンド 『2015総予測』
・週刊エコノミスト  『2015日本経済総予測』
・内閣府        『高齢化白書』
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/zenbun/pdf/1s1s_1.pdf

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配信元: みんかぶ株式コラム