急上昇の反動でスピード調整、OPEC総会の動向注視

著者:冨田康夫
投稿:2016/11/25 18:56

来週の東京株式市場見通し

 来週の東京株式市場は、中長期的な視点での強気ムードは継続するものの、10日以降の一本調子の上昇により、2週間あまりで日経平均株価は2000円を超える急騰をみせていることから、利益確定売りが先行しスピード調整の推移となりそうだ。日経平均株価の想定レンジは、1万8000~1万8700円とする。

 市場関係者からは「11月第3週(14日~18日)の海外投資家による日本の現物株と先物合計の売買は、1兆円を超える大幅買い越しで、上昇相場の牽引役は外国人投資家であることが分かる。ただ、意外なのは、あまりにも円安・ドル高の進行が急ピッチなため、25日のドル建ての日経平均株価は、トランプ次期米大統領の当選前に比べて小幅安の水準にとどまっているという点だ。従って、まだ外国人投資家から利益確定の売りは出にくいのでは」との見方が出ていた。

 日本株市場にとって、最大の注目点は引き続き円相場だが、来週は30日に開催される石油輸出国機構(OPEC)総会の動向にも影響を受けそうだ。正式に減産合意となれば、原油高が米国株上昇に追い風となる。また、米11月の雇用統計を控えて週後半は見送り姿勢が強まる可能性もある。

25日の動意株

 カシオ計算機<6952>=大幅続伸。
腕時計やデジタルカメラなどに展開するが、売り上げの7割を海外で稼いでおり、足もと急速に進む円安が採算改善効果をもたらすものとして注目されている。また、国内では円安進行が呼び水となって高級時計中心にインバウンド需要復活期待も浮上、11月初旬に17年3月期の連結営業利益を480億円から305億円(同27.7%減)に大幅下方修正しているが、通期想定為替レートを1ドル=103円で設定しており、上振れする可能性が出ている。

 フューチャーベンチャーキャピタル<8462>=急反発。
この日開示した「第2四半期決算のご説明」の資料で、同社がFVCグロース二号ファンド(出資比率52.6%)を通じて投資した、ZMP<7316>の投資時点価格は20円だったことが明らかになった。ZMPの有価証券届書ベースの想定発行価格は760円であり、同価格ベースで38倍に跳ね上がった格好だ。ZMPは来月19日にIPOが予定されているが、ZMPの初値がFVCの出資価格の何倍になるかが注目されている。

 日本アジア投資<8518>=ストップ高で年初来高値更新。
同社の投資先でスマートフォン向けコンテンツビジネスなどを中国展開するアクセスブライトが、大ヒット中のアニメ映画「君の名は。」の中国での配給・配信権利を東宝<9602>から取得している。同映画について中国では12月2日に公開され、中国全土(7000カ所以上)で上映される見通しにある。市場では「大型主力株が一服局面にあるなか、個人投資家の短期値幅取り狙いの資金が集結したようだ。台湾や香港などでも同映画が超人気となっている様子がメディアを通じて伝わっていることに加え、直近では東京テアトル<9633>が劇場アニメ『この世界の片隅に』のヒットを背景に急速人気化したことの連想も働いている」(準大手証券ストラテジスト)と指摘されていた。

 関東電化工業<4047>=急動意。
同社は半導体メモリー向けなどに特殊ガスを生産するが、ビッグデータの普及で高速アクセスが可能な3次元NAND型メモリーの需要が急拡大するなか収益恩恵が期待されている。3次元NANDは韓国サムスン電子や国内では東芝<6502>が普及のカギを握るとされる64層製品の開発を進捗させる一方、工場建設などの新設備増強を急いでいる。同メモリーはチップ構造が複雑な分だけ特殊ガスも通常より増量効果が見込まれ、関電化にとっても今後ポジティブな環境が予想される。

 アイロムグループ<2372>=急騰し年初来高値更新。
きょう25日に子会社のIDファーマが臨床用iPS細胞作製キットを発売すると発表したことが好感されている。同社株は17日に国立国際医療研究センターと脂肪を燃やすヒトの「褐色脂肪細胞」の量産技術を開発したと発表したことを契機に人気化。褐色脂肪細胞はiPS細胞などの多能性幹細胞を培養して製造するもので「やせる細胞」の量産技術開発として注目されている。この日は、iPS細胞作製キットの発売発表でiPS関連株として再度、脚光を集めた格好だ。

 プラネット<2391>=一時ストップ高で年初来高値更新。
同社は24日の取引終了後、17年7月期の第1四半期(8~10月)単体決算を発表。売上高は7億4700万円(前年同期比2.3%増)、営業利益は2億700万円(同20.6%増)、純利益は1億4000万円(同31.3%増)と2ケタ増益を達成、これを好感した。EDI事業ではメーカー・卸売業間の「基幹EDI」サービスのさらなる普及活動に加えて、業界のオンライン取引の一層の推進を図るべく、主に中小メーカー・大手卸売業間の、Web受注-仕入通信サービス「MITEOS(ミテオス)」の導入推進活動を継続している。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想