ボックス圏推移続く、ECB理事会の結果に注目

著者:冨田康夫
投稿:2016/10/14 18:34

来週の東京株式市場見通し

 来週の東京株式市場は、企業の決算発表本格化を前に積極的な売買は見込みにくくボックス圏でもみ合う展開となろう。3月決算企業の中間決算発表は10月第4週(24~28日)から本格化するが、それを見極めたいとの思惑がマーケットには底流している。米国や中国の経済指標が相次ぎ、この結果に左右されやすい部分もあるが、最大の関門となるのは20日に開催されるECB理事会の結果だ。大方の予想通り現状維持であれば波乱要因とはならないものの、一部でテーパリング(緩和縮小)の思惑もあり、週前半は強気のポジションは取りにくい面もある。日経平均株価の想定レンジは1万6500~1万7100円。
 
 懸念要因としては市場参加者が際立って少ない点である。前月(9月)の主体別売買動向をみると、自社株買いを除けば、買い手は日銀のETF買い一本といった印象を受ける。国内機関投資家、個人投資家、外国人投資家いずれも音無しの構えで、これが相場の体感温度を著しく下げている要因だ。10月に入ってからの売買代金は活況の目安とされる2兆円に届いたことがなく、これは出来高が上乗せされるSQ算出日の14日も同様だった。日銀のETF買いがマーケットのメカニズムを歪めているがゆえの、投資マネーの離散とは言えないと考えるが、現状は東京市場の主体性が失われていることは現実問題として受け止める必要があろう。

 もっとも足もとは光明が見えないわけでもない。前週・10月第1週(3~7日)の主体別売買動向では外国人投資家は現先合わせて7700億円弱の買い越しと姿勢を翻していることだ。ポイントはやはり為替の動向。個別企業の決算発表に神経質となるのは当然として、全体観としては日米金利差拡大の思惑からドル高・円安傾向が再び強まるかどうかがカギを握る。11月8日の大統領選を前に逆風は強いが、徐々にでも円安ムードが醸成されれば、売り主体だった外国人投資家の仕切り直しが期待され、全体株価の浮揚シナリオが実現するかたちとなる。

14日の動意株

 サイゼリヤ<7581>=大幅反発。
同社は低価格戦略を特徴とするイタリアンレストランで、消費者のデフレマインドが再燃するなかで外食産業勝ち組としての位置づけが再び浮き彫りとなってきた。税込みで300円を切る「ミラノ風ドリア」を筆頭に、その安さが消費者に対する強力なアピールポイントになっている。株式需給面では買い残が枯れ切った状態にあり、売り残はここ減少傾向にあるものの信用倍率0.6倍台と上値の軽さを暗示する。いちよし経済研究所が投資判断最上位の「A」(目標株価は2700円から3100円に引き上げ)を継続していることも、上値期待を助長している。

 乃村工芸社<9716>=続伸。
戻りの大きなフシ目となっていた1700円台を7月21日以来約3カ月ぶりに回復。国内小売セクターは個人消費の低迷に加えて、インバウンド特需の剥落を反映して売り上げの落ち込みが目立っているが、商業施設向けディスプレーを手掛ける同社は、百貨店向けなどで顕在化するその影響をこなして好調な収益をキープしている。「ホテルや娯楽関連施設の改装需要が伸びているほか、企業の人材ニーズを映してオフィス改装の動きなどが追い風となっている。選別受注に伴いコスト改善効果も利益面で寄与している」(国内中堅証券)という。17年2月期営業利益は前期比16%増の70億円と2ケタ増益を確保する見通しだが、これで3期連続の増収増益と成長トレンドに陰りはみられない。

 ラクス<3923>=年初来高値を更新。
13日の取引終了後に発表した9月度の月次売上高が、前年同月比22.9%増の4億900万円と18カ月連続で前年を上回ったことが好感されている。主力の「メールディーラー」売上高が前年同月比16.5%増と引き続き好調に推移していることに加えて、次期主力製品の「楽楽精算」が同87.0%増と高い伸びを維持していることが牽引した。

 モバイルクリエイト<3669>=急騰。
同社はタクシーやバスなど運送事業者向けに無線通信システムなどを提供する。人件費などが損益面で重荷となっているが、13日取引終了後に発表した17年5月期の第1四半期(6~8月)連結決算は、移動体通信事業の採算が改善し、売上高が15億2300万円と前年同期比でほぼ倍増、最終損益は前年同期の1億1500万円の赤字から4200万円の黒字化を果たしたことで、これを手掛かり材料に投機資金が流入している。

 メタップス<6172>=ストップ高。
同社は13日、みずほフィナンシャルグループ<8411>およびWiL LLC.(米カルフォルニア)と、FinTech(フィンテック)を活用した新たな決済サービスの提供を目的とする業務提携に向け、協議を開始することで基本合意したと発表。みずほの顧客基盤や金融サービスの知見と、メタップスの持つデータ解析技術やオンライン決済の知見をあわせ、先端サービスの情報ネットワークと事業プロデュース機能を持つWiLの支援のもと、FinTechを活用した新たな決済サービスを創出する。

 シンワアートオークション<2437>=上値指向。
5日・25日移動平均線のゴールデンクロス示現で底離れの様相となっている。同社は13日取引終了後、17年5月期の第1四半期(6~8月)連結決算を発表。売上高は10億7100万円(前年同期比2.4倍)と大幅に伸び、営業損益は500万円(前年同期4700万円の赤字)とわずかながら黒字化を果たした。同社はオークション運営を手掛けるが、太陽光施設販売やエネルギー関連事業や富裕層をターゲットとする保険販売などビジネスの多角化で収益再建途上にある。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想