値ごろ感からの買いで反発、75日線の攻防が焦点に

著者:冨田康夫
投稿:2016/09/28 19:58

明日の東京株式市場見通し

 29日の東京株式市場は、きょうの日経平均株価が前日比で200円を超える下げで、1万6500円台を割り込んだことから、値ごろ感からの買いが優勢となりそうだ。75日移動平均線(1万6352円=28日終値)を大きく割り込むことなく反発に転じれば、上昇トレンドが維持されることになる。

 市場関係者からは「欧州での金融システム不安が払拭されないなかで、国内の長期金利低下を背景に、銀行、保険、証券など金融株が売られた。ただ、9月期末配当の権利落ち分(115円程度)を考慮すると、日経平均株価の下落幅は100円程度にとどまったことになる」との見方が出ていた。

 28日の東京株式市場は、終始売りに押される展開で、日経平均株価は一時、前日比300円近く下げる場面もあった。円高警戒に加え、金融株の下げも全体相場の足を引っ張り、終値は前日比218円53銭安の1万6465円40銭と反落した。

28日の動意株

 東芝<6502>=後場に入り上げ幅を拡大し年初来高値を更新。
同社は前引け後に、第2四半期累計(4~9月)連結業績予想について、売上高を2兆4700億円から2兆5500億円(前年同期比14.2%減)へ、営業利益を300億円から700億円(前年同期比904億9200万円の赤字)へ、純利益を700億円から850億円(同2.3倍)へ上方修正したことが好感されている。メモリーがスマートフォン向け需要の増加などを背景に好調に推移していることや、HDDもパソコン用やゲーム機用を中心に需要が引き続き強く、為替レートが想定よりも円安に推移していることなどが要因としている。

 レッド・プラネット・ジャパン<3350>=後場に一時ストップ高。
同社は27日の取引終了後、筆頭株主のレッド・プラネット・ホールディングスやEVO FUNDを割当先として、新株および新株予約権を発行すると発表しており、財務基盤強化につながるとの期待感から買いが入っているようだ。これらにより調達する資金80億5600万円(概算)に関しては、運営する「ホテルロイヤルオーク五反田」のリブランドや名古屋市中区におけるホテル開発など、中核事業であるホテル事業の拡大・推進に充てるとしている。

 アサヒ衛陶<5341>=後場に入り急伸。
毎日新聞が28日、「国土交通省は、同省から土木工事を受注した建設業者に対し、水洗機能が付いた洋式の仮設トイレを作業現場に設置することを義務付ける」と報じたことを受けて、衛生陶器メーカーの中でも値動きの軽い両社に買いが集中しているようだ。記事によると、女性が働きやすい建設現場にするのが目的だが、洋式の需要を高めることでレンタル業界での備蓄を進め、ひいては災害時に活用できるようにする「一石二鳥」を狙っているという。現在、レンタル用トイレの大半は和式であることから、洋式が義務付けられることによる需要増が期待されている。

 LINE<3938>=5連騰で上場来高値を更新。
東京市場の上場初日である7月15日につけた5000円の最高値を約2カ月半ぶりに更新した。上値抵抗線となっていた上場日の高値を抜いてきたことから、LINEは新たな上昇局面に入ったとみられている。パズルゲーム「LINEポップショコラ」の事前登録を始めたと26日に発表したことが材料視されている。また、身売り観測が出ている米ツイッターに対して複数の買い手候補が浮上しており、世界的にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)業界の再編観測が高まっていることもLINEに対する再評価につながっている様子だ。

 シグマクシス<6088>=一時ストップ高。
同社はきょう、Googleと「Google Cloud Platform」の日本市場への展開に関するサービスパートナー契約を締結したことを明らかにした。「Google Cloud Platform」は、アプリやウェブサイトのホスティングから、データストレージ、データ分析や機械学習など幅広いサービスを取り揃えている。シグマクシスはGoogleのサービスパートナーとして、顧客企業に対し「Google Cloud Platform」活用に向けたコンサルティングサービスを提供する。

 エスプール<2471>=急騰。
同社は27日の取引終了後、16年11月期の連結業績予想について、売上高を82億2000万円から91億4600万円(前期比25.9%増)へ、営業利益を2億7000万円から4億8600万円(同8.2倍)へ、純利益を1億8300万円から3億8200万円(前期6800万円の赤字)へ上方修正したことが好感されている。人材ソリューション事業で、グループ型派遣を強化したことにより主力のコールセンター業務と店頭支援業務がともに好調に推移したことが要因。また、ビジネスソリューション事業の障がい者雇用支援サービスで、収益率の高い農園の設備販売が計画を上回ったほか、スマートメーター設置業務の粗利益率が改善したことなども寄与した。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想