「持ち直す、日銀ETF買いはスルー」

著者:黒岩泰
投稿:2016/08/21 07:46

「日銀ETF買いが薄商いの原因か」

 週末の日経平均は59.81円高の16545.82円で取引を終了した。朝方は堅調スタートとなったものの、前引けにかけて売り圧力が強まる展開。それでも、後場に入ってからは持ち直す動きとなり、株価はプラス圏を維持した。

 期待された日銀ETF買い(指数連動型)は今日もなかった。前場の株価指数がマイナスで終わったことで、期待は高まったものの、結局はまたスルーされた。市場参加者は「日銀ETF買いの条件が分からない」として、疑心暗鬼になっている。それが薄商いの原因とも指摘されており、一種の「悪循環」を生んでいる。

 実際、日銀がETF買いを見送っている理由として、「売買代金が少ないから」との見方もある。出来高が少ないなかで日銀が700億円余りの買いを実行すると、相場を必要以上に押し上げてしまう。さらに「官製相場色」が濃くなることを意味し、健全な株価形成に支障を来たす恐れがあるのだ。

 さらに、こんな見方もある。ETFを組成する側の事情だ。ETFを日銀に渡すときに、証券会社は現物のバスケットを組成する必要がある。その現物買いが最近の薄商いでスムーズに行えず、トラッキングエラーが生じてしまう恐れがあるのだ。
 いずれにしても相場の流動性のなさが要因となっており、その原因を作ったのは誰なのか、という話になる。株価というのは、「買いたい人が買い、売りたい人が売る」――そのなかで株価が形成されていく。

 しかし、一部の大口投資家(日銀やGPIF)が株価吊り上げのために、株価を持ち上げてしまうと、その株は一般的には「割高」に見えてしまう。なので、一般投資家は買うことができず、売りで対応しようとする。そこへさらに大口投資家が買いを入れるものだから、株価は上昇してしまう。その踏み上げが恐ろしくて一般投資家は割高の株を売れなくなってしまう。結果的に流動性が乏しくなり、「ETFが組成できない」という副作用が起こる。

 もし、それが事実だとしたら、すでに東京株式市場は「機能不全」に陥っていることになる。「株価を買えば上がる」という短絡的な思考回路では、もはや相場を支えられない状況になっているかもしれない。そうなると、日銀の次なる手は、現物株を買うしかなくなる。9月の「包括的な検証」で、いきなりそういった結論に至るとは思えないが、将来的にはそういう流れもあるかもしれない。「ETF増額はやめて、市場で直接、株を買います。100兆円分!」――最終的にはそのような恐ろしいことが起こるかもしれない。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想