「ファストリがS高、1銘柄で相場を押し上げ」

著者:黒岩泰
投稿:2016/07/18 08:58

「ポケノミクス」と「ヘリマネ」

 先週末の日経平均は111.96円高の16497.85円で取引を終了した。朝方は堅調スタートとなり、その後は上値を試す展開。一時16600円台に乗せる場面もあった。しかし、新規上場のLINE(3938)が伸び悩んだほか、マザーズ指数が4%以上の下落。新興市場銘柄の一角が崩れており、投資家心理が徐々に悪化した。結局、日経平均は長い上ひげが出現し、上値の重さを示唆している。

 後場に入ってから上値が重くなったのは、日経平均の日足チャートで、上方の窓(16444.25円-16496.11円)を完全に埋めたことも要因として挙げられる。「窓の引き寄せる力」が消滅し、達成感が出やすくなったのである。

 ただ、着実に上値を切り上げており、「軸上向き」に変化はない。下方の窓(15816.67円-15956.91円)よりも先に上方の窓を埋めたことで、相場の強さを改めて示している。しばらくこの上値模索の動きは続きそうだ。

 日経平均は111円ほど上昇したが、指数寄与度の高いファストリ(9983)のストップ高がなければ、マイナスになっていたかもしれない。ファストリ1銘柄で日経平均を196円押し上げ。かなり、いびつな相場であったことを意味している。

 あとは、任天堂(7974)の動きが際立っていた。買い一巡後は伸び悩む場面もあったが、引けにかけて再度強含む動き。ほぼ高値圏で終了した。他のポケモン関連銘柄も、つれ高するものが目立ち、相場のけん引役となっている。ただ、競合相手となるゲーム関連の一角には売りが出るなど、業種のなかで明暗が分かれている。資金が一極集中している感が強く、個人投資家の多くは「やりにくい」と感じていることだろう。

 現在のマーケットは、ほぼ2つのキーワードで動いている。ひとつは「ポケノミクス」であり、新作AR(拡張現実)ゲーム「ポケモンGO」の関連銘柄を中心に物色。その代表格は任天堂である。そして、もうひとつのキーワードは「ヘリマネ」である。バーナンキ前FRB議長の来日で、にわかに浮上してきた日銀の究極のバラマキ政策。「いよいよ現実味を帯びてきた」との見方もある。足元の急速の円安・株高は、この超金融緩和への期待が背景となっているのだろう。日本の金融・経済を破壊する「非常に毒性の強い政策」であるが、仮にハイパーインフレになれば株価は予想外の急騰劇を演じることになる。初動段階としての足元の株高はそれをイメージさせるものであり、投資家はこの流れについて行くしかない。日銀が本当に気でも触れて、「ヘリマネ」をやったら、売り方は壊滅するからだ。上がるに下がるにせよ、今の相場で逆張りはご法度。素直に流れにつけば、大やけどすることはない。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想