「今晩は米雇用統計、GW明け後も下向きの流れか」

著者:黒岩泰
投稿:2016/05/06 18:33

「この奔流を作ったのは日銀のゼロ回答」

 本日の日経平均は40.66円安の16106.72円で取引を終了した。朝方は堅調スタートとなったものの、買い戻し一巡後は再び売りが優勢。あっさりマイナス圏へと沈んだ。今晩、米雇用統計を控えていることや、連休の谷間ということもあり、引き続き投資家の警戒感は強い。買い戻しの動きは強まらず、後場は終始マイナス圏で推移した。

 そのようななか、日経平均の日足チャートでは、2日連続で下ひげが出現。底固い動きになっており、この付近での押し目買い意欲の強さを示唆している。短期的には上方の窓(16357.10円―16652.74円)までのリバウンド余地があるものの、現時点で軸は下向き。いずれ14000円台前半にある窓に向けて下落することになりそうだ。

 今晩は米雇用統計である。市場予想では20万人増となっているが、イベントとしての重要性は低いだろう。

 専門家の多くは「米雇用統計がどうなるのか?」に注目しているが、株式投資をする上で経済指標というのは、彼らが言うほど重要ではない。なぜならば、経済指標そのものが「過去のデータ」であり、株価にとって縁遠い存在だからだ。

 株価というのは半年から9ヵ月先を織り込んで動いているといわれている。いわゆる「先見性」があるのだ。それに対して経済指標というは、あくまでも過去のデータ。車でいうバックミラーを見ているにすぎない。車を運転するときにバックミラーを見ながら走る人がいないように、株価は常に前向きに動いている。業績の下方修正を発表したあとに株価が急上昇したり、逆に上方修正にもかかわらず株価が急落したりするのは、そういった意味だ。「将来の企業収益がどうなるのか」を市場が判断し、それを株価がいち早く織り込みに行っているのである。

 だから、「米雇用統計が重要」といっても、それほど重要ではないことは、投資家自身で気づくべきだ。では、なぜ専門家の多くは口を揃えて「重要」と言っているのか。それは、経済や金融、そして株式の教科書にそう載っているからである。「GDPというのは三面等価の原則があって、生産・所得・支出のどの面から見ても等価になる」と習ったのとまったく同じである。近代経済学が構築されていくなか、学生・一般市民たちを洗脳していく上で、そう教えるのがもっとも効率的だったからである。「麻薬とか覚醒剤とかの地下取引はどうなるんだ!」と突っ込んだところで、何も答えが出てこないのは自明の理。金融・経済学が為政者にとって都合の良い学問であり、だから米雇用統計などという表面づらの経済指標を妄信するほど馬鹿げた話はないのである。

 今晩の米雇用統計がどんな内容になるか分からないが、間違いなく言えることはただひとつ。「イベントが通過して、市場には買い安心感が強まる」ということだけだ。だが、日経平均の軸は日銀の「ゼロ回答」を機に完全に下向きに傾いており、どうしても同時進行で円高と株安が進みやすい。ゴールデンウィークが完全に明けても、下向きの流れに変化はなさそう。これは日銀が作った「奔流」である。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想