「セル・イン・メイ」今年は当てはまらず?

著者:小野山功
投稿:2016/04/21 09:06

2014年と状況が似ている今年。5月の相場はどうなる?

4月も折り返し地点を過ぎましたが、この時期になると耳にする機会が増えるのが「Sell in May(5月に売れ)」という言葉です。5月から相場は崩れやすいというウォール街の相場格言で、国内の投資家にも浸透しつつあります。

5月に下げるのであれば、今のうちに売っておいた方がいいに決まってますよね。持ち株は今のうちに処分した方が賢明なのでしょうか?

■「Sell in May」の根拠は?

5月から崩れやすいという説として最も有力なのが、ファンドの決算期に関するものです。ヘッジファンドなどは5月~6月に多くが決算を迎える為、決算前の換金売りが出やすいというものです。

投資家がファンドの解約を申し込む際、決算日の45日前までに申し出ないとならないというルールがあります。解約に備えた換金売りによって、5月は下げやすいというわけです。

一見説得力があるように聞こえますが、“解約に備えた換金売り”という点には疑問符がつきます。ヘッジファンドが株式の買いポジションだけを持つことがあり得ないためです。

ヘッジファンドの多くは、相場が下げるみれば大量の空売りを仕掛けることも厭わない、冷徹なプロ集団です。また、ヘッジファンドの一種であるCTA(商品投資顧問)は、コンピューターによる超高速売買を繰り返し、ポジションを長く持ち越すことはないと言われます。

空売りポジションを保有していた場合、解約に備えてポジションを解消する(買い戻す)必要に迫られるため、5月は株高要因にもなり得るのです。ファンド決算が株安につながるとの解説は、説得力に欠けると言わざるを得ません。

■今年は「Sell in May」はあてはまらない!

もう一つの説に、季節要因を挙げる見方もあります。年初から株高になるケースが多く、4月末~5月上旬にかけて、投資家の利益確定売りが出やすいというものです。

この点に関しては、2016年は当てはまらない公算が大きいでしょう。

今年は年初から相場が大荒れになったのは記憶に新しいところです。大発会に日経平均は600円近く下げたかと思えば、その後に5日続落し、一時1500円以上も値下がりしました。

年初から5日続落するのは、1950年に日経平均株価の算出が始まって以来、初めてのことです。

年初は株価が上昇しやすいという前提条件が崩れていますので、この説も当てはまらない可能性が高いのではないでしょうか。

2000年以降、5月の株価の騰落率(日経平均)は8勝8敗。過去の経験則からも、5月にさげやすいというアノマリーはありません。

実は、Sell in Mayには続きがあります。

Sell in May, and go away; don't come back until St Leger day.

「St Leger day」は、9月第2土曜に行われる競馬レースのことで、5月に売って9月半ばまで戻ってくるな!と言っています。

5月は下げるぞと宣言しているのではなく、5月から夏にかけて相場は下げやすいため、この間は休んだ方が良いとの相場格言だったのです。

ただ、冒頭のSell in Mayだけが一人歩きをして、5月は下げやすいと間違った使い方がされていることもあるようです。

■5月からの相場はどうなる?

今年は2014年の相場と状況が似ています。当時は4月からの消費増税で景気が悪くなるのではないかという先安感から、1月~4月にかけて株価は大きく売られました。

しかし、4月11日の14,000円割れを底に上昇に転じ、5月~7月にかけて相場は緩やかに上昇しました。

消費増税から2年後の2016年。急激な円高・ドル安で企業業績が悪くなるとの警戒感から、トヨタを始めとする輸出企業が売られ、日経平均は4月半ばに一時15,500円割れまで下落しました。

この後4月下旬~5月上旬にかけて、3月期企業の決算発表が続々と開示されます。今期の企業業績は相当悪いというのはすでに投資家に浸透しており、悪材料出尽くしとして、相場は5月以降上昇に転じる可能性があります。

小野山 功
小野山功
株式会社SQIジャパン 金融コンサルタント
配信元: 達人の予想