長期的な原油価格低迷の影響~2008年を思わせる雰囲気

投稿:2016/02/26 18:08

長期的な原油価格低迷の影響~2008年を思わせる雰囲気

原油価格の長期低迷でエネルギー関連企業の経営が不安視されています。エネルギ―関連企業といっても、実は掘削装置や鉄鋼関連、また、融資をしている金融機関なども含み多くの企業か関係しています。そして、資金繰りに困ったエネルギー関連企業が発行するジャンク債が格下げされるとジャンク債価格が暴落して信用収縮局面に入っていきます(すでにそれは起こっています。たとえば、米国のSPDRバークレイズハイイールド債ETF(コード:JNK)の株価を見ると・・・)

一番懸念されるのは、エネルギー関連企業の破綻が相次ぎ、融資元、つまり金融機関の信用不安につながることです。たとえば、現在、懸念されているドイツ銀行についてですが、ドイツ銀行は7-9月期に▼60.1億ユーロ、10-12月期も▼21.2億ユーロの最終赤字に沈んでいました。投資銀行部門のリストラ費用の計上が大きい上に、金利低下(欧州もマイナス金利)で利鞘収入も減っています。そして何より同社は1兆4,000億ユーロという、天文学的な残高にも思える金融派生商品(デリバティブ)を保有しており、このリスク資産に不安が集中しているものと思われます(おそらくこれらの資金は様々な形で資源企業への融資に向かっているはずです)。同社は収益を高めようと、ハイリスク・ハイリターンのデリバティブ商品に注力してきました(そしてそれを現在リストラ中)。

今はエネルギー(あるいは資源)企業だけの問題で心配ないという見方もあると思います。しかし、2007年のサブプライムローン問題の時も、「サブプライムローン関連の銘柄だけの問題で、特に心配ない」と、問題視されない時期がありました。

なんとなく、現在の状況は2008年を思わせる雰囲気であり、偶然かもしれませんが、年初からの株価の値動きもそっくりです。

いずれの場合も、安全資産である国債が買われ(国債価格上昇/金利低下)、クレジットスプレッドが拡大するといった道をたどっているようにみえ、クレジットスプレッドは、サブプライムローンが表面化した2007年と同じ水準にまで拡大しています。

むろん、米国の金融政策が急激に変化したり、産油国が急激に態度を豹変させて減産に協力して臨めば、状況は一変しますが、それらは急激には変わりにくいと思います。

以上を考えると、今は2008年を思わせる雰囲気であり、シートベルトをしっかりと締める時期だと思います。厳しい状況が続きますが、だからこそ、ここでの対応が肝心なのだと思います。
小池麻千子
グローバルリンクアドバイザーズ 株式アナリスト
配信元: 達人の予想