バラの会さんのブログ

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TPPによる影響 「2013年報道の自由度ランキング53位」

■「日本」を「東京」に置き換えて、保護貿易を考えてみる

 「2013年報道の自由度ランキング53位」の日本政府が練りに練った「大本営発表」や、各種利益団体が用意した情報をベースに考える前に、貿易のメリットを小さなモデルで考えてみましょう。

 仮に東京都が独立を宣言し、通関を設け、都独自の新税を導入し、都独自の車の整備基準と薬の許認可などを行った状況を想定します。神奈川県や千葉県からの野菜には関税がかかり、埼玉からの工業製品も東京に持ってくるには通関が必要になります。愛知や広島にある自動車工場では(例えば)燃費基準を強化し、エコ燃料を使う東京仕様車を別ラインで作らなければいけなくなり、その分かなり割高になります。おまけに都が課す関税が高かったり、通関業務の遅延がひどいなら、多摩に工場を移そうと考えるかもしれません。当然「それなら」と東京からの物品に対しても周りの県で関税がかけられます。

 都内の農家は大喜びですが、大多数の都民は今よりさらに高いコメや野菜を買わされ、工業製品も品揃えが減った上に値段も上がります。まわりの地域では東京に工場が移転してしまって職が減ります。

 この東京が独立した状態が保護貿易です。こう考えると、自由に交易ができる方が社会全体のメリットになることが簡単に想像できます。そうであれば、より加盟国間の取引を自由にするTPPの理念自体を否定するのは、「何か他に意図がある」といえそうです。

■保護貿易でトクしているのは誰だ

 「日本の食料自給率は40%しかないから農業保護は安全保障上必要」というのがよく聞かされる反TPP本丸である農水省のロジックです。ところが、実は農水省が長い間使っている数字は、世界で日本だけが算出しているユニークな「カロリーベースの自給率」というものです。

 こんにゃくやレタスはいくら生産しても自給率への貢献度がゼロ、他の野菜や果物も金額が大きくてもカロリーベースにすれば「自給率」への貢献度は極めて低くなる仕組みです。また、食肉は輸入飼料分を差し引くので、その分「自給率」は下がります。

 ちなみに常識的な生産額ベースの自給率では7割近いとされ、「日本は島国で農業が弱い」と主張しているのはウソとなります。加えて、「日本の農作物が安全」という主張も相当怪しいものです。狂牛病では対策が海外に大きく遅れをとりました。また、原発事故の後は、十分な研究が行われていない低濃度放射能汚染作物を国民に食べさせ続けています。

 また、国民は輸入品も高い農作物を買わされています。保護貿易は巧妙な国家貿易の仕組みで利権の温床となります。例えば9割を輸入に依存している小麦は、わざわざ政府が関与して補助金の原資や外郭団体の運営費を上乗せした2倍程度の価格に吊り上げて販売しています。

 なぜフェアな関税にしないかというと、そうすると9割の輸入小麦の価格を高く売る差額を別の財布に入れて中間搾取していることが明らかになってしまうからです。実際、輸入小麦の価格が下がっても既に9割輸入しているので、輸入量が増えるわけではありません。関税化したといいつつ、輸入品を高く売るための政府の関与を残すのがTPP反対の理由というのはおかしな話です。

 同様に輸入に頼っている品をわざわざ国家貿易にして中間搾取する仕組みが乳製品や砂糖にもあります。つまり、TPPに参加すれば、輸入品から既得権益を得ているこれらの中間搾取層のデメリットになるわけです。

 一方、スーパーに並んでいる野菜や果物の大部分は、TPPによる影響はほとんどないと考えられます。アメリカやニュージーランドで機械化が難しい白菜や大根を作って日本に輸出するのはまずムリですし、今でもオレンジや海外のグレープが日本のみかんや葡萄を駆逐してはいません。それでも疑うならアメリカなどでスーパーに行って見れば良いでしょう。日本人が買いたい野菜や果物とは異質な、「固くて大きいナス」や「ラグビーボール型の巨大スイカ」などが並んでいます。
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