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野田政権

焦点:成長戦略に滑り込ませた公的マネー改革、なお不透明な「脱国債」

[東京 4日 ロイター] 野田政権の関係閣僚による成長ファイナンス推進会議がその最終報告書に、今年5月の中間報告になかった年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの公的マネー改革を滑り込ませた。


主管する厚生労働省は改革に慎重だったため、内閣官房に民間人も含めた省庁を横断するチームを設置し、官邸直轄で国債に偏った低収益体質からの脱却に動き出す。だが、100兆円超の資産配分の見直しは、数パーセント動かすだけでも急ピッチな金利上昇を招き、その狙いとは裏腹に景気回復の足かせとなりかねない。政権求心力の低下で解散総選挙も取りざたされる中、どこまで踏み込めるのかは、なお不透明なままだ。


<月内にも閣議決定>


最終的なとりまとめ案は、近く開催する予定の推進会議に報告。正式に承認されれば、政府が月内に策定する「日本再生戦略」の一部を担う重要な柱として閣議決定される見通し。


推進策は、確定拠出年金の拡充や休眠預金の活用、不動産市場の活性化など、年度内に実施すべきと整理された事項だけで27項目に上る。焦点だった休眠預金の活用では年度内に一元管理する機関を設ける具体案を検討し、2014年度に管理・運用に向けた体制をつくることにした。不動産市場の活性化策として税優遇も盛り込んだ。


一方、今年5月時点では見送られていたGPIFや共済、外貨準備などの「公的・準公的資金」の成長分野への活用について、今回の最終案から目玉に加えた。官邸直轄で省庁を横断するチームを編成し、年度末にかけて毎月1回程度のペースでこの具体策を検討。GPIFのガバナンスや体制整備については「新たに設置する『法人の在り方に関する検討会』で検討し、13年の通常国会に所要の法案を提出する」と明記した。


GPIFが抱える資金は108兆円と世界でも類を見ない。しかし、その運用比率は圧倒的に日本国債が占め、「巨大すぎるあまりにアクティブな運用が出来ておらず、受託者責任を果たしていない」(一橋大学経済研究所の小林慶一郎教授)との批判が多かった。


12年度業務報告によると、GPIFの資産構成のうち国内債券は67%を占める。その基本ポートフォリオを数%でも株に再配分することになれば、公的マネーは兆円単位で低迷する株式市場に流れ込む。

<GPIFはすでに売り手>


もっとも、すんなり事が運ぶかどうかは微妙だ。GPIFが高利回りを狙って脱国債に傾けば、国債消化に支障をきたし、かえって景気回復の足かせになりかねない。そもそもGPIFは国債市場ではすでに売り手に回っている。団塊世代の年金受け取りなどで、その支払いを国債売却によりねん出しているためだ。


年金財源の付け替えで年金債に変わっても3、4兆円程度のキャッシュアウトが想定されるうえ、これに再構成分が加われば「国債の売却量は確実に増える」(SMBC日興証券の末澤豪謙部長)という。


今年4月、GPIFによる国債偏重の運用状況を問題視した民主党の成長戦略・経済対策PT(直嶋正行座長)は、国債への投資比率を引き下げる変わりに、株やエクイティ・ファンドへの比率を上げるべきだと指摘。それによる国債投資の減少を補てんするため、「政府・日銀において必要な措置を講じる」としていた。


しかし、今回の最終案は、すでに今年4月に描かれた「脱国債」のシナリオには遠く及ばず、市場には「もはや尻すぼみの状態」(外資系証券)との見方もある。


<解散・総選挙なら腰折れも>


民主党小沢一郎元代表が2日、離党を表明してからは野田政権の求心力低下も著しい。民主党の分裂に野党は解散・総選挙を求めて攻勢を強めており、「そもそも(年度末の)結論付けの時点で、どこが政権を握っているのかもはっきりしない」(大手銀行)。


当局者にしてみれば、表向きは「これから議論する段階で、方向的にどうこうすると出せるものではない」との立場だ。しかし、水面下では「成長のための努力を惜しまない姿をみせ、消費増税に向けたアリバイ作りをしているに過ぎない。解散・総選挙になれば腰折れは避けられないだろう」(政府筋)との声がくすぶっている。


(ロイターニュース 山口貴也 編集:伊賀大記)

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