ユリウスさんのブログ

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根本から考える(1) - 税金

最近の世界の政治経済問題は相互に複雑に絡み合っており、どれをとっても一筋縄ではいかない。大問題から列挙すれば、地球規模の人口問題、その先に食料、エネルギー、環境、資源、人権抑圧問題がドンと横たわり、国家間には安全保障、文明の衝突、富の配分など、解決の糸口さえもつかむことができない問題が山積している。
 世界第3位の経済大国の我が国としては、人類が抱える地球規模の問題を避けて通るわけにはいかず、一国平和主義や一国繁栄主義がとれるわけもない。かといって、悲しいかな、積極的にコミットする力はない。せいぜい、価値観を同じくする国々と協力することで国際貢献していく他に道はない。

 さて、そのようなグローバルな問題の次にくるのが我が国の政治課題である。課題は数々あるが、先ずは「税金」の根本問題から考えることにしたい。なぜなら、根本から考えることは必然的に長期視点に立たざるを得ず、いたずらに細かい議論に時間を割かなくてすむ。長期的観点から問題の所在がはっきりすれば、その解決方法は何通りか考えられるはずであるから、それが政策となると信ずる。

またまた、この本にお世話になりました。塩野七生著「ローマ人の物語」

 「ローマ人の物語」の中にたしかこんなことが書いてあった。国家には生産に携わる国民と生産に携わらない国民とがいる。携わらない国民は兵士と官吏であると。(老人は携わってきた人たちであり、子供はこれから携わる人なのでここではたずさわるに入れる)
 ウンと単純化してしまうと、国家は国民全員を食べさせていくためには、税金を徴収し、兵士と官吏に配分しなければならないことになる。生産に携わり税を納めた国民は、その見返りに官吏と兵士からなる国家組織から、身の安全と自分の財産を守ってもらって、安心して暮らすことができる。こう考えると安全と安心の対価である税金を少なくしようとするには、効率よく少ない官吏を配置し、兵士を少数精鋭にするのがよいということになる。我が国の場合は軍隊を持たない建前から、アメリカと軍事同盟を結んでいるが、これは傭兵制の近代化したものと一応考えることにして先へ論を進めます。

 さて、まず我が国は生産に携わる人が一体どのぐらいの富を生産しているのだろうか? 統計によれば我が国の2011年度の予想
GDPは約540兆円だ。
 それに対して、2011年度予算歳入内訳の税収は
所得税が13兆円
法人税が 8兆円
消費税が10兆円
その他(揮発油税、酒税、相続税、タバコ税、関税、石油石炭税、自動車重量税、印紙収入他)
10兆円
税収合計41兆円である。
単純に税率を計算すると41兆円÷540兆円=7.6%
我が国の総合税率は7.6%ということです。この数字は頭に残しておきましょう。もし、富んでいる人も、そうでない人も、所得のある人は全員8.2%の所得税を納めればよいという訳ですね。

 翔年は何事もシンプルなのが好きなので、税は広く薄く国民から集めるのを良しとする考え方に立って、いろいろ事情があるのを承知の上で、とりあえず10%を徴税すれば今年度予算の税収は13兆円も余ります。そしてこんな所得の10%が税という簡単な計算でよいのなら、税務署の職員や地方自治体の税に関係する職員は大幅な削減が可能になるはずです。納税するほうも訳の分らん書類の作成が不要になる。

 夢のような話ですが、かつてこれに近いうシンプルな税制を実施し、大繁栄した国家がありました。これも塩野七生さんに教えて貰ったことですが、その国家とは大ローマ帝国です。「ローマ人の物語、パクス・ロマーナ(文庫本第15巻)」にはこうあります。

ローマ帝国では下の税制が300年間続いたのです。
「ローマ市民」=兵役義務あり
直接税     0%(収入税としてならば直接税はなし)
奴隷解放税  5%
相続税     5%

「非ローマ市民(属州民)=ガリアとか北アフリカなどの属州の住民には兵役義務はありません。
直接税収入の 10%(地租税ないし属州税、ただし兵役勤務の属州民は免税)     

ローマ市民も属州民も下の如く同じ間接税であった。
間接税     1.5%~5%(オリエント産の贅沢品に対しては25%)
売上税     1%

 これを見ると兵役義務=安全保障義務が如何に重視されていたかよく分る。平和維持には金がかかるのですね。命がけで国を守る国民は無税で、ローマ帝国の軍隊とローマ法によって命と財産を守ってもらう立場の属州民は所得税10%を収めるのでした。

続く(長くなって時間がなくなりました。すみません。週末は外泊します。また来週お目にかかりますのでよろしく)


 
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