[26日 ロイター] 国際決済銀行(BIS)バーゼル銀行監督委員会の上位機関である中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループは26日、昨年12月に示した銀行の自己資本比率と流動性に関する規制強化案の一部を緩和することで合意した。
バーゼル委員会は昨年、銀行が公的資金による救済なしに今後の危機に対応できるよう、銀行の自己資本比率規制の厳格化を促す「バーゼルIII」の草案を公表した。
これに対して銀行業界は、自己資本を大幅に積み増す一方で貸し出しを維持することはできないと反発してきた。
バーゼルIIIの主要要素の中でなくなったりした要素はない。バーゼル委は、先月の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)がバーゼルIIIの段階的な導入で合意したことと引き換えに、規制改革パッケージの内容には手を入れないよう求めている。
繰り延べ税金資産や少数株主持ち分の取り扱いなどの多くの修正は、日本やフランス、ドイツなどから歓迎されるとみられる。
G20は11月にソウルで開かれる首脳会議でバーゼルIII最終案を承認する方針で、新基準の実施は2012年末までが目標。
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以下は26日に発表された主な修正点
<自己資本の定義>
バーゼルIIIは銀行が少数株式を保有している銀行へのすべての出資分を控除しなければならないと提案。しかし銀行は、それによって株式売却あるいは全支配権取得を余儀なくされると主張。
修正案は「子法人銀行のリスクをサポートする少数株主持ち分のある程度の慎重な認識を認める」としている。この修正点は欧州の一部銀行に歓迎されるだろう。
<繰り延べ税金資産>
銀行の自己資本における繰り延べ税金資産の取り扱い余地も拡大された。従って、自己資本から全面的に控除する必要はなくなる。日本がこうした緩和を積極的に働きかけていた。
<カウンターパーティ・リスク捕そく>
デリバティブ(金融派生商品)などの保有資産に与える影響について銀行業界が懸念していた草案の厳格性が薄められる。大規模銀行に歓迎される措置。
<レバレッジ比率規制>
レバレッジ比率規制の導入によって生じる影響を緩和するため多くの修正が施された。同規制は米国では一般的だが欧州では初めて導入される。
レバレッジ比率は長期での段階的導入を経て、四半期平均で算出される。
バーゼル委員会は最低3%のTier1(中核的自己資本)レバレッジ比率を試験し、時間をかけて段階的に導入する方向。
移行期間を2期に区切ることで合意。
*監督当局の監視機関が2011年1月に開始。合意した定義の根本的要素と結果としての比率を追跡。
*2013年1月から2017年1月までは並行実施期間。レバレッジ比率を追跡。
銀行レベルのレバレッジ比率およびその要素の開示は2015年1月に開始。
<資本の追加バッファー>
バーゼル委員会は、Tier1を上回る新たな規制バッファーと、過剰な信用供与があると判断されるときに積み増さなければならない追加バッファーの定義について引き続き作業する。
最終とりまとめは2010年末までに行う。銀行は作業の一部が先送りされることを期待していた。
<条件付資本、追加的自己資本賦課>
銀行の資本の要素として条件付資本をどのように取り扱うかについての提案に対する作業を承認。条件付資本は、破たんが幅広いシステムを不安定化させる銀行へのシステミックな追加的自己資本賦課要求を満たす上で役割を果たす可能性もある。銀行はこの分野での修正を歓迎する見込み。
<流動性規制>
銀行の流動性に関する初の世界的な規制の枠組みについて、いくつかの変更点が発表された。特に、流動性バッファーに含めることができる資産が単純なソブリン債から拡大された。
外貨建てで発行されたリスクウエートがゼロ以外の国内ソブリン債を含めることが認められる。
最上級の政府債以外に、資産の40%を上限に「レベル2」の流動性資産の導入が認められる。均衡予算のため国債発行の必要性のない国々では、銀行によるソブリン債の積み上げは困難だった。
バーゼル委員会はバーゼルIII原案の改革案達成に十分な政府債の発行が行われていない国々のため、今年基準を策定する。
銀行に長期の十分な流動性調達を求める安定調達比率(NSFR)は、規制案からの廃棄が期待されていたものの、そのまま残った。ただ2018年1月までという長期の段階的導入に修正される。