優利加さんのブログ

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セリング・クライマックスの様相を呈して来た

先週金曜日の米国株式相場は大幅続落した(DJIA -610.71 @39,737.26, NASDAQ -417.98 @16,776.16, S&P500 -100.12 @5,346.56)。ドル円為替レートは141円台に突入するほどの円高・ドル安となった。先週金曜日に続き本日も、日本株全般は大幅全面安となった。東証プライムでは、上昇銘柄数が僅か14
に対して、下落銘柄数は1,625となった。騰落レシオは76.76%まで急低下した。東証プライムの売買代金は7兆9674億円。

TOPIX -310 @2,227
日経平均 -4,451円 @31,458円

先週金曜日の米国では、寄り付き前に発表された7月雇用統計で非農業部門の就業者数(前月比11万4千人増)が事前予想(18万5千人増)を大幅に下回り、失業率は4.3%(>前月4.1%)と予想に反して上昇したことがきっかけで、米景気後退への懸念が急速に高まり、主要3株価指数は揃って大幅続落した。ただし、失業率の上昇はテキサス州を襲ったハリケーン「ベリル」の特殊要因の影響も入っているので景気後退だけが要因ではない。しかし、もはやマーケットは完全にリスクオフ相場となり、リスク資産である株を売り、安全資産である米国債を買う動きが加速しており、米長期金利(=10年物米国債利回り)は大幅に低下している。7月末には4.1%だったものがたった3営業日で0.4%も急落して3.6%台となった。2年債利回りも同時期に4.3%から3.6%台へ急低下した。急速な景気減退の兆候を受けて、FRBが9月を待たずに緊急利下げに踏み切るとの観測が急浮上しているからだ。そして、これこそがドル売り・円買いを促しドル安・円高を加速している。米国株の「恐怖指数」と言われるVIX指数は不安心理が高まったとされる20を超えて23台に上昇した。

「サーム・ルール」という経験則が発動されたと見る向きが増えて来た。直近3カ月間の平均失業率が過去1年間の最低値を0.5ポイント上回ると景気後退が始まった可能性が高いという経験則である。過去1年間の最安値と比べてその最安値から3カ月移動平均線がどれだけ上方向に放れたかを示す株価チャートの要領で考えると分かり易いだろう。7月の雇用統計で、過去3か月間の平均失業率は4.13%となり、過去1年間の最低値を0.53ポイント上回った。これにより、米景気は景気後退局面に入ったとマーケットは受け止めた。この単純な経験則は1970年代以降の過去50年間で7回発動され、すべての景気後退局面を的中して来ただけにマーケットの注目度が高く、株売りに拍車をかけた。こうなってくると、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月にはほぼ確実に利下げに踏み切ると見れれる。一歩進めて、米同時多発テロ(2001年9月)、世界金融危機(2007~2008年)や新型コロナのパンデミック(2020年3月)の時のように、9月のFOMC前に緊急会合を開いて、緊急利下げに踏み切る可能性すら出て来た。マーケットはそれを催促している。

本日の東京市場では、米国株の大幅続落の流れを受けて、日本株も続落が止まらなかった。株価が大きく崩れる時、最初は取るに足りないと感じていた些細な悪材料が、次第に集団心理により増幅されて恐怖に変わり、それが制御不能なくらい強大な大魔王のような恐怖に変貌し、売りが売りを呼ぶパニック売りの大暴落となる。今回の大暴落は、ブラックマンデー翌日の1987年10月20日(3,836円安、14.9%安)を超えて、過去最大となった。下落率では過去2番目。円高・ドル安進行により自動車株など輸出関連銘柄は当然売られ、半導体関連銘柄など値嵩株も大きく売られた。さらに、利ザヤ拡大期待で上昇していた銀行株も国内金利の低下から軒並み売られて大幅安となった。

レバレッジを掛けた信用買いをしていた個人投資家は追証に追われて投げ売りの最中と見られる。7月26日申し込み時点での信用買い残(=潜在的売り需要)は4兆9808億円で、2006年6月以来、約18年ぶりの高水準となっていただけに、逆回転し始めると下げ圧力が巨大になった。この下げで損切するCTA(商品投資顧問)も入混じり、足元の株式相場の暴落を引き起こしている。日経平均先物ではサーキットブレーカーが発動され、取引が一時的に約10分間強制停止された。2016年4月24日のブレグジット(Brexit: 英国のEU離脱が決まった日)以来のサーキット・ブレーカー発動だった。

証券会社などプット・オプションの売り手は今、火の車だろう。プットの売りは、証券会社だけでなく、地方銀行や海外年金基金なども手数料稼ぎ目的で「セルボラ戦略」として広がっていた。ほんの数週間までは株式相場のボラティリティは低く手数料化稼ぎのためプットを大量に売っていた。ところが、株価が急落し始めると、行使されることはまずないだろうと高を括っていたOTM(当初、行使価格が時価から価値のない方に設定してある)のプット・オプションが行使される可能性が急遽高まって来た。プットの買い手が権利行為する(=プットの売り手は行使価格で買わされる➡ヘッジとして売らざるを得ない)ことに備えて先物を売り増しながらヘッジする(デルタヘッジ)操作をする。この時、売り手のガンマ(=株価の変化に対するデルタの変化率)は急速に増加するため、下げれば下げるほどより大量の先物売りでヘッジする必要がが出てくる。この力学も今回の大暴落の一翼を担っている。

急速な円高・ドル安進行により、円安・ドル高基調がインバウント需要を増加させることで売り上げが増加すると期待されて買われていた百貨店株は大きく下げている。反対に、円高・ドル安により収益が上がると期待されるニトリは下げ幅が相対的に小さい。

円高・ドル安の影響をどの程度まで織り込んだか次第で後どれくらい売りが出てくるかが決まる。過去の大暴落のパターンから想像すると、そろそろ「セリング・クライマックス」が近いのではないだろうか。今週中、遅くとも来週中にはこつんと当面の大底を打つと、今現在は見ている。今後の展開次第ではそれはもっと先送りになることもありうるが。

相場の格言に「天井三日、底百日」というものがあるが、まさに今回の天井は7月10日からの3日ほどしかなかった。

日経平均の日足チャートを見ると、先週金曜日は大きなギャップダウンの後にさらに下げ幅を拡大して長大陰線で終えたが、その翌日である本日、月曜日も大きなギャップダウンの後にさらに下げ幅を拡大して超長大陰線で終えた。1日で下げ幅4,451円という超特大の大暴落となった。出来高が急増しており「セリング・クライマックス」の様相を呈して来た。3倍のレバレッジを掛けて信用買いをしていた個人投資家など、売らなくてはいけない人が全部売り切ったら株式相場は下げは止まる。今週が山場と見ている。米国株はまだダウ工業株30種平均もナスダックを大幅続落しているが、8月6日午前1時40分現在、日経平均の時間外取引では33,500円ほどで取引されており、日経平均の月曜日の終値@31,500円前後と比べると2,000円ほど高い。もし、このまま朝を迎えると、明日は久しぶりの反発が予想される。

33業種中すべての業種が下げた。下落率トップ5は、保険(1位)、銀行(2位)、証券(3位)、非鉄金属(4位)、海運(5位)となった。

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