ベネッセホールディングスのニュース
ベネッセHD第66期株主総会 安達社長「コロナ後を見据え、既存事業モデルの転換やハイブリッドな働き方を推進」
2019年度の総括
安達保氏:今後の事業戦略についてご説明します。まず簡単に、2019年度の総括について触れたいと思います。
2019年度ですが、売上高、営業利益ともに3期連続の増収増益でした。内容的にも非常によくなってきたと感じています。「進研ゼミ」は「会員数成長」から「利益成長」へと戦略を大きくシフトして、収益性も大きく高まってきています。また商品のデジタル化も推進しています。
学校事業は、大学・入試改革への対応を進めていましたが、改革自体が見直しになってしまった状況の中、基本的な戦略を再構築しています。中国「こどもちゃれんじ」事業、ベルリッツは構造改革を実行しています。介護事業は順調に拡大しており、特に昨年はスタッフの処遇改善も実施して、退職率も大幅に向上しています。
また、昨年度に通訳会社のサイマルを売却し、一方で英語パーソナルジムのスタディハッカー社を買収、さらに社会人教育のUdemy社へも出資するなど、選択と集中を進めています。
一方で、年度末に発生した新型コロナウイルスの影響によって事業計画を下方修正しなければならない状況となり、ベルリッツ等の減損損失により当期純利益は目標に届いていません。
業績予想および中期経営計画
業績予想、中期経営計画についてお話しします。業績予想ですが、新型コロナウイルスの影響が非常に大きく、今年度の業績予想開示を見送っています。
後ほどご説明しますが、「進研ゼミ」は非常に好調です。しかしながら、それ以外の事業への影響が大きく、またここからの回復のスピードをきちんと見通せないこともあり開示を見送っています。しかし、この影響が非常に大きく、今年度は大きな減益になることも想定されます。
中期経営計画は、新型コロナウイルスの影響をしっかり見極めた上で、秋に見直しする予定です。
コロナ時代を生き抜くためのプロジェクトを加速
コロナ時代を生き抜くためにベネッセとして重要だと思っている点についてお話しします。この事業環境の変化は非常に大きく、もうコロナ前には戻らないと考えてよいと思っています。その中で、重要なポイントを4つ挙げています。
まずは既存事業モデルの転換です。オンライン、デジタル教育の強みを生かし、我々の教育サービスの事業モデルをさらに進化させていくことに尽力したいと思っています。2つ目は、ハイブリッドな働き方です。在宅勤務と出社のハイブリッドな働き方を実践し、生産性を飛躍的に高めていきたいと考えています。
3つ目は、固定費の削減です。厳しい業績が予想されている中で、固定費の削減を推進してライトな経営にしていきたいと考えています。4つ目は、ベネッセの価値観の浸透です。このような不確実な時代において、ベネッセとしての価値観をしっかり持って進めていくことが非常に重要だと考えています。
サステナビリティ、つまり持続可能な社会の実現ということで、我々は一昨年から取り組んでいますが、サステナビリティを起点にしながら、価値観の浸透、ブランド強化に努めていきます。「社会に役立つ企業」であることを意識して、事業運営を進めていきたいと思っています。
【国内教育】「進研ゼミ」4月会員数
新型コロナウイルスを踏まえた事業別の戦略についてお話しします。まずは「進研ゼミ」ですが、先ほどもお伝えしたとおり会員数は4年連続でプラスとなり、デジタル化の商品も着実に広がっています。特に、小学講座が非常に好調で前年比6.7パーセント増となり、全体でも3.3パーセント増となっています。
【国内教育】「進研ゼミ」:一斉臨時休校への対応
新型コロナウイルスの影響による学校の休校、あるいは幼稚園の休園を受けて、ご家庭への支援活動を実施しています。3月には「総復習ドリル」ということで、自宅で取り組める学習コンテンツを提供しました。当初はお使いになる方が10万部程度ではないかと予想していましたが、実際には100万部を無償提供し、多くの方にご利用いただいています。
また、オンライン教室で「きょうの時間割」も提供しました。休校中の小中学生の生活リズムづくりを支援するということでオンラインの教室を提供し、1日に5万人の方が利用されました。
さらに「オンライン幼稚園」ということで、休園中の幼児の生活リズムづくりを支援しました。こちらは世界に発信しましたが、世界100か国で100万人という非常に多くの方にご利用いただきました。
休校により在宅での勉強を余儀なくされたお子さまや親御さまに対して、みなさまのお困りごとに寄り添ってさまざまサービスをスピーディーに提供し、非常にご評価いただいたと考えています。
【国内教育】学習塾・英語教室事業
学習塾・英語教室事業ですが、この事業も新型コロナウイルスの影響を非常に大きく受けました。学校と同じように教室自体も休校を余儀なくされ、また新規入会に向けた営業活動も中止せざるを得なかったということで、非常に厳しい環境でした。また緊急事態宣言が解除された後も「3密」を避けるということで、今までのような教室運営ができない状況です。
その中で「場」、つまり教室と「映像/オンライン」を組み合わせたハイブリッド型の教育サービスの提供を強化しています。東京個別指導学院では、6月からオンラインでの1対2の個別指導をスタートさせています。また、子ども向けの英語教室「ビースタジオ」では、5月からオンラインと映像のレッスンを組み合わせたサービスをスタートさせています。
【国内教育】中長期戦略:校外学習事業
「進研ゼミ」とエリア・教室事業の今後の戦略についてお話しします。4月に、ゼミカンパニーとエリア・教室カンパニーの組織を統合して校外学習カンパニーという新しい組織を作っています。
先ほど少し触れたことにも関連するのですが、お子さまの学校外での学びの形態が変わってきており、自宅で自習されるお子さまもタブレットを使い、オンラインで学ぶような形になっています。あるいは教室、塾で勉強されている方も自宅でオンラインで学ぶということで、いろいろな学びの形態が融合している状況になってきています。
そこで、この2つのカンパニーを融合させることによって、さまざまな学びのスタイルを一人ひとりに合った形で、また付加価値の高い教育サービスを提供していこうということで、このような戦略のもとにこの組織をスタートさせています。
【国内教育】学校向け教育事業
学校向け教育事業についてお話しします。ご案内のとおり、学校はすべて休校になりましたので、その影響が非常に大きく出ています。また学校自体は地域ごとに再開のタイミングが異なっており、さらに休校中の生徒に対する支援も学校ごとで随分ばらつきがあり、地域や学校ごとで教育や学力の格差が起こっている状況です。
我々はこうした現実に深く寄り添い、地域や学校ごとの状況をよく理解して、それぞれのニーズにしっかり応える形で商品やサービスの提案を強化しています。
また中長期の戦略についてです。学校においてもデジタル化がどんどん進んでいます。現在「GIGAスクール構想」というものがありますが、生徒一人ひとりにタブレットを渡そうということで、そのような中で、さらに我々が提供できる教育サービスがあると思いますので、この戦略をしっかり強化していきたいと考えています。
また、大学や社会人領域についてもさらに事業を拡大していきたいと思っています。冒頭にご説明したUdemyは、まさしく社会人向けの教育を行なっている会社です。ここを中心に、リカレント教育と社会人教育を強化していきたいと考えています。
【グローバルこどもちゃれんじ】中国事業
中国事業ですが、ご案内のとおり「こどもちゃれんじ」を展開しています。中国は世界で最も早く新型コロナウイルス感染が爆発的に増えたところですが、その後に沈静化しています。4月時点の会員数は対前年で6.7パーセント減にはなっていますが、当初想定していたよりも傷は深くなかったと思っており、特にネットを使った販売が非常に好調です。今後は中国で、教室事業などの周辺事業を再開していきます。
この教室事業を徐々に再開させることが今後のテーマになっています。さらに中長期的には、先ほどお話ししたネット販売を中心に販売チャネルの再構築を行なっていきたいと思っています。お客さまのニーズもどんどん変わってきているため、新しい商品改革を推進していきたいと考えています。
【介護保育】介護事業
介護事業ですが、まずは新型コロナウイルスの感染を起こさないことを第一に、非常に慎重に、しっかりとした運営を行なってきました。実際にホームに来られるご家族の方の面会制限も実施していました。したがって、広告等による営業活動もできないということで、新規入居者の方々の受け入れを大幅に縮小する状況になっています。
しかしながら、やはり感染予防を第一に、まずは既存のご入居者さまのケアを最優先に行なっています。現在、徐々に来館制限、あるいは面会制限が解除されてきており、新規営業をスタートさせていくといった状況です。
介護事業の中長期戦略は、以前からお伝えしているとおりで、ハイエンドホームの強化です。また東名阪を中心に展開している地域ドミナント戦略ですが、地方都市についてもこのドミナント戦略を展開できるところは拡大していこうと考えています。この介護事業は、とにかくスタッフの質が非常に重要ですので、人財育成体系を再構築していくことを考えています。
【ベルリッツ】ベルリッツ
ベルリッツについては、昨年度に大幅な構造改革を実施しました。その効果により赤字幅を縮小していましたが、残念ながらこの事業も新型コロナウイルスの影響を非常に大きく受けており、語学サービスは中国を皮切りに、4月には全世界で教室を閉鎖しています。
留学支援事業についても、アメリカの大学がすべてクローズされたということで、実質的にはすべての事業がストップしています。殆どの留学生が本国に帰ってしまい、非常に厳しい状況ですが、足元ではセンターが少しずつオープンし始めています。
一方で、こちらもオンライン・ハイブリッド化の強化ということで、従来から「Berlitz2.0」を進めていますが、こちらをさらに強化してきます。一層の構造改革ということでリアルの教室の削減、あるいはフランチャイズ化等を行なっていく予定です。
【新規領域】新規領域への拡大
新規領域への拡大についてです。新たに4月に海外事業開発本部を設置しました。これまで海外事業は、基本的にはそれぞれのカンパニーで海外に機会があればその事業を広げていこうというスタンスでした。
しかし、日本の少子化を考えると海外事業の開発スピードをもっと上げていかなければならないということで、専門に扱う部署を作り、そこですべての事業の海外展開について総合的に考えていく形にして、拡大に向けてドライブをかけています。
また以前から進めていますが、M&Aを活用した新たな成長戦略を推進しています。既存事業の競争力強化、そして教育・介護以外の「第3の柱」を作るということで検討を進めています。
経営体制の変更
経営体制の変更についてお話しします。この株主総会のあと、担当取締役制からCEO・COO体制に変更します。この背景ですが、新型コロナウイルスにより事業環境の変化が非常に大きく、その中で2つのことを推進しなければならないためです。
1つは、当然のことですが足元の事業の回復、あるいは事業モデルの変化、変革をスピード感をもって進めていくということです。もう1つは、コロナ後の世界は生活様式も行動様式も変わっていく中で、ベネッセとしての中長期的な事業戦略をしっかり作ることです。これらが非常に重要になります。
その2つについて、CEOに就任した私と、COOに就任する小林とで役割を分けて、しっかり事業の立て直しを図り、スピード感をもって事業を推進していきたいと考えています。
株主還元
株主還元についてです。先ほどお伝えしたように、今年度は大幅な減益になることが想定される、非常に厳しい状況ではありますが、安定配当の考え方から今年度も1株当たり50円の配当を維持する予定です。
サステナビリティ活動の推進
最後に、サステナビリティ活動についてお話しします。先ほどもお伝えしましたが、持続可能な社会の実現ということで、一昨年からサステナビリティ活動を推進しています。昨年はサステナビリティビジョンを発表していますが、今年の2月にマテリアリティ、つまり重点活動項目を挙げています。
すべてはご説明しませんが、いくつか例をご紹介します。例えば「人生のすべてに学びを」というテーマの中では、先ほどお伝えした「学びを新しく」ということで、デジタルあるいはオンラインを使った新しい教育を通して教育サービスを提供し、社会課題を解決していきたいと考えています。「学び続ける人生を」では、社会人教育にもっともっと貢献していきたいという思いが込められています。
また「超高齢社会に向けて」についてです。「介護士=究極の専門性」と記載していますが、今回の新型コロナウイルスに際しても、介護現場でのスタッフの方々の努力は素晴らしいものがありました。ここには、こうした専門性をもった方々を支援していきたいという思いが込められています。
そして「地域との価値共創」では、「アートによる地域再生」ということで、直島でのベネッセの活動をサステナビリティ活動の一環として位置付け、これからも強化していくといった思いを表しています。
「よく生きる」を社会へ 「よく生きる」を未来へ
「よく生きる」という我々の企業理念をさらに進化させていこうということで、「『よく生きる」を社会へ 『よく生きる』を未来へ」をモットーに頑張っていきたいと思っています。
以上、今後の事業戦略についてご説明申し上げました。株主のみなさまからのなお一層のご支援、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
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