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―政府はAI・半導体「大規模」投資支援、防衛やエネルギーなど重要政策目白押し―
足もと日本株は不安定な展開が続いている。米金融政策に対する先行きや欧州政治リスクの台頭が不透明要因として意識されていることが背景にあるが、こうした相場環境下でも買い安心感のあるテーマは存在する。それが国策に絡むテーマ群だ。国の政策は予算を組み、中長期の視点で計画的に実行するため、関連する企業には息の長い恩恵が及ぶことになる。“国策に売りなし”――毎年恒例の「骨太の方針」が出てくる今、関連銘柄に注目だ。
●来年度予算の方向付けにも
経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針が近く閣議決定される。同方針は政府がさまざまな政策の基本的な方針を示すもの。首相が議長を務める内閣府の経済財政諮問会議で議論され、毎年6月ごろに決定される。来年度予算の中身を方向付けるものになるだけに、そこに盛り込まれる政策は先々強力に推し進められることになるとみてよいだろう。
国策がずらりと並ぶ骨太の方針は株式投資の観点からは見逃せない。国の後押しを受けて伸びる業界はどこか、関心が高まる分野はどこなのか、銘柄選びの大きなヒントになる。足もと国内政治は依然として騒がしいが、仮に今後政局に変化が起きたとしても経済、安全保障といった重要政策の大枠が崩れる可能性はそう高くはない。むしろ新体制のもとで新たな国策テーマが出てくることもあり得る。
●再生可能エネ・原子力「最大限活用」
今月11日に開かれた経済財政諮問会議で骨太の方針の原案が明らかになった。21日にも正式決定される見通しだが、先取りする形でその中身を見ていこう。
株式市場において国策テーマの代表格といえば 防衛がまず思い浮かぶ。原案では、2022年に改定した国家安全保障戦略に基づく防衛力の抜本的強化が昨年に続き改めて明記された。「次期戦闘機の共同開発を推進する」との文言が今回新たに加わっており、開発に参画している三菱重工業 <7011> [東証P]やIHI <7013> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]は要マークだ。ネット空間の安全保障、サイバーセキュリティーを強化する方針も引き続き示され、これに絡んでは官公庁向け需要を捉えるFFRIセキュリティ <3692> [東証G]に目を向けておきたい。
ロシアのウクライナ侵攻を機に重要性が強く認識されるようになったエネルギー安全保障への取り組みでは「脱炭素効果の大きい再生可能エネルギー、原子力の電源を最大限活用する」とした。 再生可能エネルギーに関しては株式市場で人気のペロブスカイト太陽電池についても触れられている。同太陽電池の主原料であるヨウ素を生産する伊勢化学工業 <4107> [東証S]、太陽電池製造装置大手のエヌ・ピー・シー <6255> [東証G]など関連銘柄を注視したい。
原子力については、安全性の確保を大前提に地元の理解を得て再稼働を進める方針を堅持した。今年は9月に東北電力 <9506> [東証P]女川原発、12月に中国電力 <9504> [東証P]島根原発が再稼働を予定している。東京電力ホールディングス <9501> [東証P]の柏崎刈羽原発は再稼働に必要な設備検査がすべて完了し、今後は地元同意が焦点となる。
●直近話題の宇宙、eスポーツも
世界的な広がりをみせる人工知能(AI)の分野では、国際的な連携・協調に向けたルール作りで「主導的な役割を果たす」と明記。官民連携のもと研究開発力の強化や利活用の促進、人材の育成・確保を図るほか、偽情報対策や知的財産権への対応などを進める。更にAIと、その普及の基盤となる半導体への投資を拡大する方針も盛り込んだ。「大規模かつ計画的に量産投資や研究開発支援などの重点的投資支援を行う」とし、次世代半導体の量産に必要な法制上の措置も検討していく。
直近、株式市場で話題となった分野も見てみよう。まずは宇宙分野から。原案では民間のロケット開発支援や衛星データの利活用などを挙げた上で、企業や大学の研究開発を支援する宇宙戦略基金について「速やかに、総額1兆円規模の支援を行うことを目指す」とした。骨太の方針への反映に向け、自民党の宇宙・海洋開発特別委員会が宇宙関連予算の増額を求める提言書を政府に提出したことが先月伝わり、マーケットで宇宙開発関連のテーマが関心を集めた経緯がある。
eスポーツも見逃せない。同じく先月には自民党のスポーツ立国調査会がeスポーツの普及・振興を盛り込んだ提言書を提出。これが報道で伝わると、GLOE <9565> [東証G](グロー、旧ウェルプレイド・ライゼスト)をはじめとする関連銘柄に物色の矛先が向かった。今月に入ってからは政府が新たなクールジャパン戦略を策定したことが報じられ、アニメ関連株が脚光を浴びる場面があった。骨太の方針の原案でもアニメを含むコンテンツ産業を後押ししていく考えが示されており注目だ。
●物流DXや花粉症対策など、関連中小型株をマーク
このほか原案には物流DX(デジタルトランスフォーメーション)や ドローン、 リスキリングへの取り組みが昨年に続き明記された。 花粉症対策、国民皆歯科健診も引き続き盛り込まれた。各施策の進捗具合に応じて今後折に触れ注目を浴びることが想定され、これらテーマに属する銘柄群は継続マークが必要だ。値動きの軽い中小型株を中心に、物流DXでは物流代行の関通 <9326> [東証G]やイー・ロジット <9327> [東証S]、在庫システムのロジザード <4391> [東証G]、ドローンではACSL <6232> [東証G]やブルーイノベーション <5597> [東証G]、リスキリングでは英会話サービスのプログリット <9560> [東証G]やレアジョブ <6096> [東証S]、オンライン講座のアイデミー <5577> [東証G]などが挙げられる。
花粉症対策では花粉症ワクチンを開発するファンペップ <4881> [東証G]、少花粉杉の植樹事業を手掛けた実績がある山大 <7426> [東証S]が関心を集めやすい。国民皆歯科健診では、この施策が22年に初めて骨太の方針に盛り込まれた際に歯科材料大手の松風 <7979> [東証P]、歯科医院向け通販の歯愛メディカル <3540> [東証S]などが物色人気化しておりチェックしておきたい。
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