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―物流網維持へ社会的要請強まる、トラックドライバー時間外労働規制も後押し―
「宅配ロボット」とも呼ばれる自動配送ロボットの公道走行が4月1日から解禁された。飲食店内での配膳ロボットなどを除けば、まだまだ先のことだと考えられていたロボットの実生活での活用は、今回の解禁に伴い一気に拡大する可能性がある。巨大な潜在成長力を持つ自動配送ロボットに注目したい。
●物流の「2024年問題」への対応が課題に
例年、4月は新たなルールや取り組みがスタートする。今春の目玉の一つは「自動配送ロボットの公道走行解禁」だろう。ちなみに自動配送ロボットとは、物流拠点や小売店舗などの荷物・商品を配送するロボットのことを指す。2019年に官民協議会が立ち上げられたが、それから数年を経てついに同ロボットは実社会で活用されることになった。経済産業省とロボットデリバリー協会は今春、自動配送ロボットの関連事業者8社のロボット8台を経産省敷地内に集め、実際の走行・活用シーンを披露する実演イベントを合同開催し、ロボットとともに歩む社会の未来を多くの人に予見させた。
今回、このタイミングで自動配送ロボットの公道走行が解禁されたことには、大きな意味があるとみられている。1年後の24年4月から「トラックドライバーの時間外労働の上限規制」が適用されるからだ。物流各社は、まさに人材の確保、業務の効率化などに猛スピードで取り組んでいるところだ。物流の「2024年問題」とも呼ばれるトラックドライバーの時間外労働の上限規制だが、この規制が適用されれば、トラックドライバーの労働環境は改善され、配送の安全性も同時に高まることが期待される。その一方、現状の物流網はドライバーの過重労働のおかげで成り立っているといえる面もあるだけに、この規制が与える影響は大きい。
●人口減少下での物流網維持にも寄与する
そこで経産省と国土交通省は4月を「再配達削減PR月間」と位置づけ、再配達削減に向けた取り組みを強めていく方針だ。「トラックドライバーの時間外労働の上限規制」のほか、人口減少やそれにともなう過疎地域の増加などの問題も相まって、現在の物流網を維持する全体コストが飛躍的に引き上がっていくことが見込まれる。こうした社会背景のなか、自動配送ロボットに対する期待感は日増しに大きなものになっている。
●「小さな歩行者」のようなロボットを目にする日は近い
ちなみに、公道を走行できる自動配送ロボットは「遠隔操作型小型車」に該当するもので、具体的には(1)車体の大きさの上限は長さ120センチ×幅70センチ×高さ120センチ=現行の電動車椅子相当(2)最高速度は時速6キロ(3)通行場所は歩行者と同じく歩道・路側帯・道路の右側端を使い、交通ルールも歩行者とほぼ同じだが、歩行者には進路を譲らなければならない(4)事業者は管轄の公安委員会への事前届け出が必要――といった各種要件が定められている。各社が開発した遠隔操作型小型車は、ZMP(東京都文京区)や楽天グループ <4755> [東証P]、ホンダ <7267> [東証P]、ゼンリン <9474> [東証P]などが所属しているロボットデリバリー協会が安全基準への適合を審査し、合格証を交付する流れになっている。
コロナ禍での商品の宅配サービスの利用に対して不安を覚えていた人でも「非接触」や「プライバシー面を含めた安全性」に優れたロボットによる自動配送であれば、気軽に試してみたいと感じるかもしれない。人通りの多い道での運用は少し先の話にはなるかもしれないが、将来的にはまるで“可愛い小さな歩行者”のような自動配送ロボットが、我々の生活に溶け込んでいくことは容易に想像がつく。そこで今回は「自動配送ロボット」関連で、自動配送ロボットの機体やセンサーなどの電子部品、システムなどソリューション面に焦点を当て関連銘柄を取り上げた。
●アイサンテクやTIS、バーチャレクなどに注目
アイサンテクノロジー <4667> [東証S]~同社は測量及び高精度位置情報に関するノウハウを有しており、自動運転 の実現に必要な高精度3次元地図や高速通信網を生かした遠隔制御型自動運転の実用化へ向けた開発を推進。また、世界初の自動運転のオープンソースソフトウェア「Autoware」を開発した自動運転スタートアップのティアフォー(名古屋市中村区)に出資している。ティアフォーが開発した小型完全自動運転電気自動車(EV)「マイリー」、物流用AIモビリティー「ロージー」などを活用した自動配送ロボットサービスの実証実験を積み重ねてきた。
TIS <3626> [東証P]~複数のロボット を統合管理するプラットフォーム「Robotic Base」を手掛ける。同社は22年7月に中国の自動運転EVスタートアップ「PIX Moving」(貴州省)と資本・業務提携しており、PIX Movingと共同で、屋外の自動運転EVによって運ばれた荷物を屋内の配送ロボットが受け取り、施設内の利用者に渡すなど、利便性の高いサービスの提供を目指す。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」に参画し、自動走行ロボットによる配送サービスの実証実験を行っている。
川崎重工業 <7012> [東証P]~同社のロボティクス技術と四輪バギーが持つ走破性を組み合わせた配送ロボットを開発。配送のみならず、荷物の受け渡しや軽作業も行えるよう開発を進めており、物流分野だけでなく、製造業や医療・介護など、幅広い分野への適用も目指している。また、屋外での使用では歩道を走行してのデリバリーサービスなどを想定している。
バーチャレクス・ホールディングス <6193> [東証G]~23年1月に宅配・配送ロボットDeliRo(デリロ)を手掛けるZMPと協業で、自動配送ロボットの遠隔監視オペレーションに係る業務構築及び実験運用を開始している。同社が持つ非対面(遠隔)接点領域での経験値や知見を利活用する形で、機体カメラ映像を遠隔で監視し、歩行者の安全性や効率運行などを担保する。
京セラ <6971> [東証P]~子会社の京セラコミュニケーションシステムは公道を走る自動走行ロボットの開発に取り組んでおり、無人自動配送ロボットを活用した個人向け配送サービスの検証などを行っている。また、同社は広域な工業団地での共同利用・効率的な配送を想定し、従来よりも大型・高速なロボットにサイズの異なる複数のロッカーを搭載して車道を走行する実証実験を行っており、地域内の小売店商品や企業間輸送貨物の集荷などの需要が期待されそうだ。
浜松ホトニクス <6965> [東証P]~周囲の距離を計測しながら自動走行するために用いられるレーザや光センサー、MEMSミラーなどを手掛けている。また、約75億円を投じて新貝工場に新棟を建設し、25年に自動運転用センサー「LiDAR(ライダー)」の量産を行う計画。LiDARは自動運転の「目」とも呼ばれ、車両の周辺検知に利用される。
ホンダ <7267> [東証P]~2000年にヒューマノイドロボットASIMOを発表するなど、かねてからロボット研究に注力している。21年7月から楽天グループと共同でNEDOの技術開発事業に参加し自動配送ロボットの走行実証実験を行っている。同社が開発した自動搬送機能を備えた車台をベースに、楽天グループの配送用ボックスを搭載。動力源は同社の交換式電池を採用し、充電を待つことなく配送サービスを継続できる。
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