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芙蓉リース Research Memo(4):事業本来の業績を示す「差引利益」は増益基調で推移(2)

配信元:フィスコ
投稿:2023/07/18 14:34
*14:34JST 芙蓉リース Research Memo(4):事業本来の業績を示す「差引利益」は増益基調で推移(2) ■芙蓉総合リース<8424>の決算動向

4. 事業分野別の業績及び活動実績
(1) モビリティ(RT分野)
2023年3月期末の「営業資産残高」は1,713億円(前期末比72億円増)となり、ROAも3.4%(前期は1.9%)に改善し、経常利益は57億円(前期比24億円増)と大幅な増益を実現した。グループ拡大※1に伴って「営業資産残高」は増加したものの、世界的な半導体不足を背景とする新車納期の長期化で国内は伸び悩んだようだ。ROAが大きく改善したのは、中古車マーケットの高騰による売却益の上振れや海外関連会社の持分法投資利益の寄与が大きい。活動面では、EVワンストップサービスの提案※2やフォークリフトリースパッケージ「GREEN FORK」※3の構築など、新規ビジネス領域へのアプローチに取り組んだ。

※1 独立系オペレーティング・リース会社であるPacific Rim Capital(PRC)を連結子会社化。グローバルベースでの事業拡大に狙い。
※2 詳細は、後述する成長戦略「各事業分野における基本戦略と目標」を参照。
※3 再生バッテリーの特許技術を保有する(株)イグアスとの連携による取り組みである。再生バッテリーの活用により、バッテリーコストとCO2排出量を大幅に削減できる。


(2) エネルギー環境(AT分野)
2023年3月期末の「営業資産残高」は1,262億円(前期末比358億円増)になり、ROAも1.9%(前期は1.8%)に若干改善したことから、経常利益は20億円(前期比4億円増)となった。国内外での再生可能エネルギー事業が伸長したほか、非財務目標である「再エネ発電容量」も前期末比197MW増の515MW※1(中期経営計画目標値は1,000MW)と順調に伸びた。活動面でも、英国での洋上風力発電事業※2や欧州経済領域での再エネファンド(太陽光、風力、水力等)※3など、グローバルプレイヤーとの関係強化により海外での事業拡大に向けて弾みを付けた。また、蓄電池関連事業の拡大を目指し、エネルギー会社を含む幅広いパートナーとの共創案件の実現にも注力した。

※1 開発中案件を含むと657MW(前期末比210MW増)となっている。
※2 約85億ポンドの運用資産を有する英国Equitix Investment Management Ltd.が運用する投資ファンドへの出資によるもの。同社としては洋上風力発電事業への初めての参画となるが、稼働済みの洋上風力発電所を出資対象としていることから開発リスクはない。
※3 グループ全体で約147億ユーロ(2022年6月末時点)の資産を運用・管理するドイツのAquila Capital Holding GmbHの再エネファンドへの出資契約締結によるもの。


(3) BPO/ICT(AT分野)
2023年3月期末の経常利益は35億円(前期比1億円増)と増益を確保した。高まるBPOニーズの取り込みや2021年10月に連結化したWorkVisionとの連携により、BPOとICTの双方で着実な成長を実現した。また、非財務目標である顧客の業務量削減時間(2022年3月期比)についても18万時間(中期経営計画目標値は100万時間)と上々の滑り出しだった。活動面でも、M&Aによる機能強化※1やアライアンス先との連携※2を通じて、事業領域も着実に拡大した。

※1 BtoB企業向け動画制作・配信事業で国内トップレベルの実績を誇る(株)ヒューマンセントリックやITファシリティサービス事業を手掛けるエクストリーク(株)を連結子会社化した。
※2 BPO分野では、NTTコミュニケーションズ(株)(経緯・請求書トータルソリューション)、安田倉庫<9324>(文書保管サービス、オフィス移転サービス)、東京電力エナジーパートナー(株)(公共料金の請求書おまとめサービス)、Dynabook (株)(PC-LCMサービス)、ICT分野では、沖電気工業<6703>グループのOKIクロステック(株)(IT業務のアウトソーシング)との業務提携により連携を図っている。


(4) ヘルスケア(AT分野)
2023年3月期末の「営業資産残高」は879億円(前期末比14億円減)になった一方、ROAは2.0%とほぼ横ばいで推移し、経常利益も18億円と前期並みの水準を確保した。政府等による金融支援を通じた資金ニーズの充足により、診療・介護報酬債権ファクタリングの積み上げが伸び悩んだ。一方、非財務目標の1つである「高齢者介護施設(新規提供室数)」は553室と順調に進捗するとともに、中期経営計画目標値1,000室から1,330室に上方修正した。活動面でも、ヘルスケアBPOのビジネスモデル構築※1や再生・事業承継ニーズを有する事業者向けソリューション※2でも成果を残すことができた。

※1 障がい者雇用支援サービス、並びに精神科に特化した在宅医療サービスを提供する(株)JSHと資本業務協定を締結するなど、ヘルスケアBPOのビジネスモデル構築に向けて体制を整えた。
※2 (株)七十七銀行・日本経営グループと共同で、日本初となる地域特化型ヘルスケアファンドを組成した


(5) 不動産(GP分野)
2023年3月期末の「営業資産残高」は10,305億円(前期末比956億円増)になり、ROAは2.3%とほぼ横ばいで推移したことから、経常利益は222億円(前期比19億円増)に拡大した。大口不動産リースのEXIT(契約終了)による影響があったものの、事業全体での資産の積み上げで打ち返し大幅な増益を実現した。アライアンス先との連携により、開発型案件※を含む案件パイプラインも確保できた。引き続き、国内外の不動産投資家の積極投資継続による不動産価格の上昇や、サプライチェーンの混乱等に伴う建築費高騰を踏まえ、リスクリターンを意識した事業運営を実施する方針である。

※代表的なものとして、SWCC<5805>(旧 昭和電線ケーブルシステム(株))の相模原事業所敷地における複合施設建設計画や札幌駅前の市街地再開発事業などがある。


(6) 航空機(GP分野)
2023年3月期末の「営業資産残高」は2,271億円(前期末比317億円増)になり、ROAも2.0%(前期は0.7%)に大きく改善したことから、経常利益は42億円(前期比27億円増)に拡大した。新規実行5機、売却1機と回転型ビジネスは順調に滑り出し、資産の積み上げにも成功した。「自社保有機」は49機(前期末比4機増)となっている。今後に向けても北米エアラインを中心に受注が拡大しているようだ(2024年3月期以降順次実行予定)。ROAが大きく改善したのは、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)に起因する貸倒関連費用が減少したことや円安効果に加え、保有機体の減価償却期間の変更による減価償却費の減少も影響したようだ。活動面でも、国内線(米国)を中心に旅客需要が回復している米国エアラインとの取引拡大やヤマトグループへのフレイター(貨物専用機)のリース提供などの成果を残すことができた。

5. 2023年3月期の総括
2023年3月期を総括すると、業績面では注力する事業分野が総じて順調に拡大し、計画を上回る増益を実現した。活動面についても中期経営計画の初年度として各方面で様々な布石を打ち、定量・定性の両面で順調なスタートを切ったと評価できる。特に国内外のパートナー各社との協業などにより、「モビリティ」「エネルギー環境」「BPO/ICT」「ヘルスケア」などで、事業領域の拡大に向けた動きが加速してきたところは注目すべきポイントと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

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配信元: フィスコ
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