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三菱HCキャ Research Memo(1):ビジネスモデル変革で新たな社会価値の創出に取り組む大手リース会社(1)

配信元:フィスコ
投稿:2023/10/16 12:01
*12:01JST 三菱HCキャ Research Memo(1):ビジネスモデル変革で新たな社会価値の創出に取り組む大手リース会社(1) ■要約

三菱HCキャピタル<8593>は、三菱UFJリース(株)と日立キャピタル(株)が2021年4月に経営統合した大手リース会社である。「10年後のありたい姿」に「未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター」を掲げ、銀行・商社系とメーカー系のリース会社の融合、M&A・アライアンスの積極活用などにより、従来のリース業、金融サービスの枠を超えた高付加価値サービスへのシフトなど、ビジネスモデル・事業ポートフォリオの変革や先進的なアセットビジネスを展開。さらに、気候変動をはじめとするさまざまな社会的課題の解決や新たな社会価値の創出に取り組んでいる。

1. リース取引を中心に金融サービスを展開、強固な顧客基盤などに強み
同社は、リース取引を中心に、さまざまな金融サービスを展開している。さらに、近年では、ビジネスモデル変革の一環として、再生可能エネルギーや不動産分野などの事業利益の獲得も積極化している。2023年3月期のセグメント別資産残高構成比は、カスタマーソリューションが33.5%、海外地域が27.5%、環境エネルギー※が4.5%、航空が17.0%、ロジスティクスが11.4%、不動産が4.6%、モビリティが0.4%、調整額が1.1%だった。一部セグメントにおける資産の売却益や減損、貸倒関連費用などの計上によって変動するが、リース・ローン取引が中心のカスタマーソリューションと海外地域が安定的な収益の柱となっている。特徴・強みとしては、三菱グループ及び日立グループという我が国屈指の企業グループを中心とする強固な顧客基盤、優良アセットの積み上げを可能としてきた事業基盤がある。さらに、徹底したリスク管理をもって収益の安定成長を可能とする分散された事業ポートフォリオや業界トップ水準の外部信用格付に基づく資金調達力、有形・無形の多様な資産を扱うリース取引及び金融サービスに関する豊富な知識・ノウハウを持つ人材基盤などがある。

※2024年3月期より名称を環境エネルギー・インフラから変更。2023年3月期の実績は「環境エネルギー・インフラ」、その他においては変更後の「環境エネルギー」と記載する。


2. 2023年3月期は計画を上回る大幅な増益で着地
2023年3月期の連結業績は、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比16.9%増の1,162億円だった。2022年3月期に特別利益として計上した政策保有株式の大口売却益の剥落などがマイナス要因だったが、海外地域の伸長、米国の大手海上コンテナリース会社CAI International,Inc(以下、CAI)の利益貢献、貸倒関連費用の減少、環境エネルギー・インフラにおける持分法投資利益の増加などにより、計画を上回る大幅な増益で着地した。親会社株主に帰属する当期純利益(同168億円増)の要因別増減分析は、事業成長(CAIの利益貢献、米州子会社の事業伸長など)で同259億円増、貸倒関連費用の減少(カスタマーソリューションで前期に計上した大口貸倒関連費用の反動減、航空や海外地域における費用減少など)で同215億円増、経費増加(CAIの通期連結化による増加、海外拠点を中心とした営業活動強化に伴う増加など)で同186億円減、特別損益(前期に計上した政策保有株式の大口売却益の剥落など)で同229億円減、その他(税金費用減少など)で同109億円増だった。なお、契約実行高は前期比5.3%増の2兆6,406億円で、期末セグメント資産残高は前期末比3.1%増の9兆6,329億円となった。

3. 2024年3月期も増益を計画
2024年3月期の連結業績予想は、親会社株主に帰属する当期純利益を前期比3.2%増の1,200億円としている。親会社株主に帰属する当期純利益(同37億円増)の要因別増減分析の予想は、事業成長(旅客需要回復を背景とする航空事業の伸長など)で同280億円増、貸倒関連費用は横ばい、経費増加(「10年後のありたい姿」の実現に向けた投資、営業活動推進に伴う費用の増加など)で同110億円減、特別損益(既存事業領域の再構築・再定義に係る費用の計上など)で同20億円減、その他(前期に計上した税金費用の減額効果剥落など)で同110億円減としている。なお、統合当初に経営統合プロセス(PMI)として定めたタスク(同社本体における組織構造の平易化、同一地域・業種におけるグループ会社の統合など)は予定どおり2023年3月末までに終了。経営資源シナジーは、2023年3月期までに50億円程度発現しており、2024年3月期までに当初計画どおり100億円発現の見込みとしている。なお、「10年後のありたい姿」の実現に向けた投資、既存事業領域の再構築・再定義に係る費用の計上、前期に計上した税金費用の減額効果剥落などを考慮、小幅な増益にとどまる予想としている。

4. 「ビジネスモデルの進化・積層化」戦略で高付加価値サービスの拡大、新ビジネスの開発を推進
同社は、2022年5月、10年後のありたい姿として「未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター」を掲げ、その実現に向けて、SX(サステナビリティ変革)、DX(デジタル変革)、及び事業ポートフォリオ変革を掛け合わせたCX(企業変革)の推進という「経営の中長期的方向性」を示した。そして、2023年5月、「経営の中長期的方向性」を踏まえた、2023~2025年度中期経営計画「2025中計」を公表した。「2025中計」は、「10年後のありたい姿」の実現に向けた3次(ホップ・ステップ・ジャンプ)にわたる中期経営計画のホップに位置付け、財務目標としては、最終年度にあたる2026年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益を1,600億円、純利益ベースのROAを1.5%程度、ROEを10.0%程度とした。さらに、「2025中計」期間中の配当性向は40%以上、財務の健全性としてA格の維持を目標とした。事業戦略としては、(1)カスタマーファイナンス、(2)アセットファイナンスにとどまらず、これらの強固な顧客基盤を維持・拡大しつつ、サービス収益も加えた(3)ファイナンス+サービス、データを活用した(4)データ活用プラットフォームサービス、さらには、アセットを活用した(5)アセット活用事業を展開。従来のリース業や金融サービスの枠を超えた高付加価値サービスの拡大、新ビジネスの開発などを推進し、ビジネスモデルの進化・積層化を進めていく。そのうえで、高い収益性が期待できる(3)~(5)を中長期的な成長ドライバーに育成し、アセットを大きく拡大することなく、純利益の成長を図り、ROAとROEの向上につなげる方針としている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

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配信元: フィスコ
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