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Jトラストのニュース
■Jトラスト<8508>の業績動向
1. 2021年12月期の業績概要
2021年12月期における世界経済は、長期化する米中の対立問題や世界的な景気減速懸念等に加えて、世界的なコロナ禍に伴う経済活動の停滞の影響により、極めて厳しい状況にあった。このような環境下で同社グループは、事業ポートフォリオについて抜本的な見直しが求められているとの認識の下、コロナ禍収束後をも見据えて、積極的に事業基盤の強化や持続的な成長の実現に向けた取り組みを行ってきた。
以上の結果、2021年12月期の営業収益は42,325百万円(前期比7.5%増)、営業利益は5,260百万円(前期は2,403百万円の損失)、税引前利益は5,899百万円(同619百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,123百万円(同5,342百万円の損失)と、増収及び各利益は大幅な黒字転換を果たした。一方、2021年5月に上方修正した計画に対しては、営業収益及び営業利益はおおむね計画どおりに着地したものの、税引前利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益については、NB(JT親愛貯蓄銀行やNexus Cardの親会社)の株式売却益が計画を19億円下回ったことに加え、NB株式評価損を24億円計上したことから、計画を下回って着地した。しかしながら、これらの損失は一過性のものである。2021年12月期は、事業ポートフォリオ再編といったこれまでの取り組みの成果により営業利益が黒字転換し、2022年12期以降の利益成長に弾みをつけた決算であったと評価できる。
2. セグメント別業績
同社グループは、日本で構築したビジネスモデルを海外展開することで、アジアの総合ファイナンシャルグループへと成長を遂げてきた。現在、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業の4事業セグメントを展開するが、メインとなる金融3事業が営業収益全体の97.6%を占める。2021年12月期は、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業で利益を確保したものの、東南アジア金融事業では損失を計上した。また投資事業は、訴訟回収金の計上もあり大幅増益となった。
(1) 日本金融事業
日本金融事業には、信用保証業務を中心に事業展開する(株)日本保証、サービサー業務(債権回収事業)のパルティール債権回収(株)などがある。国内の消費者金融市場が縮小するなか、2015年9月には実質的に無担保ローン事業から撤退し、不動産関連の保証業務及び債権回収業務に注力する体制を整備した。日本金融事業は、同社グループの強みが生かせる分野を中心に緩やかに成長し安定的な利益を確保することで、同社グループ全体の利益を下支えする役割を担ってきた。なお、2020年12月期には事業ポートフォリオ見直しの一環としてJトラストカードを売却したほか、2021年12月期にはJTキャピタルを譲渡した。しかしながら、同社とNBの株式交換により、2022年4月以降はJトラストカード(現 Nexus Card)が再び傘下となる予定だ。
2021年12月期は、保証業務及び債権回収業務ともに引き続き順調に推移したことにより、営業収益は9,781百万円(前期比2.6%減)、営業利益は4,588百万円(同5.6%減)となった。債権買取を積極的に行ったことに加えて回収も好調に推移したことにより利息収益が増加したものの、債権保証残高の減少に伴い保証料収益が減少したことや債権売却益が減少したこと等により、減収となった。利益面では、債権回収で貸倒引当金繰入が増加したこと等により減益となった。ただし、営業収益、営業利益ともに安定推移し、営業利益率も金融3事業の中で最も高水準であることから、全体の業績を下支えする主力事業であることに変わりはない。
日本金融事業では、アパートローン保証を安定的な利益基盤とする一方で、中古アパートローン保証、海外不動産担保ローン保証、クラウドファンディング保証など、新たな保証商品への多角化を図っている。2021年12月末の債務保証残高合計は2,042億円と、コロナ禍でもおおむね横ばいで推移した。アパートローン保証残高は1,547億円で、以前のような勢いはないが、ローンの期間は20年~30年超と長期のため、その間は保証料収入が安定的に入ってくる。また、アパートローンのうち、2020年11月から開始した中古アパートローンの保証残高は順調に拡大しており、2021年12月末には44億円に達している。一方、2018年から取り扱いが本格化した海外不動産担保ローンは、保証提携先銀行の拡大に伴い保証残高が増加傾向にあったものの、コロナ禍の影響もあり、2021年12月末で94億円にとどまっている。
不動産関連保証業務における同社グループの強みは、市場ニーズに合わせたオーダーメイド型商品の開発力と、独自の不動産ローン審査力である。同社グループが不動産の評価・審査と信用保証を担い、銀行が融資を行っているが、地域金融機関と提携することで賃貸住宅ローン(アパートローン)保証業務を中心に保証残高は右肩上がりで増加を続けてきた。しかし、大手銀行の不正融資問題をきっかけに、アパートローン保証は以前のような勢いはない状況だ。
また、同社が保証する物件は、東名阪福の各地域の都市部、徒歩10分程度の駅近物件に集中しており、債務保証を行っている賃貸住宅の入居率は95%以上を維持している。保証料が高いその他の保証(個人事業主への融資保証等)は近年競争が激化していることから、取り扱いを抑え、保証料が低いものの貸倒リスクが小さいアパートローンへの有担保保証を増やし、ボリュームでカバーすることで利益を確保してきた。
同社では、様々な取り組みに着手することで、保証残高の大幅な拡大を目指している。新たな保証商品としてクラウドファンディング保証を開始しており、2021年12月には保証取扱額が50億円を突破したほか、2021年11月からは医師を対象としたマンションローン(商品名「マンションローン(医師限定)」)に対する保証取扱を開始している。
サービサー(債権回収)事業のうち、パルティール債権回収にて取り扱う債権については回収が好調であったほか、2021年12月に戦略的に債権の売却を実施したことから、2021年12月末の請求債権残高は7,852億円に減少した。日本保証が保有する簿外債権については、回収が計画を上回っていることもあり、債権残高は1,266億円に若干減少した。この結果、サービサー事業全体の請求債権残高は約9,100億円に減少したが、依然として高水準を維持している。
債権回収業務における同社グループの強みは、多様な債権回収事業会社出身者のノウハウを結集した国内トップクラスの回収力にある。回収力の強さは、金融機関やカード会社などから債権を買い取る際の入札競争においても優位となり、その結果、事業拡大という好循環につながる。今後もこの強みを生かした事業拡大を進めていく方針だ。また、こうした国内事業での債権回収力の強さは、海外事業でも生かされていると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 2021年12月期の業績概要
2021年12月期における世界経済は、長期化する米中の対立問題や世界的な景気減速懸念等に加えて、世界的なコロナ禍に伴う経済活動の停滞の影響により、極めて厳しい状況にあった。このような環境下で同社グループは、事業ポートフォリオについて抜本的な見直しが求められているとの認識の下、コロナ禍収束後をも見据えて、積極的に事業基盤の強化や持続的な成長の実現に向けた取り組みを行ってきた。
以上の結果、2021年12月期の営業収益は42,325百万円(前期比7.5%増)、営業利益は5,260百万円(前期は2,403百万円の損失)、税引前利益は5,899百万円(同619百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,123百万円(同5,342百万円の損失)と、増収及び各利益は大幅な黒字転換を果たした。一方、2021年5月に上方修正した計画に対しては、営業収益及び営業利益はおおむね計画どおりに着地したものの、税引前利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益については、NB(JT親愛貯蓄銀行やNexus Cardの親会社)の株式売却益が計画を19億円下回ったことに加え、NB株式評価損を24億円計上したことから、計画を下回って着地した。しかしながら、これらの損失は一過性のものである。2021年12月期は、事業ポートフォリオ再編といったこれまでの取り組みの成果により営業利益が黒字転換し、2022年12期以降の利益成長に弾みをつけた決算であったと評価できる。
2. セグメント別業績
同社グループは、日本で構築したビジネスモデルを海外展開することで、アジアの総合ファイナンシャルグループへと成長を遂げてきた。現在、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業の4事業セグメントを展開するが、メインとなる金融3事業が営業収益全体の97.6%を占める。2021年12月期は、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業で利益を確保したものの、東南アジア金融事業では損失を計上した。また投資事業は、訴訟回収金の計上もあり大幅増益となった。
(1) 日本金融事業
日本金融事業には、信用保証業務を中心に事業展開する(株)日本保証、サービサー業務(債権回収事業)のパルティール債権回収(株)などがある。国内の消費者金融市場が縮小するなか、2015年9月には実質的に無担保ローン事業から撤退し、不動産関連の保証業務及び債権回収業務に注力する体制を整備した。日本金融事業は、同社グループの強みが生かせる分野を中心に緩やかに成長し安定的な利益を確保することで、同社グループ全体の利益を下支えする役割を担ってきた。なお、2020年12月期には事業ポートフォリオ見直しの一環としてJトラストカードを売却したほか、2021年12月期にはJTキャピタルを譲渡した。しかしながら、同社とNBの株式交換により、2022年4月以降はJトラストカード(現 Nexus Card)が再び傘下となる予定だ。
2021年12月期は、保証業務及び債権回収業務ともに引き続き順調に推移したことにより、営業収益は9,781百万円(前期比2.6%減)、営業利益は4,588百万円(同5.6%減)となった。債権買取を積極的に行ったことに加えて回収も好調に推移したことにより利息収益が増加したものの、債権保証残高の減少に伴い保証料収益が減少したことや債権売却益が減少したこと等により、減収となった。利益面では、債権回収で貸倒引当金繰入が増加したこと等により減益となった。ただし、営業収益、営業利益ともに安定推移し、営業利益率も金融3事業の中で最も高水準であることから、全体の業績を下支えする主力事業であることに変わりはない。
日本金融事業では、アパートローン保証を安定的な利益基盤とする一方で、中古アパートローン保証、海外不動産担保ローン保証、クラウドファンディング保証など、新たな保証商品への多角化を図っている。2021年12月末の債務保証残高合計は2,042億円と、コロナ禍でもおおむね横ばいで推移した。アパートローン保証残高は1,547億円で、以前のような勢いはないが、ローンの期間は20年~30年超と長期のため、その間は保証料収入が安定的に入ってくる。また、アパートローンのうち、2020年11月から開始した中古アパートローンの保証残高は順調に拡大しており、2021年12月末には44億円に達している。一方、2018年から取り扱いが本格化した海外不動産担保ローンは、保証提携先銀行の拡大に伴い保証残高が増加傾向にあったものの、コロナ禍の影響もあり、2021年12月末で94億円にとどまっている。
不動産関連保証業務における同社グループの強みは、市場ニーズに合わせたオーダーメイド型商品の開発力と、独自の不動産ローン審査力である。同社グループが不動産の評価・審査と信用保証を担い、銀行が融資を行っているが、地域金融機関と提携することで賃貸住宅ローン(アパートローン)保証業務を中心に保証残高は右肩上がりで増加を続けてきた。しかし、大手銀行の不正融資問題をきっかけに、アパートローン保証は以前のような勢いはない状況だ。
また、同社が保証する物件は、東名阪福の各地域の都市部、徒歩10分程度の駅近物件に集中しており、債務保証を行っている賃貸住宅の入居率は95%以上を維持している。保証料が高いその他の保証(個人事業主への融資保証等)は近年競争が激化していることから、取り扱いを抑え、保証料が低いものの貸倒リスクが小さいアパートローンへの有担保保証を増やし、ボリュームでカバーすることで利益を確保してきた。
同社では、様々な取り組みに着手することで、保証残高の大幅な拡大を目指している。新たな保証商品としてクラウドファンディング保証を開始しており、2021年12月には保証取扱額が50億円を突破したほか、2021年11月からは医師を対象としたマンションローン(商品名「マンションローン(医師限定)」)に対する保証取扱を開始している。
サービサー(債権回収)事業のうち、パルティール債権回収にて取り扱う債権については回収が好調であったほか、2021年12月に戦略的に債権の売却を実施したことから、2021年12月末の請求債権残高は7,852億円に減少した。日本保証が保有する簿外債権については、回収が計画を上回っていることもあり、債権残高は1,266億円に若干減少した。この結果、サービサー事業全体の請求債権残高は約9,100億円に減少したが、依然として高水準を維持している。
債権回収業務における同社グループの強みは、多様な債権回収事業会社出身者のノウハウを結集した国内トップクラスの回収力にある。回収力の強さは、金融機関やカード会社などから債権を買い取る際の入札競争においても優位となり、その結果、事業拡大という好循環につながる。今後もこの強みを生かした事業拡大を進めていく方針だ。また、こうした国内事業での債権回収力の強さは、海外事業でも生かされていると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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