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芙蓉総合リースのニュース
*16:07JST 芙蓉リース Research Memo(5):2024年3月期の経常利益は7期連続で過去最高益を更新(3)
■芙蓉総合リース<8424>の決算動向
(2) エネルギー環境(AT分野)
2024年3月期末の営業資産残高は1,820億円(前期末比558億円増)と大きく拡大した一方、ROAは1.1%(前期は1.9%)に低下し、経常利益は17億円(前期比4億円減)に減少した。なお、減益となったのは、外貨の金利上昇に加え、事業領域拡大に伴うコストが先行したことが理由である。英国での洋上風力発電事業や欧州経済領域での再生可能エネルギーファンド(太陽光、風力、水力等)など、グローバルプレイヤーとの協業により再生可能エネルギーが大きく伸長した。また、非財務目標である「再エネ発電容量」も705MW(前期末比190MW増)※1と順調に伸びている。活動面でも、投資機会が豊富な欧州での事業拡大に向けて、英国現地法人(ロンドン)を設置したほか、新たなアライアンス先との取り組みも拡大した※2。また、国内では、大和エナジー・インフラ(株)、アストマックス<7162>との共同事業として、大規模系統用蓄電池関連事業※3に参画したほか、戸田建設グループ、エナリスグループとの共同事業により、オフサイトコーポレートPPA※4に取り組むなど、二次エネルギー等の新領域でも一定の成果を残すことができた。
※1 開発中の案件を含むと995MW(前期末比338MW増)と大きく拡大し、中期経営計画目標値(1,000MW)の達成も見えてきた。
※2 再エネ分野で世界最大級の運用資産を有するCopenhagen Infrastructure Partnerが運営する再エネ開発ローンファンドへの出資を行った。Equitix Investment Management Ltd.とAquila Capital Holding GmbHに続く海外アライアンス先として、連携強化を通じ、個別案件での協業も展望しているようだ。
※3 電力系統の安定化に向けた事業であり、2025年度の運転開始後は、AIを活用した市場予測等に基づき、卸電力市場や需給調整市場、容量市場での取引を実施する計画である。
※4 事業者が需要家の敷地外に再生可能エネルギー発電設備を設置する取り組み形態であり、戸田建設グループの東和観光開発(株)が運営するリゾートホテル「マリッサリゾート サザンセト周防大島」への電力供給を開始した。
(3) BPO/ICT(AT分野)
2024年3月期の経常利益は44億円(前期比9億円増)に増加した。インボイス制度や電帳法関連需要の取り込みが増益に寄与した。また、Windows10のサポート終了を見据えたPC入替需要を背景にPCレンタル等の受注も拡大しているようだ。今後もグループシナジーによるコンサルティング力の拡充とAI活用などを通した業務効率化を進めることで収益性を高めていく方針である。一方、非財務目標である「お客様の業務量削減時間(2022年3月期比)」については49万時間(前期は18万時間)と順調に進展している(中期経営計画目標値は100万時間)。また、活動面では、AI技術の活用に向けた業務協定の締結※1のほか、グループ内連携においても様々な動き※2が活発化してきた。
※1 AIを活用した付加価値の高いBPOサービスの提供に向けて、アルゴリズム・AI技術を活用したDXソリューションを提供する燈との業務協定を締結し、DX推進を目的とした複数の社内外向けPoC(概念実証)を共同で実施中である(一部実績化)。
※2 インボイス制度や電帳法改正に伴うシステム導入ニーズに対するWorkVisionとの連携など。
(4) ヘルスケア(AT分野)
2024年3月期末の営業資産残高は874億円(前期末比5億円減)と伸び悩んだ。一方、ROAは2.1%(前期は2.0%)に若干改善し、経常利益は18億円と横ばいで推移した。政府等による金融支援を通じた資金ニーズの充足により、診療・介護報酬債権ファクタリングの積み上げが進まなかったことが停滞した理由の1つである。ただ、福祉医療機構によるコロナ融資の返済が2025年から本格化することから、今後は資金需要の拡大が見込まれる。一方、非財務目標の1つである「高齢者介護施設(新規提供室数)」は763室(前期末比210室増)に増加した(中期経営計画目標値は1,330室)。活動面でも、七十七銀行<8341>及び日本経営グループとの共同で組成した地域特化型ヘルスケアファンドによる第1号案件※1の実行や、SFCによる歯科衛生士人材紹介サービス事業※2の開始などに取り組んだ。
※1 福島県の医療法人が進める病院施設の建て替えに対して、不動産流動化スキームを活用した支援を提供するもの。
※2 歯科衛生士不足に悩む歯科医院と、柔軟な働き方を実現したい歯科衛生士をマッチングする人材紹介サービスである。全国歯科クリニックの約40%との取引実績があり、高い業界シェアを有するSFCの事業基盤を活用し、歯科医院の課題解決に取り組む方針である。
(5) 不動産(GP分野)
2024年3月期末の営業資産残高は10,939億円(前期末比634億円増)に拡大し、ROAも2.9%(前期は2.3%)に改善したことから、経常利益は312億円(前期比90億円増)と大きく増加した。前期からの資産の積み上げや大口の売却益の計上などが大幅な増益に寄与した。また、パートナー企業との協働や幅広いディールソースからの引き合いにより、資産の積み上げについても想定を上回るペースで進んでいる。引き続き不動産マーケットを取り巻く環境の変化を機敏に捉え、リスクリターンを意識した案件の取り込みを図る。
(6) 航空機(GP分野)
2024年3月期末の営業資産残高は3,079億円(前期末比808億円増)に大きく拡大した一方、ROAは保守的な判断による減損損失の計上等により1.9%(前期は2.0%)に若干低下した。経常利益は51億円(前期比9億円増)に増加した。「自社保有機」が58機(前期末9機増)、その他(管理機体等)も57機(同2機増)に順調に積み上がったことや、エアラインからのリース料回収の正常化も進んだことが大幅な増益に寄与した。旅客需要の回復を受け、エアラインからの受注環境は良好であり、さらなる機体数の積み上げを見込む。活動面でも、案件の選別を通じた良質なポートフォリオの構築を継続するとともに、国内外のレッサーや投資家への幅広いアプローチなどを通じて、機動的な機体売却を行う回転型ビジネスの推進による収益力のさらなる向上に取り組んでいる。
5. 2024年3月期の総括
2024年3月期を総括すると、大口の売却益計上や退職給付費用の一時的な減少といった特殊要因によるかさ上げがあったものの、それらを除く実力値ベースでも過去最高益を連続更新したことに加え、将来に対してもさらなる業容拡大に向けた取り組みが各方面で順調に進捗しており、定量・定性両面で評価できる結果と言える。特に、「エネルギー環境」において、海外での再生可能エネルギー事業が大きく拡大しているところや、「モビリティ」におけるEV領域での新しいビジネスモデルの構築、さらには物流領域でのグローバル展開などについては、従来市場の枠を超えたアップサイドのポテンシャルを感じさせる取り組みと評価できる。また、活動面でも、国内外のパートナー各社との協業などにより、各方面で事業拡大に向けた動きが加速してきた。一方、海外アセットの積み上げに伴う外貨調達の増加や国内金利の先高観といった調達サイドの変化については、大きな業績の変動要因として捉えてはいないものの、今後の動向には注意が必要である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<SO>
(2) エネルギー環境(AT分野)
2024年3月期末の営業資産残高は1,820億円(前期末比558億円増)と大きく拡大した一方、ROAは1.1%(前期は1.9%)に低下し、経常利益は17億円(前期比4億円減)に減少した。なお、減益となったのは、外貨の金利上昇に加え、事業領域拡大に伴うコストが先行したことが理由である。英国での洋上風力発電事業や欧州経済領域での再生可能エネルギーファンド(太陽光、風力、水力等)など、グローバルプレイヤーとの協業により再生可能エネルギーが大きく伸長した。また、非財務目標である「再エネ発電容量」も705MW(前期末比190MW増)※1と順調に伸びている。活動面でも、投資機会が豊富な欧州での事業拡大に向けて、英国現地法人(ロンドン)を設置したほか、新たなアライアンス先との取り組みも拡大した※2。また、国内では、大和エナジー・インフラ(株)、アストマックス<7162>との共同事業として、大規模系統用蓄電池関連事業※3に参画したほか、戸田建設グループ、エナリスグループとの共同事業により、オフサイトコーポレートPPA※4に取り組むなど、二次エネルギー等の新領域でも一定の成果を残すことができた。
※1 開発中の案件を含むと995MW(前期末比338MW増)と大きく拡大し、中期経営計画目標値(1,000MW)の達成も見えてきた。
※2 再エネ分野で世界最大級の運用資産を有するCopenhagen Infrastructure Partnerが運営する再エネ開発ローンファンドへの出資を行った。Equitix Investment Management Ltd.とAquila Capital Holding GmbHに続く海外アライアンス先として、連携強化を通じ、個別案件での協業も展望しているようだ。
※3 電力系統の安定化に向けた事業であり、2025年度の運転開始後は、AIを活用した市場予測等に基づき、卸電力市場や需給調整市場、容量市場での取引を実施する計画である。
※4 事業者が需要家の敷地外に再生可能エネルギー発電設備を設置する取り組み形態であり、戸田建設グループの東和観光開発(株)が運営するリゾートホテル「マリッサリゾート サザンセト周防大島」への電力供給を開始した。
(3) BPO/ICT(AT分野)
2024年3月期の経常利益は44億円(前期比9億円増)に増加した。インボイス制度や電帳法関連需要の取り込みが増益に寄与した。また、Windows10のサポート終了を見据えたPC入替需要を背景にPCレンタル等の受注も拡大しているようだ。今後もグループシナジーによるコンサルティング力の拡充とAI活用などを通した業務効率化を進めることで収益性を高めていく方針である。一方、非財務目標である「お客様の業務量削減時間(2022年3月期比)」については49万時間(前期は18万時間)と順調に進展している(中期経営計画目標値は100万時間)。また、活動面では、AI技術の活用に向けた業務協定の締結※1のほか、グループ内連携においても様々な動き※2が活発化してきた。
※1 AIを活用した付加価値の高いBPOサービスの提供に向けて、アルゴリズム・AI技術を活用したDXソリューションを提供する燈との業務協定を締結し、DX推進を目的とした複数の社内外向けPoC(概念実証)を共同で実施中である(一部実績化)。
※2 インボイス制度や電帳法改正に伴うシステム導入ニーズに対するWorkVisionとの連携など。
(4) ヘルスケア(AT分野)
2024年3月期末の営業資産残高は874億円(前期末比5億円減)と伸び悩んだ。一方、ROAは2.1%(前期は2.0%)に若干改善し、経常利益は18億円と横ばいで推移した。政府等による金融支援を通じた資金ニーズの充足により、診療・介護報酬債権ファクタリングの積み上げが進まなかったことが停滞した理由の1つである。ただ、福祉医療機構によるコロナ融資の返済が2025年から本格化することから、今後は資金需要の拡大が見込まれる。一方、非財務目標の1つである「高齢者介護施設(新規提供室数)」は763室(前期末比210室増)に増加した(中期経営計画目標値は1,330室)。活動面でも、七十七銀行<8341>及び日本経営グループとの共同で組成した地域特化型ヘルスケアファンドによる第1号案件※1の実行や、SFCによる歯科衛生士人材紹介サービス事業※2の開始などに取り組んだ。
※1 福島県の医療法人が進める病院施設の建て替えに対して、不動産流動化スキームを活用した支援を提供するもの。
※2 歯科衛生士不足に悩む歯科医院と、柔軟な働き方を実現したい歯科衛生士をマッチングする人材紹介サービスである。全国歯科クリニックの約40%との取引実績があり、高い業界シェアを有するSFCの事業基盤を活用し、歯科医院の課題解決に取り組む方針である。
(5) 不動産(GP分野)
2024年3月期末の営業資産残高は10,939億円(前期末比634億円増)に拡大し、ROAも2.9%(前期は2.3%)に改善したことから、経常利益は312億円(前期比90億円増)と大きく増加した。前期からの資産の積み上げや大口の売却益の計上などが大幅な増益に寄与した。また、パートナー企業との協働や幅広いディールソースからの引き合いにより、資産の積み上げについても想定を上回るペースで進んでいる。引き続き不動産マーケットを取り巻く環境の変化を機敏に捉え、リスクリターンを意識した案件の取り込みを図る。
(6) 航空機(GP分野)
2024年3月期末の営業資産残高は3,079億円(前期末比808億円増)に大きく拡大した一方、ROAは保守的な判断による減損損失の計上等により1.9%(前期は2.0%)に若干低下した。経常利益は51億円(前期比9億円増)に増加した。「自社保有機」が58機(前期末9機増)、その他(管理機体等)も57機(同2機増)に順調に積み上がったことや、エアラインからのリース料回収の正常化も進んだことが大幅な増益に寄与した。旅客需要の回復を受け、エアラインからの受注環境は良好であり、さらなる機体数の積み上げを見込む。活動面でも、案件の選別を通じた良質なポートフォリオの構築を継続するとともに、国内外のレッサーや投資家への幅広いアプローチなどを通じて、機動的な機体売却を行う回転型ビジネスの推進による収益力のさらなる向上に取り組んでいる。
5. 2024年3月期の総括
2024年3月期を総括すると、大口の売却益計上や退職給付費用の一時的な減少といった特殊要因によるかさ上げがあったものの、それらを除く実力値ベースでも過去最高益を連続更新したことに加え、将来に対してもさらなる業容拡大に向けた取り組みが各方面で順調に進捗しており、定量・定性両面で評価できる結果と言える。特に、「エネルギー環境」において、海外での再生可能エネルギー事業が大きく拡大しているところや、「モビリティ」におけるEV領域での新しいビジネスモデルの構築、さらには物流領域でのグローバル展開などについては、従来市場の枠を超えたアップサイドのポテンシャルを感じさせる取り組みと評価できる。また、活動面でも、国内外のパートナー各社との協業などにより、各方面で事業拡大に向けた動きが加速してきた。一方、海外アセットの積み上げに伴う外貨調達の増加や国内金利の先高観といった調達サイドの変化については、大きな業績の変動要因として捉えてはいないものの、今後の動向には注意が必要である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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