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新春3大テーマを追う(1)防衛 「戦後安保政策は大転換期に突入」 <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2023/01/02 19:00

―防衛費は5年後に倍増へ、防衛装備の増強で需要拡大への期待高まる―

 日本の防衛政策が大転換を迎えようとしている。政府は昨年12月16日の臨時閣議で、今後10年程度の外交・防衛政策の指針となる「国家安全保障戦略」など3文書を決定した。自衛目的で敵の弾道ミサイル攻撃に対処するため、発射基地などを攻撃する「反撃能力」の保有を明記し、戦後の日本の安全保障政策を大きく転換した。また政府は、2023年度からの5年間の防衛費をこれまでの約1.6倍となる総額約43兆円に増額する方針だ。こうした状況下にあって株式市場でも「防衛」関連の銘柄が改めて注目されている。

●防衛3文書が閣議決定

 今回閣議決定された防衛3文書は、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」で、13年に策定された国家安保戦略の改定は初めてとなる。改定された国家安全保障戦略では、「我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境下にある」との認識を示し、反撃能力の保有が明記されたほか、宇宙・サイバー・電磁波など新領域への対応、南西地域の防衛体制強化を図る意向も示した。また、防衛力の水準を規定した従来の「防衛計画の大綱」は、防衛の目標を設定する「国家防衛戦略」に、5年間の防衛費の見積もりや主要装備を示した「中期防衛力整備計画」(中期防)は、5年間の防衛費の総額や約10年先の自衛隊の体制を示す「防衛力整備計画」に変更された。

●防衛費は5年後に倍増へ

 日本を取り巻く地政学リスクは、かつてないほど高まっている。北朝鮮のミサイル開発の加速に加えて、中国による軍備の拡張と海洋進出の継続、ロシアによるウクライナ侵略などは日本だけでなく、国際的な地政学的リスクにほかならない。特にロシアによるウクライナ侵略は、相手国の首脳が決断さえすれば、国際社会による歯止めもきかず、武力行使が実際に行われるという現実を突きつけられたことになる。しかも、ロシア連邦安全保障会議のアレクサンドル・ベネディクトフ副書記は「第3次世界大戦」や「核戦争」といったワードも持ち出し、国際社会を脅迫している。台湾有事の可能性などを考慮すると、世論調査で日本が「反撃能力」を保有する是非について賛成と答える人が増えているのもうなずける。

 こうした状況下、「防衛力整備計画」により、23年度から5年間の防衛費の総額は約43兆円が予定され、現中期防(約27兆4700億円)の約1.6倍に増額される。23年度からの5年間で、GDPの1%程度から2%程度に増額する方針で、22年度は約5兆4000億円だった防衛費が、5年後の27年度には約11兆円(関連費を含む)と倍増することになる。23年度の防衛費は過去最大の6兆8219億円となる。反撃能力保有に向けて、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」購入費2113億円を計上する。

●防衛装備品納入の「プライム企業」

 日本の防衛装備に関連する企業は、防衛省から直接受注を受ける三菱重工業 <7011> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]など「プライム企業」と呼ばれる大手を筆頭に数千社に及ぶとされる。また市場規模は、財務省によるとおよそ3兆円とされ、このうち防衛省が大型装備などを購入する中央調達額は21年度で1兆8031億円に上る。

 防衛装備庁の21年度の調達実績によると、調達実績のうち契約高の最も大きいのは三菱重の4591億円で、調達額全体に占める割合は25.5%となっている。護衛艦や潜水艦、次期戦闘機といった大型の装備品から地対艦誘導弾、魚雷、地対空誘導弾ペトリオットなど多岐にわたり、日本の防衛関連の代表格といえる。

 次に契約高が大きいのは川重の2071億円(全体に占める割合11.5%)でP-1固定翼哨戒機、C-2輸送機、スタンド・オフ電子戦機などを納入。三菱電機 <6503> [東証P]は966億円(同5.4%)で中距離地対空誘導弾、非貫通式潜望鏡、センサマスト、多機能レーダーなどを納入している。

●市場で動意しやすい銘柄にも注目

 続く大手納入企業には、自動警戒管制システムなどを納入したNEC <6701> [東証P]や統合IP伝送システムなどを納入した富士通 <6702> [東証P]、基地防空用地対空誘導弾などを納入した東芝 <6502> [東証P]傘下の東芝インフラシステムズ、次期戦闘機や次期戦闘機用エンジンシステムを納入したIHI <7013> [東証P]、多用途ヘリコプターUH-2を納入したSUBARU <7270> [東証P]、掃海艦ソーナーシステムなどを納入した日立製作所 <6501> [東証P]、えい航式パッシブソーナーなどを納入した沖電気工業 <6703> [東証P]などが名を連ねている。

 また、上位企業ではないものの株式市場で動意しやすい銘柄として細谷火工 <4274> [東証S]やカーリットホールディングス <4275> [東証P]、豊和工業 <6203> [東証P]、石川製作所 <6208> [東証S]、興研 <7963> [東証S]、重松製作所 <7980> [東証S]なども注目したい。


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株探ニュース
配信元: 株探
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