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萩原工業のニュース
■事業概要
(3) 戦略製品群
萩原工業<7856>は、トップシェア、高い収益性、成長性などの観点から戦略製品を選定し、拡販に注力している。現在は、「バルチップ」「粘着テープ原反」「その他高機能化製品」「フィルムスリッター」が相当する。全社の売上総利益率は29.1%(2018年10月期)だが、戦略製品群は30%超となる。2018年10月期の戦略製品群の売上高構成比は、穀物カバー用ラミクロスの浸透が一段落したことで、前期比2.7ポイント減の46.6%となった。2019年10月期は、子会社化した東洋平成ポリマーが前期の3ヶ月から12ヶ月とフルに寄与するため、戦略製品群の売上高は前期比ほぼ横ばいの12,383百万円を想定するものの、構成比は42.7%へ低下することになる。東洋平成ポリマーの製品ラインナップの中にも、戦略製品に該当するものがあれば、今後追加することになるだろう。
(4) 戦略製品「バルチップ」
「バルチップ」(BarChip)は、期待の戦略製品だ。同社が長年培ってきたプラスチック繊維延伸・製造技術から開発された、モルタル・コンクリート用ポリプロピレン補強繊維である。同社がバルチップを発売して20年以上経過したことから、参入者が出てきた。サプライヤーが増えることは、市場拡大を加速させるメリットがある。補強繊維の国内市場では、同社が約7~8割の圧倒的なシェアを持つ。同社の強みは、性能対比でのコストアドバンテージ、太さの違うファイバーを持つ品ぞろえと用途開発など総合力にある。
建築用途では、バルチップが物流施設の土間床用コンクリートに使用されてから20余年が経過しており、その耐用性が現場で実証された。わずらわしいワイヤーメッシュの設置が省略でき、コスト削減と工期短縮が両立する。工事現場の最優先事項は人手確保であり、バルチップを混入するメッシュレスコンクリートは省人化・省力化の点で評価が高い。
土木用では、オーストラリアや南米等の鉱山や日本の東京外環道路が知られている。2003年に、NEXCO(旧日本道路公団)の「トンネル施工管理要領」においてトンネル覆工コンクリート用補強繊維「パルチップJK」の使用が可能になった。コンクリートに添加した繊維の架橋効果により、コンクリート片の落下を防止し、第三者被害の予防に寄与することが確認された。鉄道の軌道用として枕木の高さ調整コンクリートの補強、コンクリート道路の補強、トンネル覆工用モルタル・コンクリートのはく落防止・ひび割れ抑制補強に使用されている。衝撃波が生じる鉄道トンネルの出入口に使用される確率が高い。海外では、ハンガリーの路面電車の軌道やスペインで下水道用コンクリート・セグメントに使用されている。地中に埋設後の補修工事が困難なため、耐久性を高める同社製品が採用されている。
東京外環道路の工事はピークを越えたものの、バルチップの用途開発が進んでいることから、国内では高水準の需要が続くと予想される。今後の大型プロジェクトでは、リニア中央新幹線が期待される。一般的に想定されるのは、軌道及びトンネル覆工コンクリートの補強材への使用である。全ルート438キロメートルの中央新幹線は、2027年に品川−名古屋間、2037年に名古屋−大阪間の開通が予定されている。品川−名古屋間を最速40分で結ぶ予定のため、直線的ルートを最高時速505キロで走ることを計画している。用地確保が困難な東京、名古屋、大阪の大都市圏では、公共性が高いことから地権者の補償が必要ない「大深度地下」を活用する。品川−名古屋間のうちおよそ250キロメートル、同ルートの8割以上がトンネルとなる。山梨県甲府市付近から南アルプス(赤石山脈)を経て名古屋市付近に至る直線ルートを取る。難工事や保守作業が困難な個所での補強材の使用が期待される。
バルチップの新しい用途開発に、ハイブリッドプレストレストコンクリート(Hybrid Prestressed Concrete:HPC)がある。沖縄は、戦後の木材不足や台風など風土的理由から鉄筋コンクリートの家が圧倒的に多い。コンクリート補強材の鉄筋は、塩害に弱い。錆びる心配のない代替品として炭素繊維が用いられるが、歪みに強いものの割れやすい。この弱点を、炭素繊維とバルチップ、膨脹材などの混入により解消し、「薄い」「軽い」「曲げに強い」コンクリートが出来上がった。耐久性が高く、加工や運搬がしやすいコンクリート製品は、デザイン性を重視した住宅の建築を可能にする。沖縄発の最新製品が、コンクリートの「厚い」「重い」「硬い」という業界の常識を変える。2018年3月に完成した琉球銀行牧港支店の社屋に、世界初の超薄型コンクリート製の日除けボード(塀)が施工された。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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(3) 戦略製品群
萩原工業<7856>は、トップシェア、高い収益性、成長性などの観点から戦略製品を選定し、拡販に注力している。現在は、「バルチップ」「粘着テープ原反」「その他高機能化製品」「フィルムスリッター」が相当する。全社の売上総利益率は29.1%(2018年10月期)だが、戦略製品群は30%超となる。2018年10月期の戦略製品群の売上高構成比は、穀物カバー用ラミクロスの浸透が一段落したことで、前期比2.7ポイント減の46.6%となった。2019年10月期は、子会社化した東洋平成ポリマーが前期の3ヶ月から12ヶ月とフルに寄与するため、戦略製品群の売上高は前期比ほぼ横ばいの12,383百万円を想定するものの、構成比は42.7%へ低下することになる。東洋平成ポリマーの製品ラインナップの中にも、戦略製品に該当するものがあれば、今後追加することになるだろう。
(4) 戦略製品「バルチップ」
「バルチップ」(BarChip)は、期待の戦略製品だ。同社が長年培ってきたプラスチック繊維延伸・製造技術から開発された、モルタル・コンクリート用ポリプロピレン補強繊維である。同社がバルチップを発売して20年以上経過したことから、参入者が出てきた。サプライヤーが増えることは、市場拡大を加速させるメリットがある。補強繊維の国内市場では、同社が約7~8割の圧倒的なシェアを持つ。同社の強みは、性能対比でのコストアドバンテージ、太さの違うファイバーを持つ品ぞろえと用途開発など総合力にある。
建築用途では、バルチップが物流施設の土間床用コンクリートに使用されてから20余年が経過しており、その耐用性が現場で実証された。わずらわしいワイヤーメッシュの設置が省略でき、コスト削減と工期短縮が両立する。工事現場の最優先事項は人手確保であり、バルチップを混入するメッシュレスコンクリートは省人化・省力化の点で評価が高い。
土木用では、オーストラリアや南米等の鉱山や日本の東京外環道路が知られている。2003年に、NEXCO(旧日本道路公団)の「トンネル施工管理要領」においてトンネル覆工コンクリート用補強繊維「パルチップJK」の使用が可能になった。コンクリートに添加した繊維の架橋効果により、コンクリート片の落下を防止し、第三者被害の予防に寄与することが確認された。鉄道の軌道用として枕木の高さ調整コンクリートの補強、コンクリート道路の補強、トンネル覆工用モルタル・コンクリートのはく落防止・ひび割れ抑制補強に使用されている。衝撃波が生じる鉄道トンネルの出入口に使用される確率が高い。海外では、ハンガリーの路面電車の軌道やスペインで下水道用コンクリート・セグメントに使用されている。地中に埋設後の補修工事が困難なため、耐久性を高める同社製品が採用されている。
東京外環道路の工事はピークを越えたものの、バルチップの用途開発が進んでいることから、国内では高水準の需要が続くと予想される。今後の大型プロジェクトでは、リニア中央新幹線が期待される。一般的に想定されるのは、軌道及びトンネル覆工コンクリートの補強材への使用である。全ルート438キロメートルの中央新幹線は、2027年に品川−名古屋間、2037年に名古屋−大阪間の開通が予定されている。品川−名古屋間を最速40分で結ぶ予定のため、直線的ルートを最高時速505キロで走ることを計画している。用地確保が困難な東京、名古屋、大阪の大都市圏では、公共性が高いことから地権者の補償が必要ない「大深度地下」を活用する。品川−名古屋間のうちおよそ250キロメートル、同ルートの8割以上がトンネルとなる。山梨県甲府市付近から南アルプス(赤石山脈)を経て名古屋市付近に至る直線ルートを取る。難工事や保守作業が困難な個所での補強材の使用が期待される。
バルチップの新しい用途開発に、ハイブリッドプレストレストコンクリート(Hybrid Prestressed Concrete:HPC)がある。沖縄は、戦後の木材不足や台風など風土的理由から鉄筋コンクリートの家が圧倒的に多い。コンクリート補強材の鉄筋は、塩害に弱い。錆びる心配のない代替品として炭素繊維が用いられるが、歪みに強いものの割れやすい。この弱点を、炭素繊維とバルチップ、膨脹材などの混入により解消し、「薄い」「軽い」「曲げに強い」コンクリートが出来上がった。耐久性が高く、加工や運搬がしやすいコンクリート製品は、デザイン性を重視した住宅の建築を可能にする。沖縄発の最新製品が、コンクリートの「厚い」「重い」「硬い」という業界の常識を変える。2018年3月に完成した琉球銀行牧港支店の社屋に、世界初の超薄型コンクリート製の日除けボード(塀)が施工された。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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