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―「2025年問題」接近、人材不足が深刻化する介護業界を救え―
介護業界の人材不足が深刻化している。追い打ちをかけるのが、第1次ベビーブームに生まれた団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる、いわゆる「2025年問題」だ。要介護人口が急激に増加することが予想され、タイムリミットが迫るなかロボットや人工知能(AI)などテクノロジーの導入により、職員不足を打開しようとする動きが加速している。2025年問題から10年後の35年には、介護崩壊を指摘する声も出るなど危機感が高まっており、「介護テック(介護+テクノロジー)」に長寿大国ニッポンの命運がかかる状況だ。関連株のいまを追った。
●成長市場に布石、関連企業は虎視眈々
株式市場では、国内に買い手掛かり材料が少ないなか、デジタルトランスフォーメーション(DX)や電気自動車(EV)関連などの最先端技術にスポットライトが当たるが、介護分野においてもテクノロジーの利活用に注目が集まっている。介護業界は、高齢者が一気に増加する状況で介護を担う年代の人口が減少するという、まさに負のスパイラルに陥っている。人材確保が難しいなか、最先端テクノロジーの積極的な活用による業務の効率化が頼みの綱といえる。こうした厳しい状況を背景にして、介護に関連するハイテク機器の需要拡大が予想されており成長市場に向ける企業の視線も熱い。
介護テック関連としては、ロボットスーツ「HAL」のCYBERDYNE <7779> [東証M]や、持ち分法適用会社が「マッスルスーツ」を展開する菊池製作所 <3444> [JQ]などがロボット分野での成長期待を背景に投資家の関心を集めてきた。ただ“介護ロボ”という近未来的なテーマが浮上してきた半面、株式市場においてはシステム面や周辺製品の一見地味ともいえる分野にはあまり日が当たることはなかった。しかし、DX時代を迎えたいま、介護ソリューションを評価する地盤が、ようやく整ってきた。
注目が集まる介護テック市場だが、そのすそ野は広い。厚生労働省は「ロボット技術の介護利用における重点分野」として、移乗介助、移動支援、排泄支援、見守り・コミュニケーション、入浴支援、介護業務支援を挙げており、これら6分野に向けて、関連企業は新製品を続々と投入している。成長市場に布石を打つことで、業容拡大へとつなげる構えだ。
●注目される「見守り」「業務効率化支援」
調査会社の富士経済は、介護関連製品・サービスの国内市場を調査し「注目高齢者施設・住宅&介護関連市場の商圏分析と将来性 2021」にまとめた。このなかで、ITやAI、ロボティクスなどの最先端技術を活用した介護関連製品・サービスを対象とする介護テック関連については、「人材不足や業務過多、重労働といった課題の解決を目的に、介護テックの活用が活発になっており、長期的に市場は拡大が期待される」と分析。加えて、「基幹システムはタブレット端末を活用した介護記録のニーズの高まりや高齢者施設の増加により導入が進んでいる。このほか効率化支援システムや、RPAやAIによる自動化システムなども伸長が期待される」という。なかでも、注目市場として「見守りシステム」を取り上げており、施設用で20年には19年比18.3%増の71億円を見込む。また、「業務効率化支援システム」についても同15%増の23億円を見込み、市場の着実な拡大を予想している。
●注目テーマに乗るTホライゾン、ワイエイシイ
こうした「見守りシステム」市場の急成長を見据え、この分野へ活躍領域を広げる企業が増加している。
テクノホライゾン <6629> [JQ]は、昨年12月に子会社が手掛ける睡眠見守りシステム「みまもり~ふ」が、コニカミノルタQOLソリューションズ(東京都千代田区)の介護施設向けサービスと連携したと発表。今回の連携により、介護施設入居者の睡眠状態や心拍数・呼吸数をリアルタイムに高精度で確認し、体調に合わせた適切なタイミングでケアが可能になるという。また、睡眠状態のデータを蓄積、解析することで、睡眠の改善に役立てられ、要介護者の睡眠の質の向上につながるという。22年3月期の営業利益は、前期比23.9%増の30億円と業績急成長トレンドが継続する見通し。2月には1000円近辺だった株価は上昇波動に乗り、今月2日には約2倍となる1942円まで買われ年初来高値を更新した。ただ、ここにきては利益確定売りに押される格好で1800円水準に位置している。今月2日にはクラウド型授業支援ソフトのサービスを開始したのに加え、電子黒板「xSync Board」21年度モデルが7月中旬に発売予定にあるなど、「GIGAスクール構想」関連の一角としても注目は怠れない。
子会社ワイエイシイエレックスが、施設型見守り支援システム「介護ロボットMi-Ru(ミール)」を展開しているワイエイシイホールディングス <6298> にも目を配っておきたい。利用者がベッドから離れようとした時に素早く検知、通知、モニタリング、声掛けをするシステムだ。ワイエイシイHDは半導体関連事業を中核とするが、5G関連やAI、IoT、EVといった時流に乗ったニーズを捉え、22年3月期の営業利益は前期比2.2倍の16億円を計画している。株価は、5月13日に直近安値857円をつけたあと急速に切り返し、前週末には上げ足を速め1100円台を回復。きょうは、一時1140円まで買われた場面もあったが上げ一服となっている。
●変貌リコーは見守りでも攻勢
ここ、デジタルサービス企業への変身に向けた構造改革を急速に進めるリコー <7752> も、見守り分野に力を注いでいる。同社はミネベアミツミ <6479> と18年に「ベッドセンサーシステム」の共同事業開発契約を締結しているが、今年3月にはラインアップを拡充し、ベッド脚下に設置するだけで参考体重を測定・離床アラームで見守る「ベッドセンサーシステム ベーシック」をミネベアミツミから発売した。4月には、介護福祉施設の統合見守りシステム「リコーけあマルシェ」を提供開始するなど、介護福祉現場のDXを実現するソリューションの開発にも余念がない。21年3月期の連結業績は営業損益段階で454億2900万円の赤字となったが、22年3月期は急回復に転じ500億円の黒字化を見込んでいる。こうした変貌期待を背景に株価は上昇一途。年初には600円台まで売り込まれた株価だが、きょうは1400円台に乗せている。
●大塚商会、介護のDX化を支援
独立系SI大手の大塚商会 <4768> は、やさしい手(東京都目黒区)、ワイズマン(岩手県盛岡市)と介護事業者の科学的介護情報システム(LIFE)活用に向け、介護分野におけるDXの基盤作りを支援するソリューションプログラム「科学的介護総合支援プログラム キボウ」を共同で開発。大塚商会が6月1日に発売した。介護業界では、今年4月から厚生労働省が推進するLIFEの活用がスタート。しかし、介護現場ではいまだに各種介護情報システムと出力書類を併用して情報の管理・運用を行っており、LIFEを活用するためには業務フローの見直しや介護のDX化が必要なことが発売の背景にある。株価は5月24日に6090円まで買われ年初来高値を更新。その後上昇一服も、じわり6000円台をにらむ。
●活躍のフィールドは広がるカナミックN
カナミックネットワーク <3939> にも目を配っておきたい。同社は医療・介護業界に特化したクラウドサービスを展開しており、加速する高齢化社会を背景に折に触れて株式市場でも熱い視線が送られてきた。株価は冴えない展開が続いている。5月中旬には566円まで売られ年初来安値を更新、ようやく反転したもののここにきて再び調整を強いられている。今年4月の介護保険法改正を見越した顧客需要の伸びに伴いカナミッククラウドサービスが好調に推移、21年9月期は営業利益で前期比22.2%増の8億円を予想。株価は下値模索が続くものの、超高齢社会突入で活躍のフィールドは大きく広がっている。
●フラベッドH、介護分野で存在感増す
進化を続ける介護ベッド分野にも注目したい。フランスベッドホールディングス <7840> は、「自動寝返り支援ベッド」や昼は高く夜は低くなり就寝時の転落の心配をなくす「超低床フロアーベッド」、そしてベッド内蔵の「見守りケアシステムM-2」など新しい発想で介護を支援している。また、昨年にはロングライフホールディング <4355> [JQ]子会社で福祉用具販売やレンタルを提供するカシダスを買収するなど、福祉分野でも存在感を増す。21年3月期の連結営業利益は前の期比30.2%増の32億4600万円で着地。22年3月期も前期比13.9%増と2ケタ増益を確保できる見通しだ。こうしたベッド分野では、パラマウントベッドホールディングス <7817> やプラッツ <7813> [東証M]なども引き続きマークしたい。
株探ニュース
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