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―資源の効率利用と付加価値を最大化、政府は今夏にも基本計画を改定へ―
政府は廃棄される製品や原材料を再利用する「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の実現に向け、今夏にも循環型社会形成推進基本計画を改定する見通しだ。大量生産・大量消費型の経済社会活動は、大量廃棄型の社会を形成し、健全な物質循環を阻害するほか、気候変動問題、天然資源の枯渇、大規模な資源採取による生物多様性の破壊などさまざまな環境問題に密接に関係。また、世界的な資源需要や地政学的なリスクの高まりも憂慮すべき事態で、資源の効率的・循環的な利用と付加価値の最大化を図る循環経済への移行が喫緊の課題となっており、関連銘柄に注目してみたい。
●計画案で数値目標示す
環境省は6月10日に中央環境審議会循環型社会部会を開き、第5次循環型社会形成推進基本計画(案)について検討を行った。計画案では循環型社会の全体像を把握し、その向上を図るための物質フロー(モノの流れ)指標として、従来の循環基本計画に引き続き「資源生産性(GDPなどの経済指標を生産のために投入された資源の量で割って求める指標)」「循環利用率」「最終処分量」の数値目標が設定される見通し。具体的には2030年度を目標年次に「資源生産性:約60万円/トン」「1人当たり天然資源消費量:約11トン/人・年」「再生可能資源及び循環資源の投入割合:約34%」「入口側の循環利用率:約19%」「出口側の循環利用率:約44%」「最終処分量:約1100万トン/年」を掲げる予定で、1人1日当たりのゴミ焼却量についても全国での目標値を示すとしている。
官民を挙げたさまざまな取り組みにより、国内の循環経済関連ビジネス(リサイクル素材に関連する再資源の商品化やリース、レンタルなど)の市場規模は、2000年の約40兆円から20年には約50兆円に拡大しており、政府は30年までに80兆円以上にするという目標に向けてグリーントランスフォーメーション(GX)への投資を活用するなどして循環経済への移行を推進する構え。産業競争力強化、経済安全保障、地方創生、質の高い暮らしの実現によるウェルビーイングの向上にもつながる循環経済への移行を進めることは、関係者が一丸となって取り組むべき重要な課題で、第5次基本計画は「循環経済への国家戦略」と位置づけられている。
●各企業の取り組み活発化
こうしたなか、アミタホールディングス <2195> [東証G]子会社のアミタは、ハーチ(東京都中央区)と「サーキュラーデザイン」の国内での社会浸透に向けて協働・連携を進めている。サーキュラーデザインは、サーキュラーエコノミー推進のために、製品やサービス、ビジネスモデル、地域運営のあり方などを循環型にしていくためのデザイン手法で、両社はビジネス変革を考えるワークショップの共同開発などを通じて市場の活性化を目指す。
サカタインクス <4633> [東証P]は印刷やパッケージ産業における廃棄物の 再資源化に向けたサーキュラーエコノミーの実現を目指しており、使用済みのインキや溶剤、金属製容器、プラスチック、老朽化し廃却となった生産設備などを対象として、廃棄物回収と資源再生、再資源化された再生材の品質確認を実施することで、これら一連のサイクルの有効性について確認を進めている。
メルカリ <4385> [東証P]は、ヤクルト本社 <2267> [東証P]グループのヤクルト山陽、及び広島県安芸高田市・三次市と連携し、地域で回収した“まだ使える不要品”をEコマースプラットフォーム「メルカリShops」で販売する実証実験を開始。実施期間は25年3月までを予定しており、地域内のリユース活性化と地域循環の新たなモデル構築に取り組む。
モリタホールディングス <6455> [東証P]グループのモリタ環境テックは、5月から移動式切断機「トラスホッパー」を販売している。簡易設置・移設が可能なことから解体現場、港湾、災害現場などで直接処理を行うことができ、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルにつながることが期待される。
このほかでは、大手が手掛けていないような扱いにくい廃棄物や極微量の含有物から貴金属を回収する三和油化工業 <4125> [東証S]、収集運搬から最終処分までを請け負う一貫処理体制を構築しているミダックホールディングス <6564> [東証P]、貴金属リサイクルが主体の松田産業 <7456> [東証P]、鉱山で産出されたイリジウムパウダーを溶解・加工し製品化する技術とリサイクルを中心とした高純度化技術を持つフルヤ金属 <7826> [東証P]、廃棄物処理・再資源化事業や資源リサイクル事業を展開するTREホールディングス <9247> [東証P]などが関連銘柄として挙げられる。
●再生プラ関連株にも注目
また、経済産業省が6月27日に公表した「成長志向型の資源自律経済戦略の実現に向けた制度見直しに関する中間とりまとめ(案)」では、事業者に再生プラスチックの利用計画の策定を義務づけることなどが盛り込まれており、これに関連する銘柄からも目が離せない。
リファインバースグループ <7375> [東証G]は6月17日、持続可能な製品の国際的な認証制度のひとつである「ISCC PLUS認証」を、油化ケミカルリサイクルの原料となる廃プラスチックの収集事業者として国内で初めて取得したと発表。これにより、国際的に認証されたサプライチェーンによる再生可能な資源の供給が可能になるという。
Hamee <3134> [東証S]は5月30日、自社が運営するリサイクルサービス「ParallelPlastics(パラレルプラスティックス)」で、再生プラスチック取引所の試験運用を開始したと発表。企業間の需要と供給をつなぎ、プラスチックの有効活用を推進する考えだ。
マイクロ波化学 <9227> [東証G]は5月29日、連続運転可能なマイクロ波を用いたケミカルリサイクルの実証機を大阪事業所に導入したことを明らかにした。同社は廃棄プラスチックをマイクロ波により熱分解し、基礎化学品に戻して新たな製品の原料とするケミカルリサイクル技術の開発を進めており、この実証機はこれまでに蓄積してきた技術を更に高度化し、「小型分散型」「連続式」の技術形態を検証することを目的に開発したものだという。
これ以外では、1日当たり最大300トンの廃プラスチック処理能力を誇る施設を持つサニックス <4651> [東証S]、プラスチックリサイクル事業を手掛けるイボキン <5699> [東証S]、判別が難しい黒色を含むプラスチック樹脂の種類を高精度で選別できる機器の受注を始めたキヤノン <7751> [東証P]などが注目される。
株探ニュース
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