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ムサシ Research Memo(7):成長する選挙関連ビジネスをベースに、様々な事業の拡大で持続的成長を目指す(2)

配信元:フィスコ
投稿:2021/01/20 15:27
ムサシ<7521>の中長期成長戦略

2. 選挙関連事業
選挙関連の市場に対しては“成熟市場”というイメージもあるが、弊社では“成長市場”だと捉えている。そう考える理由は、国政選挙の有無で年ごとの市場規模が大きく変動するなかにあっても、peak-to-peakで見れば右肩上がりで推移しているためだ。

この要因はいろいろ考えられるが、もっとも大きいのは省力化(省人化)ニーズの高まりであり、これは投票業務と開票業務の双方に共通した要因だ。投票業務については期日前投票の増加や有権者年齢引き下げなどが背景にある。一方で開票業務については、迅速かつ正確な開票作業へのニーズと、それと相反する人件費削減の社会的要請が背景にあると考えられる。

さらに、現在のコロナ禍においても同事業の市場拡大が明らかになりつつあることは注目すべきだ。今期は7月の東京都知事選挙をはじめ、春以降に予定されていた地方選挙はコロナ禍においても予定どおり実施された。そのなかで、選挙を運営する自治体はウイルス感染を防止するため、投票所においては投票者にソーシャルディスタンスを守ることへの協力を求めたほか、投票所の入場制限を設けるなどの対策を行った。一方、投票所内では、投票者の投票にかかる時間を短縮するため、投票者の本人確認の迅速化に取り組むとともに、投票用紙を従来の手渡しから機械による交付に改める自治体が増えた。このことは、同社の投票業務管理システムや投票用紙交付機の需要拡大に直結する。

また、開票所においては、自治体の職員が開票作業を行うが、ここでも作業の3密を避けるため開票作業者の削減を行った自治体が数多くあった。そして、人員削減による作業スピードの低下をカバーするため、機械を増設するなど一層の機械化による業務の高効率化を行った。このことは、同社が市場で圧倒的な高いシェアを持つ投票用紙読取分類機や、投票用紙計数機など開票作業向け効率化機器の市場拡大を意味する。

さらにコロナ禍の環境下において、同社は投票所や開票所に向けた感染防止対策用として以下のような新規商材の取り扱いを開始している。

(1) 飛沫感染防止対策として「飛沫防止ガード」
飛沫によるウイルス感染を防ぐための飛沫ブロック用フィルム・アクリル板。前回の東京都知事選挙では、名簿照合係や投票用紙交付係で必須のアイテムとなっており、他の自治体でも同様の動きになっている。

(2) 「Hydro Ag+(ハイドロ エージープラス)」
富士フイルムが開発した抗菌アルコールスプレーで、アルコール除菌し、その乾燥後も銀の成分で抗菌コートされるため、高い抗菌効果が長時間持続するものだ。富士フイルムが長年の銀の研究で培った独自技術を生かして、これまでにない持続除菌を実現した。もともとは医療や介護の現場のために開発されたものだが、同社では選挙の投票所、開票所向けに販売している。

(3) 「ユポサクションタック」
密集・密接防止の注意喚起表示として使用する粘着シート。プリンターなどで簡単に印刷でき、貼ってはがせるシートで投票所での需要が期待できる。

このように、同社の選挙関連事業は、更新需要だけでも安定成長が十分可能と考えられていたが、ウィズ(with)コロナの時代においては、投票者や開票従事者の安全・安心を担保するために不可欠なものとして価値を高め、更なる事業拡大へと進んでいる。

3. 業務用ろ過フィルター事業
この事業は富士フイルムが開発・製造する業務用ろ過フィルター「ミクロフィルター」の販売代理店事業だ。同社は国内市場の総販売代理店の地位にある。このろ過フィルターは食品・飲料、エレクトロニクス(半導体、電子部品等)、医療などの各分野で幅広く利用されている。

富士フイルムのミクロフィルターはこの市場では後発組(先発は主に外資系企業)であるが、独自の非対称膜構造による優れたろ過機能やロングライフ(長寿命)をセールスポイントに着実に販売を伸ばしている。この事業は2018年1月にスタートしたが、売上高は2019年3月期の531百万円から2020年3月期には617百万円へ順調に拡大した。残念ながら足元の販売はコロナの影響で飲食業向けが停滞し足踏みをしているようだが、依然として中長期では注目・注力される製品であるのは変わりない。

4. 画像診断サービス『ひびみっけ』事業
インフラ画像診断サービス『ひびみっけ』は、富士フイルムが医療用画像診断システムの技術を生かして橋梁やトンネルなどの社会インフラの点検をサポートするサービスだ。同社はこれについても販売代理店として地方自治体や検査会社等への営業活動を行っている。主要な営業先の1つが地方自治体となるため、選挙関連ビジネスを通じて全国の地方自治体にパイプを有する同社は、営業部隊の主力として大きな期待がかけられている。

『ひびみっけ』の実体的な収益貢献はこれからだ。インフラ点検業務は現状では近接目視が基本になっているためだ。既に国(国土交通省)は点検業務での画像利用のための準備を進めており、近い将来には『ひびみっけ』を活用できる環境が整ってくると見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)


<NB>
配信元: フィスコ
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