243円
アストマックスのニュース
■要約
アストマックス<7162>は「金融事業」及び「総合エネルギー事業」に従事するグループの持株会社である。同社グループは、個人及び機関投資家等の資金を運用するアセット・マネジメント事業、国内外の主要先物市場で自己資金を運用するディーリング事業、太陽光及び地熱等を活用した発電事業を展開する再生可能エネルギー関連事業、電力取引市場を通じた電力の調達や電力小売事業者への電力供給及び管理システム等の提供を行う電力取引関連事業の4事業を展開している。
1. 2020年3月期の業績概要
2020年3月期は、営業収益11,932百万円(前期比7.3%増)、経常損失185百万円(前期は130百万円の利益)、親会社株式に帰属する当期純利益243百万円(同45.1%増)となった。営業収益の大幅増加は、アセット・マネジメント子会社のアストマックス投信投資顧問(株)(以下、ASTAM)の株式一部追加譲渡に伴う非連結化による減収要因があったものの、電力取引関連事業における電力取引増加や、再生可能エネルギー関連事業での売却目的で保有する太陽光発電設備の譲渡などによる増収要因が上回ったためである。また、経常損失は、電力取引関連事業や再生可能エネルギー関連事業が増益となったものの、ASTAMの非連結化に伴う減益要因が上回ったことによるものである。一方、親会社株式に帰属する当期純利益は、ASTAMの株式売却により特別利益と非支配持分損益が改善したことで、大幅増益となった。以上の結果、期末の自己資本比率は40.0%と高水準を維持し、引き続き高い安全性を確保している。また、前期までの特別配当がなくなったことで、配当金は年間6円に減少したものの、配当性向は31.4%と目標の30%を上回った。加えて、2019年11月~2020年2月には40万株の自己株式取得を実施していることからも、株主還元にも十分配慮していると言えるだろう。
2. 2021年3月期の業績見通し
同社グループでは、業績が経済情勢や市場環境によって大きな影響を受けるため業績予想は開示していないが、4事業すべてにおいて営業収益、セグメント利益を増加させるべく取り組んでいる。2020年3月期に小幅な損失を計上したアセット・マネジメント事業は、低金利環境が続くなか、足元は新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、運用資産残高が減少し報酬率も低下傾向にあるものの、2021年3月期は投資家ニーズを的確に捉える新ファンドの設定や運用の独自性の強化に取り組む。同じく、ディーリング事業も、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延から価格体系が崩れた影響を受け、2020年3月期は損失計上したものの、2021年3月期は国内先物取引所の再編等により、収益力の強化を図る。一方、2020年3月期に最大の利益を計上した再生可能エネルギー関連事業は、国の再生可能エネルギー拡大計画に基づき、同社がこれまで蓄積してきたファイナンス、発電所設計・維持・管理のノウハウ、投資家とのパイプラインを生かして、太陽光発電の拡大を目指す。加えて、地熱発電を含む新規の発電設備開発も着実に進めている。また、2020年3月期より黒字化に転じた電力取引関連事業でも、今後も新電力への切替、小売電力事業者数の増加等の新電力市場の動向を捉え、更なる事業規模拡大を図る計画である。なお、2020年4月10日付で、同社の連結子会社であるアストマックス・トレーディング(株)(以下、ASTRA)は、Just Energy Japan(株)の発行済全株式を取得し、子会社化した。これは、小売電気事業に本格的に参入することで、日本における電力のサプライチェーン全体に事業領域を広げ、より機能的なサービスの提供と収益機会の拡大を図る方針に基づいたものである。
3. 次期中期ビジョン
同社グループでは、2017年3月期から2020年3月期までの4年間を計画期間とする中期ビジョン「Innovation & Governance for 2020」を推進してきた。この中期ビジョンでは、「強固な財務基盤の構築」「収益力・成長力の向上」「人財育成力・組織力の強化」を目指し、数値目標として株主資本(配当後)の水準60億円程度、連結営業収益45億円以上、連結ROE8%以上を掲げた。最終年度である2020年3月期の結果は、営業収益は119億円と目標を大きく上回ったものの、株主資本は54億円、ROEも4.5%で目標未達に終わった。なお、次期中期ビジョンについては、世界経済全体への影響が危惧される新型コロナウイルス感染症の拡大状況を見極める必要もあることを考慮し、計画の策定・公表を延期することとした。しかしながら、次期中期ビジョンが目指す方向性としては、長期的な視点で持続可能な社会の実現を志向し、事業を通じて社会的価値の創出を果たすことがベースになるものと同社では考えている。再生可能エネルギー関連事業及び電力取引関連事業を通じて、次世代のエネルギー供給を担う投資へのファイナンス機能を提供する一方、大学発ベンチャーキャピタルファンドの展開などベンチャー支援の取り組みを強化し、さまざまな角度から社会価値の創出にアプローチしていく方針だ。
■Key Points
・ 金融事業と総合エネルギー事業をコアに、4事業を展開
・ 2020年3月期は、アセット・マネジメント子会社の非連結化が大きく影響
・ 2021年3月期も、4事業すべての増収増益に向けて取り組む
・ 次期中期ビジョンの下、グループの更なる発展を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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アストマックス<7162>は「金融事業」及び「総合エネルギー事業」に従事するグループの持株会社である。同社グループは、個人及び機関投資家等の資金を運用するアセット・マネジメント事業、国内外の主要先物市場で自己資金を運用するディーリング事業、太陽光及び地熱等を活用した発電事業を展開する再生可能エネルギー関連事業、電力取引市場を通じた電力の調達や電力小売事業者への電力供給及び管理システム等の提供を行う電力取引関連事業の4事業を展開している。
1. 2020年3月期の業績概要
2020年3月期は、営業収益11,932百万円(前期比7.3%増)、経常損失185百万円(前期は130百万円の利益)、親会社株式に帰属する当期純利益243百万円(同45.1%増)となった。営業収益の大幅増加は、アセット・マネジメント子会社のアストマックス投信投資顧問(株)(以下、ASTAM)の株式一部追加譲渡に伴う非連結化による減収要因があったものの、電力取引関連事業における電力取引増加や、再生可能エネルギー関連事業での売却目的で保有する太陽光発電設備の譲渡などによる増収要因が上回ったためである。また、経常損失は、電力取引関連事業や再生可能エネルギー関連事業が増益となったものの、ASTAMの非連結化に伴う減益要因が上回ったことによるものである。一方、親会社株式に帰属する当期純利益は、ASTAMの株式売却により特別利益と非支配持分損益が改善したことで、大幅増益となった。以上の結果、期末の自己資本比率は40.0%と高水準を維持し、引き続き高い安全性を確保している。また、前期までの特別配当がなくなったことで、配当金は年間6円に減少したものの、配当性向は31.4%と目標の30%を上回った。加えて、2019年11月~2020年2月には40万株の自己株式取得を実施していることからも、株主還元にも十分配慮していると言えるだろう。
2. 2021年3月期の業績見通し
同社グループでは、業績が経済情勢や市場環境によって大きな影響を受けるため業績予想は開示していないが、4事業すべてにおいて営業収益、セグメント利益を増加させるべく取り組んでいる。2020年3月期に小幅な損失を計上したアセット・マネジメント事業は、低金利環境が続くなか、足元は新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、運用資産残高が減少し報酬率も低下傾向にあるものの、2021年3月期は投資家ニーズを的確に捉える新ファンドの設定や運用の独自性の強化に取り組む。同じく、ディーリング事業も、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延から価格体系が崩れた影響を受け、2020年3月期は損失計上したものの、2021年3月期は国内先物取引所の再編等により、収益力の強化を図る。一方、2020年3月期に最大の利益を計上した再生可能エネルギー関連事業は、国の再生可能エネルギー拡大計画に基づき、同社がこれまで蓄積してきたファイナンス、発電所設計・維持・管理のノウハウ、投資家とのパイプラインを生かして、太陽光発電の拡大を目指す。加えて、地熱発電を含む新規の発電設備開発も着実に進めている。また、2020年3月期より黒字化に転じた電力取引関連事業でも、今後も新電力への切替、小売電力事業者数の増加等の新電力市場の動向を捉え、更なる事業規模拡大を図る計画である。なお、2020年4月10日付で、同社の連結子会社であるアストマックス・トレーディング(株)(以下、ASTRA)は、Just Energy Japan(株)の発行済全株式を取得し、子会社化した。これは、小売電気事業に本格的に参入することで、日本における電力のサプライチェーン全体に事業領域を広げ、より機能的なサービスの提供と収益機会の拡大を図る方針に基づいたものである。
3. 次期中期ビジョン
同社グループでは、2017年3月期から2020年3月期までの4年間を計画期間とする中期ビジョン「Innovation & Governance for 2020」を推進してきた。この中期ビジョンでは、「強固な財務基盤の構築」「収益力・成長力の向上」「人財育成力・組織力の強化」を目指し、数値目標として株主資本(配当後)の水準60億円程度、連結営業収益45億円以上、連結ROE8%以上を掲げた。最終年度である2020年3月期の結果は、営業収益は119億円と目標を大きく上回ったものの、株主資本は54億円、ROEも4.5%で目標未達に終わった。なお、次期中期ビジョンについては、世界経済全体への影響が危惧される新型コロナウイルス感染症の拡大状況を見極める必要もあることを考慮し、計画の策定・公表を延期することとした。しかしながら、次期中期ビジョンが目指す方向性としては、長期的な視点で持続可能な社会の実現を志向し、事業を通じて社会的価値の創出を果たすことがベースになるものと同社では考えている。再生可能エネルギー関連事業及び電力取引関連事業を通じて、次世代のエネルギー供給を担う投資へのファイナンス機能を提供する一方、大学発ベンチャーキャピタルファンドの展開などベンチャー支援の取り組みを強化し、さまざまな角度から社会価値の創出にアプローチしていく方針だ。
■Key Points
・ 金融事業と総合エネルギー事業をコアに、4事業を展開
・ 2020年3月期は、アセット・マネジメント子会社の非連結化が大きく影響
・ 2021年3月期も、4事業すべての増収増益に向けて取り組む
・ 次期中期ビジョンの下、グループの更なる発展を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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