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株式会社ピアラ代表取締役 飛鳥 貴雄氏

脅威の継続率95%、KPI保証の成果報酬型広告マーケティングで躍進するピアラの飛鳥社長に聞く

 

 

会社名 株式会社ピアラ
証券コード 東証マザーズ <7044>
代表者 代表取締役 飛鳥 貴雄(あすか たかお)
略歴 1975年生まれ、愛知県出身。早稲田大学法学部卒。2004年にピアラを設立、代表取締役に就任。マーケティングコミットカンパニーとして業界シェアを拡大し、2018年に東証マザーズ上場。
所在地 東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー29F
設立 2004年3月24日
事業 「ECトランスフォーメーション」をコンセプトに、ビューティ・ヘルス食品領域におけるダイレクトマーケティング事業を支援。
資本金 844百万円
URL https://www.piala.co.jp/

創業の経緯

宮崎善輝氏(株式会社ウィルズ取締役:以下、宮崎):2018年12月東証マザーズ上場、おめでとうございます。早速、創業から今までの経緯をお聞きします。

飛鳥貴雄氏(株式会社 ピアラ代表取締役:以下、飛鳥):当時、インナーウェアの外資メーカーであるトリンプ・インターナショナル・ジャパンに吉越浩一郎という有名な社長がいまして、19年増収増益中でして大変魅力的に感じ新卒入社しました。直営店のマーケティング統括とともに通販の室長を担当し、それから18年ぐらい通販に携わっています。

宮崎:マーケティングと通販はそこからキャリアが始まっているのですね。

飛鳥:そうです。まずは直営店でマーケティングを学びました。直営店のマーケティング統括の中に宣伝部も自分で作り、コストダウンを行ったうえで、「戦略や販促も全て自分のほうでやれるように社内調整をしました。そして、次に通販を立ち上げて、1年で黒字化を達成しました。通販システム構築、流通、販促、受発注、リピートまで経験し、事業責任者としてPLを管理することが出来たことは貴重な経験です。

宮崎:新卒入社のトリンプで驚くほど幅広い経験をされていたのですね。

飛鳥:はい。ブランド立ち上げも経験し、売れるものと売れないものが凄くはっきりしていて、それが大変おもしろく、やはりお客さんに喜んで頂ける企画をやりたいという想いが根本にありました。しかしながら、外資であるトリンプも意外と旧来型の日本企業が持つ特徴を持っていたりするんですね。

宮崎:なるほど。私も外資にいたことがあり、同様の感覚を持ちましたので共感します。

飛鳥:実績を出せば抜擢はされるのですが、組織と自分との関係性にWin-Winで対等な関係性構築が難しいと感じるようになり、独立を意識し始めました。もともとアパレルで独立したかったのですが、当時は今のように投資環境もそれほど充実しておらず、在庫リスクや店舗出店費用を考えると二の足を踏んでしまったわけです。従って、初期投資が抑えられる広告代理業での独立を考えました。メンバは、トリンプで私がバイトから引き上げた従業員と、発注先の代理店にいた先輩とその後輩の4人で始めました。

宮崎:優秀な方が組織におさまりきれずの熱きスタートアップですね。

飛鳥:私の出資金は50万円、総額100万円で始まった会社です。最初の半年、私は給料を貰わずに、ひたすら社員を食わせることだけに集中しました。従って、「何をやるかというよりもやれること」と「低コスト」を念頭にビジネス構築をしました。在庫を持たずに、企画で勝負ができる分野を選び何でもやりました。

宮崎:すごいですね。起業ストーリに胸が熱くなります。資本金100万円で立ち上げ、IPOに至るまでにはどのような歴史があったのですか。

飛鳥:弊社は2回大きく沈んでいます。当時、代理店経由でセシール向けカタログ通販の冊子作製で1回5千万円を年4回、1年目から2億円の売り上げがあったのです。私が編集長で、有名な出版社出身者を副編集長に置いて撮影から編集まで全部やりました。しかしながら、その代理店の契約自体が止まりまして、創業2年目で2億5千円の中、2億円がなくなりました。代理店経由はコントロールができなくて怖いので、そこから営業を頑張り、1億数千万円の案件を獲得しました。この3期目のみ減収して、15期までずっと増収しています。また、同じくして通販領域で紙の広告代理店から始まり、2008年ぐらいからWebの広告代理業を始めました。2004年から14年の10年間かけてテレビのインフォマーシャル、折り込みチラシ、それからコールセンター、物流、システム、Web広告の全領域にてサービス提供が可能な状態に持っていき、継続的に30%増収ぐらいで伸長しています。そして、90%以上が直接取引になっています。

宮崎:電話アポイントばかりで90%以上が直接取引ですか?

飛鳥:大手企業も全部直接電話アポイントで直接取引をしています。完全に実力勝負で獲得しています。基本的にベンチャー企業は「選択と集中でニッチのトップになれ」みたいなことを必ず言われていますが僕らは真逆をやっていました。「オールジャンル」対応可能な戦略をとり、それを徐々に昇華させようとしました。

ピンチからの業態転換とV字回復

飛鳥:ずっと増収しているのですけれど2015年には落ちました。上位10社中3社との取引がなくなったためです。1社は某化粧品会社が健康被害の事件を起こして、全部広告が止まりました。残り2社は、規模が大きくなった結果。大きい代理店の方が安心という観点で代理店を変えられてしまいました。
広告代理業界における企業の売上順位ってここ何十年変わってないんですよ。だから、ある程度予算が大きくなると安心な大手に変わっちゃうんですよ。

宮崎:2社のスイッチは同時に起こったのですか?

飛鳥:はい、同時にです。売上10億円近くが影響受けました。2012年ぐらいから一部クライアントには成果報酬の料金体系でシステムとともにサービス提供しておりまして、継続率が90%以上だったのです。いきなり売り上げがなくなったりしないことが、自分たちにも理解できて、2016年から組織も全部、そこに選択と集中しました。

2015年までは、ビューティーアンドヘルス、食品以外も、アパレル、不動産、保険とか。ダイレクト通信販売にかかわりそうなものは全業種やっていたのですが、我々が一番強くてリピート率も高くてノウハウも一番強いビューティーアンドヘルスに業界も特化して、成果報酬型に全部切り替えたのが2016年です。それで、一気にV字回復しています。

 

 

今、この2016のこの赤色のグラフが、成果報酬、KPI報酬を持ってやっているのです。そして、青の図が普通にフィーでやってる広告マーケティング事業です。

広告マーケティングの売上げ利率が2015年までは高いため、主軸は広告代理業のように見えます。そして2016年に思いっ切り組織をシフトさせて、2年で116%伸びました。一気に売上げが上がってるというかたちになってます。

宮崎:これは見事なグラフですね。成果報酬の料金体系で継続率90%ということは、本当に素晴らしいサービス提供をされている証左ですね。また、事業としてもサブスクリプションを体現していて、フロー型からストック型へ見事に業態転換を果たされたということですね。

飛鳥:業態変更を思い切りしました。既存事業の調子も良かったので、2015年のショックがないとここまでの変化を実現できなかったと思います。無駄を省いて選択と集中をして、一気にそこで「KPI保証をやり切った」ことが、今回上場の成功要因です。

宮崎:ドラマのような話ですね。このグラフに関しては、ピンチからの業態転換とV字回復が見事ですね。

飛鳥:この2015年のときはかなり厳しい状態で、調達も難しく、支払止めるために関係者に謝りに行ったりとかして、自分の給与8割カットしたりして、なんとか自力で乗り越えました。

宮崎:自力ですか?いや、生きた心地がしないですよね?

飛鳥:しないですね。ただそのおかげで翌年2016年はV字回復したことにより、安心感を得て関係者からの投資が一気に進みました。

宮崎:結構、壮絶なお話です。

飛鳥:普通の代理店から出発し、ビジネスの流れの全領域を対応できるように範囲を広げ、10年間かけて通販総合コンサル代理店になって、更にシステムに特化しつつ、マーケティングオートメーションを経て、成果報酬型への展開という変遷を経ている会社ですね。

宮崎:非常におもしろいですね。その時代に応じて、またその事業の結果を見てすぐに事業転換を、しかも数年おきにやり続けられているのは見事ですね。そしてこの2015年の社長のリーダーシップは圧倒的だと思います。

飛鳥:はい。その時ばかりは、主要メンバーが辞めてしまうかと思ったのですが、誰一人として辞めていないのです。この経験を経て、逆に筋肉質になっていくことが出来たと思います、やはりそこはすごく大きかったなあと思いますね。

宮崎:この経験が組織のDNAとなり、今後同様の危機が訪れたとしても、自力で乗り越えられる自信が社内に蓄積されているであろうし、マーケットからも信頼感をもって見られるでしょうし、これは企業価値の源泉だと思います。

 

 

飛鳥:この2015年を乗り越えて学んだことは、「ストック型ビジネスが一番」であるということです。システムもストック型ビジネスですが、競合が多く厳しいビジネス環境です。そこで、私たちは少し変わったストック型ビジネスをやっています。広告マーケティングを成果報酬型にしつつ、そのシステムを無料で導入させて頂いているのです。その結果、利用企業の継続率が95%を実現できており、その結果ストック型のビジネスが出来ている状況です。

宮崎:ストック型ビジネスのシステムを無料にしつつも、本質的な成果を出し続けることにより、結果としてストックになっている、ということがすごいですね。

飛鳥:継続率が高く、社数が安定的に増加し続けるのは、ストック型風なビジネスを確立できていると思います。従って、僕らは一番大切なKPIとして社数を置いています。契約率が高く、社数がきっちり維持されていればビジネス環境が激変することはありません。

宮崎:「結果的にストックビジネス状態になっている」のがすごいですね。

15年の蓄積データからくる競争優位性

宮崎:今後、取り巻く環境にどのような変化が起こると飛鳥社長は見ていらっしゃいますか?

飛鳥:私たちのビューティーアンドヘルス市場は、シニアが3,300万人程度いまして、2065年には8,000万人強になると思います。このビューティーアンドヘルスの通販市場も毎年6~8%程度伸びています。日本の人口は減っているのに、シニア向けサービスがすごく増えています。また売上に対してマーケティングコストの比率は平均3割です。そこで、「マーケティングコストの最適化」を僕らはやろうとしています。われわれは、データをすべて「人の悩み」データグ付けしてます。例えば、シミしわとか、中性脂肪が高いとか、腰が痛いとか、普遍的であんまり変わらないのです。他の市場よりマイナーチェンジが少ないんですよ。それはなぜかというと、「人の悩みが変わっていないから」です。アパレルでいうと、定番品で機能をアップしていくユニクロに似ています。僕らは15年間のコンサルを通して、売上向上の要素を全部タグ付けして学習しています。新商品の戦略を過去のデータをもとに予測モデルで設計可能です。投下する広告コストに対するリターンが予測することが可能となるため、KPI保証ができるのです。
過去データから、広告媒体やクリエイティブそして予算の最適な配分が可能となり成果に結びつけることが出来ます。

宮崎:いや、これもう衝撃の事実ですね。競合に対する自社の強みの源泉はこの15年の蓄積ですね。

飛鳥:ほんとにそう思いますね。過去のデータの蓄積から、最適な手法と媒体を提案できます。悩みは普遍的で変わらないので、データも結構似ていて、やり方も手法も結構似ているところが一番のポイント。意味付け出来ていないデータは無価値でして、僕らはそれを「商品」ではなくて、「悩み」で分類しているのです。

宮崎:「商品ではなく、悩みという普遍的なものをタグの軸にした」ということがイノベーションだと思います。

飛鳥:そうですね。僕らの特徴はKPI保証の成果報酬であることです。自由に新規事業が試せてリスク回避もしやすい。クライアントは私たちがどのような広告を運用するかは気にしておらず、いくらのリターンがあるのかが最大の関心事です。そのリターンを保証するために、私たちは状況に合わせて予算配分を勝手に変えています。成績がいい広告もあれば悪い広告もある、それをフレキシブルに運用し、結果として合格点をとれればいいわけです。だから、僕らはその合格しか握っていないわけです。そこを握れば、運用の自由度が出てきます。新しい広告手法にも果敢に取り組むことが出来るわけです。

もう1個の特徴は共通の成功データを横展開がしやすいのです。データがない新しい広告手法は、人間が挑戦しなきゃいけないんです。そういう挑戦をしていくと、失敗データも成功データも蓄積され、またどんどん変化していくっていう感じでやれるっていうのが、われわれの特徴。そして、それを共通の成功データとすることにより、他の企業にも展開していくことが出来ます。

宮崎:非常にクレバーですね。「クライアントから怒られる、怒られない」というよりも、「最終的にはKPIで握ってるからその途中は何も言わないでね」っていう、クライアントとの対話のプロトコルを変えてしまっていますね。

飛鳥:そうですね。

宮崎:すごい。そして広告運用の自由度も高めつつ、自社にとってもメリットがあるようなやり方ができる。

飛鳥:広告代理業やったときに、一番不毛だったのがレポート作成なんですよ。僕らは基本、レポートを出さないです。売上の表と、あと僕らのツールでも一応売上げ計測してますんで、画面を見たらわかる状態なのです。細かい数字や情報を報告されると、クライアントは何かしら言いたがるのです。最終的なKPIを握って成果報酬でやっていれば本質的には問題なく、そのレポートを深夜まで作ってると、結構広告代理店は不毛な仕事ばかりになっていくんです。

宮崎:本質的な仕事にフォーカスして、それをクライアントにも納得頂いている仕組みが出来ているのですね。

飛鳥:レポートを作っても、本質的なところを改善できるわけではないのです。クライアントにとっても、僕らがレポートを作ることに時間に割くことって何らお互い不毛な作業なのです。そういった無駄をそもそも無くしています。

宮崎:多くの代理店が、その無駄な努力でやっているのが現状です。マーケーッターを志す人がもしいるならば、もしくはブラックな環境で日々涙を流して仕事をしているようであるならば、ぜひ御社に転職された方がいいんじゃないかと思います。

飛鳥:この改革によって、労働環境的にはすごく良くなったんじゃないかな。人間が一番やらなきゃいけないのが、やっぱり細かいクリエイティブのディレクションなんですね。人がどうやって反応するかって。各要素はあってもちょっとしたコピーの違い、ちょっとした写真の違い、ちょっとした違いで全部大きく反応が変わるので。人は「どうやったら、もっとお客さんが動いてくれるか」っていうことを真剣に考えることだけに集中したい。

だから、そういう運用とか作業とかは外注したり、徐々にシステム化していく考えです。僕らも仕事の単純化を常に考えています。やはりそこが一番、リソースがかかります。

 

 

宮崎:まさにこれが強みの源泉であることが良く理解できました。整理されていないデータは無価値であって、意味のあるタグを付与して初めて価値が出てくるわけですね。

飛鳥:アマゾンぐらいの規模のデータがあれば有意な示唆は出てくると思いますが、AIを使ったマーケティングオートメーションツールって、そこまでデータがないので大した答えは返ってこないのです。だから、僕たちは学習させるために、もうちょっとわかりやすい指針のタグを早めに付けることでデータ量をカバーしてるわけです。

宮崎:AIが働きやすいように人間がしてあげるんですね。

飛鳥:AIに何を学習してほしいかというと、売上に影響するポイントを見付けてほしいわけです。では、そのポイントは何かという話になります。そこでコンサルで今まで蓄積したノウハウを伝授してるっていう感じですかね。

宮崎:観点が非常におもしろいですね。ビックデータがはやり言葉になるもっともっと前の段階から、それをもうすでにやられているわけですね。

飛鳥:15年の蓄積データはあるけど意味付けが足りなかったため、アウトプットも当たり前の内容しか返ってこなかった。そこで、意味付けを細かく分類したことで、もう少し人間がやるように近付けるようにしました。僕らがやってるのって、タグの意味付けを僕が読み取って、数学的に学習をさせている作業をしています。今後は、それを画像やイメージ、テキストの方でもやろうとしています。

ネットとリアルの横断的なノウハウが競争優位性

宮崎:興味深いですね。過去データの蓄積と意味のあるタグ付けで有益な示唆を出すわけですね。それとともに、広告出稿の環境やデバイスが時代とともに変わっていく際にネガティブな影響はありますか?

飛鳥:そうですね。デバイスとかそのネットワークがどんなに増えても、別に新たに試していけばいいだけです。それから、僕らのもう1つの強みって、オンライン、オフライン両方やっていることです。最近ですと、郵便局2,000拠点でお客さまに体験をしていただいて、その場でアンケート答えてもらって、さらに買ってもらって、定期コース入ってもらうという企画も実施しました。それも成果報酬なんですけど。要は、ユーザとの接点がオフラインにも僕らは持っているわけです。これからは、オフライン、オンラインクロスで設定していくことが大切です。どうしてもネット通販会社さんって、ユーザが体験する場がないのです。体験っていうのは非常に大きいテーマになってきます。僕らもその新しい市場を常に作っていくっていう試みを人間がやっています。今年のわれわれの戦略は、オフライン広告を結構頑張るという内容でもあったりします。オンライン広告はヤフー、グーグル、Facebook、LINEなどのプラットフォームに乗る必要があるため、勝手にテクノロジーが変わると影響があります。しかし、オフライン広告は、ユーザと直接向き合っているのでコントロールできない急激な環境変化が少なく安定しています。

宮崎:オンラインやITのみで完結するサービスは常に模倣のリスクを伴いますが、そこにリアルが掛け合わされると途端に模倣の難易度が上がります。リアルの世界でいかに手を動かす泥臭い作業を何のためらいもなく実行できる組織があるかどうかが、競合の追随を許さない強い会社の共通項なんじゃないかと思います。従って、上場後にさらに「リアルを強化する」ということに納得です。

飛鳥:そうですね。ECにおいてやはり最後に残るのはアマゾンと言われています。アマゾンはどこにでもあるものをとにかく利便性よく、早く手に入って安いわけです。僕らはどちらかというと、逆バリをしています。化粧品、健康食品の業界は同じものを繰り返し購入いただき、ファンになって頂きます。どちらかというと、僕らが目指しているのは百貨店の外商であり、サザエさんの三河屋さんのイメージです。商品価値のみならず、接客価値の観点があります。皆さんでも「安くて便利でいいものがあるんだけど、自分の友達が経営してるからちょっとまずくてもこのレストラン行くよ」とか、「ここ良くしてくれてるから行くよ」という消費行動があるともいます。そこで効いてくるのが、接客であり、ファン化であるわけです。そこをやらないと、どうしても機械的で利便性が高いアマゾンに負けます。僕らが売っているのは、「いいものをそこそこの値段でちゃんと売り、深くずっと愛していただく」取り組みの支援です。そこはやっぱり、変わらないですよね。だから、逆に必ず残ると思っています。だから、体験を重視するし、リアルにも関わらなければならないわけです。そこを僕らも重視しています。それが多分、ネットマーケティング会社のできないことだし、総合会社でもそこの深さにいかないところだと思います。

日本の「おもてなしの精神」とKPI保証成果報酬が武器

宮崎:「ずっと愛されること」の支援は、御社がオフラインもオンラインも両方できるということが強みになってくるものと理解しました。

飛鳥:はい。僕らが今、目指してるところです。アマゾンGoだったり、アリババのニューリテールだったり。やっぱりあのようなところも、ネットからリアルに出てきているので。時代的にネットとリアルがクロスしていくと思います。そして、テクノロジーを使わないリアルはやらないです。また。いくら最適化されているとしても、やはり少し人らしさを残す。「人らしさを残す」っていうのをすごく重視しているところですね。

宮崎:特にリピート通販の場合は、人間らしさを感じる顧客との接点があるかないかでその解約率が大変変わってくると思いますね。

飛鳥:そうですね。だから人が買うという行為が続く限り、大丈夫だなと思ってます。海外へ行ってもやはり「おもてなしの精神」が受けるんです。「そのサービス精神を持ったECマーケティングを世界に持っていく」っていうところが一番ポイントです。日本っぽい接客です。多分、日本って唯一、アメリカのダイレクトマーケティングより、妙な進化をとげているんですよ。「再春館」だったり「やずや」だったり、ファンになっていただくために、お電話でいろいろやったり、深い接客したりしています。この精神を、インターネット上でやれるともう少しその海外のECマーケット変わるかなっていう気もします。

宮崎:日本における通販で行われるCRMの極め方って、もう職人の域ですよね。何回もトライアンドエラーをして、考えて考えての結果の蓄積ですよ。あれは日本の資産だと思います。そして、そのようなデータを御社も持っていらっしゃる、そういうことですよね?

飛鳥:そうですね。

宮崎:御社の強みに納得です。この強みを持って上場され、今後はどうやって事業展開をされていくのか。この先のことについてお話を聞いてもよろしいでしょうか?

飛鳥:われわれKPI保証の成果報酬で契約している社数はまだ180社ぐらいです。そして、ターゲットにしているビューティーアンドヘルスだけでも3千数百社。さらに、食品も入れると、もう万を超えてくる部分があります。やはりまず、そういったところをストックで伸ばすっていうのがまずは第一の軸です。そして、第二の軸としては、この分野の越境ECの支援ですね。もともとわれわれは中国に2013年から進出しています。しかしながら、中国の消費者は、ドラッグストアで売っているものとか有名なブランドしか買わない状況でした。ようやくSNSが形になってきて、無名なものも売れるようになってきました。中国、台湾、タイ、ベトナム、それ以外のアジア諸国に関しても、すごく問い合わせが増えてきています。今後は、そちらの方で成功事例がどんどん出てきているのです。われわれの方で、今チャットで出来るコマースのサービス機能を持っています。Facebookだけでコマースができるんですね。Facebookで告知をしたら、リンクを押すとメッセンジャーが開いて、そのままメッセンジャーで買うというかたちなんですけど。例えばタイだと、チャットでコマースしたことある人、全人口の51パーセントなんですよ。

宮崎:全人口の半分ですね。そんなにいるんですか?

飛鳥:はい。タイやベトナムが特徴的なのは、Facebookがシェアの8割を持っています。皆さん、携帯端末のsimカードを月額制で購入するのですが、Facebookの検索に関してどんなに検索をしても0円。どんなに動画を見ても0円。グーグル検索してYouTubeで画像視聴すると金がかかるんですよ。つまり、見ないんです。だから、公式ページも会社ページも全部Facebookで見ているんです。つまりFacebookで会社ページを起こしキャンペーンページを作り、商品を紹介したら、メッセンジャーで「これ買いたいんですよ」って直接メーカーと会話するんですよ。システムも決済システムもないのに、「じゃあ、送りますんで、ここに振り込んでください」という流れで、人口の51パーセントが買ってるんですよ。

 

 

宮崎:すごいですね。日本のマーケット環境とだいぶ違いますね。

飛鳥:はい。だから、そこに目を付けて、Facebookの中に決済機能とコーマス機能を入れたチャットボットコマースっていうのを提供しています。Facebookが普及しているアジア諸国はかなり多いので大変有利です。現地での販売はFacebook経由として、越境ECをやる際にはわれわれにシステムがあり、決済ができて、あと配送業者だけいればマーケティング開始できるんです。「全部、お任せでいけますよ」という体制を拡充している感じですね。

宮崎:すごいですね。日本の企業も、商品とお金を渡して「あとはよろしく」で、もうすべてがお任せできるという感じですか?

飛鳥:そうです。第三の軸にこのデータを使った新規事業を考えています。テスト的にやっていることです。悩みデータを集めていると、「今、どんな悩みがトレンドで、どんなものがどのぐらい量を売れているか、いくらで獲得できるか、トレンドはこれです」、というのが結構見えるのですね。このデータを使って、商品企画提案が可能となっています。新規事業というか付加価値です。私たちのコンサル部が、事業計画やキャッシュフロー計画も書きます。リアルマーケティング、テレマーケティング、Webマーケティング、CRMと分かれてるんですけど。横軸にコンサルがいます。お客様と立ち上げ事業をやるんですよ。最終的にはそこも増やしたいです。

宮崎:広告代理からさらにお客さんに入り込んでいておもしろいですね。

飛鳥:ビューティーアンドヘルスのビジネスモデルはストック型なので、将来を計算できるモデルです。お金さえ投資すれば、ある程度利益が残るというビジネスモデルなので、ほんとに投資としてもおもしろい案件だなという感じではありますね。

宮崎:非常におもしろい。ちなみに、投資対効果のイメージがありますか?

飛鳥:大体僕らでいうと、「3千万円の原資ならば3年で売上5億円。5千万円の原資ならば3年で売上10億円。」という感じですね。

宮崎:なるほど。ありがとうございました。

お客様からフィーを頂きつつもデータ蓄積が出来るのが素晴らしいですね。長年のデータがあると、それが御社のほんと強みと、新規事業への転換の礎かと思います。

飛鳥:15年分のノウハウとデータがあります。データ自体は延べ600社あります。悩み別に分類して学習するので、なんとなく傾向値が出てくるわけです。

宮崎:そのデータから出てくる知見は圧倒的な説得力ですね。ありがとうございます。

このスピードで新規事業を次々作っていく場合、どういった人材を欲しているのですか。

飛鳥:ほとんど今、70パーセントが新卒枠で、エースは3、4年目ぐらいの人材です。7、8年ずっと連続して新卒採っています。今、僕らもクラウドインターン的なことをやっていて。例えば、大学1年にクラウドでデジタルマーティング、IT、AI系を学習してもらいます。少しずつ課題を終わってもらって、さらに興味持ってどんどんやりたい人からインターンになってもらう。色がなくて、新しいものに常に挑戦できるっていうところが一番です。採用基準は経営理念の部分です。「相手を知ってから自分のことを知ってもらう」ことです。それは、当事者意識なんですよ。当事者意識イコール他責をしない。他責していたら、Win-Winにならないです。当事者意識があるかないかで。「人のお金だなと思って、頑張ってはいるけど、結果はそこそこでいいか」となるか、「いや、まずいと思って、ほんとに真剣にやるか」が変わってきます。そして、成果報酬にした際に起こった変化があります。真剣に考えるんですよ。強制的に当事者意識に。

宮崎:成果報酬をすることにより他責ではなく自責になっていく。それが、ちゃんと経営理念の方とリンクしている。

飛鳥:そうです。Win-Winの概念から成果報酬の考えが出てきて、その当事者意識が勝手に生まれるのです。弊社には営業という職種がいなくて、各ソリューションを契約したのち自分たちで運用します。

宮崎:なるほど。すべてですか?

飛鳥:すべてですね。そうしないと、自責にならないのです。「平均年収上げるために、やっぱり効率をみんなで上げるしかないよね」っていう目的をちゃんと持って、システム化して無駄なことをしない。作業は基本的に外注化かシステム化し、社員はブレーンかスーパークリエイティブになることに集中するのです。

宮崎:なるほど。すごいなあ。それぞれで連動してますね。僕が新卒だったら、すぐにエントリーシート送りますよ。

最後にお聞きします。今後の御社の株価対策として、個人投資家の方に対してどういうふうな向き合い方をするのですか。

飛鳥:Win-Winの概念には、ステークホルダーも入っています。売上、利益、平均年収全部上げていけば、株主さまに還元できると思っています。業界的にはまだまだ伸びますので、効率化を図っていくことで継続成長が可能です。システムの一部と人件費以外に大きい投資が必要であるわけではないです。今期から配当に関しては前向きに出して行こうと思っています。

宮崎:今期からですね?

飛鳥:ええ、そうですね。東証一部への鞍替えは、早い段階で目指したいです。

宮崎:非常に期待大ですね。

飛鳥:うちの証券コードが「7044」、「なおよし」と言ってます。「7044、なおよしだな」と思っていただくと嬉しいです。

宮崎:そうですね(笑)。それでは、最後に一言頂けますか。

飛鳥:まずは「マーケティングを変えたい」です。手数料ビジネスは価値を認めてもらえない商売です。Win-Winじゃないのです。みんな多分、必要なものにしかお金を払わないですよ。でも、価値があると思えばちゃんとお金を払っていただけるので。マーケティング業界のランキング上位の順位が一切変わってないんですよ。

だから、「次抜くとしたら僕らが」と思っています。それはやっぱり、成果報酬をメインとした契約のイノベーションでしっかりとコミットしていけば、大きく変わる、業界自体が変わっていくと思ってます。そういう意味では、マーケティングよりも、「契約のイノベーションをする」っていう感じですよね。

宮崎:「マーケティングを変える、契約のイノベーション」。数年後の順位を見るのが楽しみですね。最後にこの野心的な言葉をいただきまして。どうも長時間ありがとうございました。

 

 

(インタビュー日 2019/1/10)

配信元: みんかぶ株式コラム
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