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―クリーンエネルギーに向けた新戦略、待ったなしの地球温暖化対策は先端技術で解決へ―
2022年は温暖化対策の一層の取り組みが求められることになりそうだ。10月31日から11月13日まで英国で開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、岸田文雄首相は「30年度に温室効果ガスを13年度比で46%削減することを目指し、更に50%の高みに向けて挑戦を続けていく」ことを約束。12月の所信表明演説では、気候変動問題について「新たな市場を生む成長分野へと大きく転換する」と述べた。そこで、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーへの移行を進めることで産業構造や社会経済を変革し、成長につなげるという概念である「グリーントランスフォーメーション(GX)」を物色テーマとして注目したい。
●クリーンエネ戦略の検討開始
脱炭素社会の実現に向けた政府の新たな戦略「クリーンエネルギー戦略」を策定するため、経済産業省は有識者でつくる審議会での議論を開始した。16日に開かれた初会合では、各国の気候変動政策やエネルギー政策の現状が示されるとともに、GXの動きが世界的に高まるなかで日本としてどう主導するか、新たな環境技術を磨いてビジネスとしてどのように育成していくべきか、などが議論された。今後の会合では「将来にわたって安定的で安価なエネルギー供給を確保し、経済成長につなげることが重要」との問題意識のもと、電力会社など供給側だけでなく、産業界など需要側も含めたエネルギー転換に向けた具体的な方策を検討するとしており、22年6月ごろをメドにとりまとめる予定だ。
政府が10月に決めた第6次エネルギー基本計画では、再生可能エネの普及に最優先で取り組むことが明記された。30年度の電源構成を再生可能エネが36~38%(従来目標は22~24%)、原子力が20~22%(従来目標を据え置き)、 水素・アンモニアが1%(同ゼロ)、火力が41%(同56%)とし、再生可能エネの内訳は太陽光が14~16%、水力が11%、 風力が5%、バイオマスが5%、地熱が1%と想定されている。「クリーンエネルギー戦略」では、各クリーンエネルギーの市場規模などを示すなどして企業投資を促す考えで、萩生田光一経産相は「経済と環境の好循環につなげたい」と今後の議論に期待を寄せている。
●GXは中長期的な成長機会に
日本電産 <6594> は7月に発表した中期戦略で、世界初及び世界ナンバーワン技術の積み上げによる社会ニーズの解決、ESG(環境・社会・ガバナンス)銘柄としての認知度向上などを掲げ、26年3月期の連結売上高目標を4兆円(21年3月期は1兆6180億6400万円)とした。クルマの電動化やGXを中長期的な成長機会と捉え、車載事業の売上高を1兆3000億円(同3580億7500万円)まで高める計画。家電・商業・産業用事業は高効率モーターへの置き換えなどで1兆3000億円(同6016億1100万円)、精密小型モーター事業は8000億円(同4435億9800万円)、その他の製品グループで6000億円(同2147億8000万円)を目指すとしている。
東光高岳 <6617> は9月にデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略を策定した。同社は4月に公表した中期経営計画で、顧客のエネルギー利用の高度化・多様化ニーズに応えるとともに、「脱炭素化」や「防災・レジリエンス」といった社会課題の解決にも寄与し得る新たな事業・市場・価値の創造に積極的に挑戦することを宣言。この実現に向けて、従来から取り組んでいるトヨタ式カイゼン活動とデジタル化を一層強力に進め、最新のデジタル技術やデータを駆使してイノベーションを創出するという。
フォーバル <8275> は10月、国内で初めて中小企業の環境への貢献度を可視化した新サービス「GXアイコンスタート」をリリースした。これはDXを推進することで生産性向上を図りながら効率的にGXを実現するもの。更には、ひとつの企業だけでなく、多くの中小企業が集まるグリーン・コンソーシアムを創り出し、全体のGX推進の取り組みを可視化することで、政府が掲げる50年カーボンニュートラルにつなげたい考えだ。
三菱化工機 <6331> は11月、「持続可能な循環型社会推進事業」「水素を核としたクリーンエネルギー事業」「デジタルを活用した省力・省エネ事業」の3つの戦略的事業領域を中核事業と位置づけ、35年までの確立を目指すとした経営ビジョンを発表した。創立100周年となる35年の連結売上高目標を1000億円(21年3月期は487億5300万円)とし、事業領域の構成比を戦略的事業領域で売上高全体の約5割を目指すとしている。
イビデン <4062> はサーバーなどで用いられる半導体に使われるパッケージ基板やプリント配線板などの中核事業に加えて、DXによる生産性向上や新エネルギーを活用するなどとしたGXにも注力。また、脱炭素社会に向けた戦略投資の強化とデジタル化の推進を基本方針とした中期経営計画を策定している岩谷産業 <8088> にも目を配っておきたい。
●エネマネ関連などにも注目
世界規模で脱炭素社会への取り組みが進むなか、いかに効率的にエネルギーを活用・管理していくかが重要となっており、エネルギー使用量や二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながるエネルギーマネジメントシステムを提供する企業もGX関連といえる。主な銘柄としては、ミライト・ホールディングス <1417> 、日本工営 <1954> 、グリムス <3150> 、ACCESS <4813> 、テスホールディングス <5074> 、ダイヘン <6622> 、IDEC <6652> 、横河電機 <6841> 、アズビル <6845> 、指月電機製作所 <6994> [東証2]、日本ユニシス <8056> 、日本管財 <9728> が挙げられる。
このほか、地球環境ソリューションを手掛けるイメージ ワン <2667> [JQ]、エネルギープラットフォーム事業やエネルギーデータ事業を展開するENECHANGE <4169> [東証M]、ペロブスカイト太陽電池の事業化に向けて注力する積水化学工業 <4204> 、人工知能(AI)技術を活用した高解像度予測モデルで洋上風力発電事業を支援するウェザーニューズ <4825> 、軽油や都市ガスなどの燃料に水素を混焼させる水素混焼発電機の量産を目指しているデンヨー <6517> 、燃料電池の研究開発や生産プロセスにリアルタイムガス計測技術を提供する堀場製作所 <6856> 、再生可能エネの環境価値をトラッキング(追跡)する実証実験を22年度から開始する予定の日本ガイシ <5333> とリコー <7752> のビジネス機会も一段と広がりそうだ。
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